第六話 再びおっちゃんのもとへ
夜が明けた。ホームレスの朝は早い。
彼女はすでに起きていた。
彼女が「おはよう」と声をかける。
私は眠い目をこすりながら「おはよう」と言った。
彼女が
「こんなにぐっすりと寝たのはどのくらい前だろう・・・」
と言ってきたため私が
「さぁ、どうなんでしょうかねぇ」ととぼけた顔して返事した。
彼女が
「一緒に朝飯を取りにいかない?」
と言ってきたので私もついていくことにした。
しばらく歩いて、焼肉店の前に来た。店の前にビニール袋が置いてある。
そこから食べ物を探すのだ。
私はまだ経験が浅いのか、いつも「はずれ」の食材しか拾えない。例えば生焼けの肉とか、コーヒー豆をかぶっているフライドチキンとか・・・である。
しかし、今日は彼女がいる。言っては悪いが「残飯漁りのエキスパート」なのだ。
彼女は袋を選んで、何個かおかれている場所からより分けた。そして袋を開けることなくその場から歩き始めた。その時、
「あんたも袋持って」
と言われたので一緒に歩き始めた。
彼女に「なぜ、移動するの?」と聞いた。
すると彼女は
「あそこで袋を開けると、店の人に怒られるの。この時間は店員がいないけど、監視カメラで見張ってるから、離れるのよ」
と答えた。
そして彼女はちょっと離れた場所で、袋を開封し始めた。するとどうだろう、焼けた肉が入っていた。当たりである。
彼女が言う。
「朝から焼き肉を食べれるなんて幸せじゃない」と。確かにそれは言えてる。
私が取った袋の中身は焼けた野菜と食べ残しの米だった。
何てことだろう。やっぱり経験がものをいうのか?私は心の中で(いつも運がついていないのかもしれない・・・と)思った。
私達2人は食べ始めた。もちろん「亡き彼女の母」と共に。
朝飯を食べた後、また元いた公園へ戻ろう・・・としたとき、おっちゃんの事が気にかかった。私は元いた公園へ戻ろうとした。その時彼女に
「どこへ行くの」
と聞かれたので私は
「私がお世話になってるおっちゃんがいるから、元居た公園へ帰ります」
と答えた。すると彼女は
「そうなの。寂しくなるわね。またおいで。私はここにいるから」
と言葉をかけてくれた。
私は彼女と別れしなにレジ袋に肉を詰め込んだものを「お土産」として渡してくれた。
私は彼女に
「ありがとう」と答えておっちゃんのいる公園へ向かった。
しばらく歩いて、もといた公園に着いた。
しかし、おっちゃんの姿がない。
(どこへ行ってるのだろう・・・と心の中でつぶやいた)
私はおっちゃんを探し始めた。
思い当たる場所を巡って1時間がたった。
見つけた。
公園から離れた河川敷にいたのだ。
おっちゃんはイスに座り、半分寝ていた。私はそばに駆け寄り
「ただいま」と言った。
おっちゃんは「うん」と一言つぶやいた。
私はその椅子の横に座った。日向ぼっこみたいな感じで気持ちいい。
おっちゃんがまどろむのがよくわかる。
起きたのが早かったせいか、私も眠くなってしまった。
それから数時間。
辺りはすっかり暗くなって、気温が下がってきた。
「おい、兄ちゃん」
おっちゃんが私を起こす。
私は
「うーん、あ、もうこんな時間」
私のも持ち物で数少ない腕時計を見て気が付く。
最も、ベルトは破れていて、もはや「懐中時計」の様になっているのだが、時間が刻めるだけましである。
おっちゃんは私に
「飯でも取りに行こうか」
と誘われたので私が
「行こう」と言う。
少し寒ったが、歩いていくと寒さが吹っ飛ぶ。
シャッターが閉まった店が多い商店街を歩いていく。まず1件目。
パン屋さんである。閉店してて、大きなごみ箱が店頭に置いてある。
おっちゃんはそれのふたを開け、中のパンが入った袋を手際よくを取り出す。
その場で袋を開け、手際よく取り出している。
私はおっちゃんの近くで待っていた。すると見知らぬ人から千円札を渡された。恵んでくれたのだ。こういう人はごく少数ながらいるのだ。私は
「ありがとう」と言ってポケットの中にねじ込んだ。
後でおっちゃんと分け合う。
おっちゃんはパンを集め終わり、中身の減ったごみ袋をごみ箱にしまう。私が千円もらったことを伝えると
「後でタバコを買いに行こう」と言った。
続いて2件目はコンビニである。廃棄の食品を取りに行く前に、店内に入ってタバコを買う。
この店では廃棄の食品を取らない。タバコを買ったので顔を覚えられているためだ。
少し歩いて別の店の廃棄を取るつもりである。