第八話 私の至らない気持ち
三人になった私たちは、公園に着いた。
私とおっちゃんは、朝から何も食べてなかったため、急いで拾ってきた物を出して食べることにした。
三人が「三角形」を作るようにして座った。三角形の頂点が彼で、私とおっちゃんは下の辺になるように。
そしておっちゃんが持ってる袋から、食べ物を出し始めた。その時彼が弁当に手を伸ばしてきた。彼はまだ食べ足らないのか一言
「俺にくれよ」と言ってきた。
私は(こっちは腹ペコなのにまだ食べる気か?)と怒りの感情が湧き出してきたが、おっちゃんは一言
「みんな平等に分けてるんだから、もうちょっと待ってくれないか?」
と、優しく話しかける。
私はおっちゃんのもとに近づき
「別にやさしく言葉をかけることはないでしょう」
と言った。
それを聞いたおっちゃんは
「兄ちゃん、ここはいら立ってはいかん所なんだよ」
と、ちょっと厳しめに言う。
私は
「ちょっと優し過ぎるのではないですか?」
と言い返した。
不断な温厚なおっちゃんがここまで厳しくいってきたのは履物の件に次いで二回目である。私は
(しまった、怒らせたかな・・・と)内心思ってしまった。
おっちゃんが私の心の内を読んだかのようで、いつもの表情で声をかける。
「相手の心情もわかってくれたほうがいい」と。
私がだ会って頷いた。そして意を決して「怒ってます?」と聞いてみた。
おっちゃんは「別に怒ってないよ」と静かに言った。
「ただ・・・」と言葉を続けよう・・・としたその時、彼が
「まだ食べないの」と聞いてきた。
彼はまだ分け終わってないのにもう食べている。
こっちは話し合いの途中である。だがしかし、腹が減ってるのは事実である。
話を手短に終わらせないと、腹の虫がなる。特に私がそうだ。
おっちゃんが話を続ける。
「この(ホームレスの)世界じゃあ、細かいところに突っ込むのはご法度だからな」と静かに語り
「この話をするのは2回目じゃないか?」と言った。
確かにそうだ。1回目は私がホームレスになりたての頃、おっちゃんの名前を執拗もなく聞いた時だった。そのころ私は、初対面の人に名前を聞きまくった覚えがある。
おっちゃんはその時
「もうホームレスなんだから、相手を詮索するのは失礼にあたるから、やめたほうがいい」と言われたのを思い出した。
私の至らない気持ちが無用な対立を生んでいるのに気が付かない私自身が急に恥ずかしくなって、食事処ではなくなったのである。
で、やっと私とおっちゃんが食事にありつける。
私は一言、小声で
「いただきます」
とつぶやいてからおにぎりを食べ始めた。
おっちゃんはパンを食べている。
三人の食事が終わった。
あとは寝るだけである。




