第七話 再び彼と出会う
そして私たち二人は、別のコンビニに着いた。
先客が3人いる。
その中で見た事のある顔があった。
木崎君である。
彼は私の顔を見るなり
「お前、ここにも来るのか?」
と言ったので私が
「木崎君こそ、こんなに離れた店に?」
と問い返す。
通常ホームレスの行動範囲は人に寄てバラバラではあるが、彼は広い範囲を回っているらしく、1キロ先の範囲しか回らない西本さんやおっちゃんと違って、あの食事した公園から2キロ先のこの店までやって来るのだ。
おにぎりを何個か袋に入れたおっちゃんが私に問いかける。
「あの人誰?」と。
私は
「私も昨日、会ったばかりの人で「木崎君」と言う若いホームレスです」
と言った。
すると、おっちゃんが
「わしよりひどい格好だ。食事もまともに摂れていないのではないか?」と心配そうに言った。そしておっちゃんが
「わし、若い彼に少し分けてくる」と言って彼のもとへ行った。
彼が
「お前誰だ?あいつと関係あるのか?」と言ってきたのでおっちゃんが
「そんなことよりパンを食べるか?」と優しく言う。
普通、「お前」扱いされると怒りだしそうになるのだが、そこは人生経験が豊富なおっちゃんだけの事である。めったなことでは怒らない。人に常に優しく接してるおっちゃんだけの事である。
彼は最初「何の用だ」と言ってたが、おっちゃんが
「怒るのは腹が減ってるからだろうよ。ほら、パンでも食べたらどうだ?」と優しく進める。
するとどうだろう。
あれほど警戒していた彼は、差し出されたパンを無言で食べ始めた。
よほど警戒心が強いためか、知らない人に対しては威圧的になる。しかし、彼女といい、おっちゃんといい、警戒心を乗り越えた人に対しては優しく接するみたいだった。
彼は、パンを食べ終わった後、一言
「ごちそうさま。ありがとう」
と、素直に返事した。
私は
(意外と素直なところがあるんだな・・・)と彼を見直した。
ふと見ると、彼とおっちゃんが「意気投合」していた。彼がおっちゃんと「同一行動」をとる・・・と言い出したのだ。私は彼に
「私もついてくるけどいいかな」と問いかける。
すると彼は無言で頷いた。私は
(まだ私の事を許してくれないんだな・・・と)思ったが、その考えは杞憂に終わる事が今は気づかなかった。
とりあえず食事の調達も終わり、いつもの公園へ戻ってゆく。
いつもとの違いは彼がついてくることである。