第三話 中学中退の若いホームレス
彼女に言われるまま、台車をつかんだまま立って待っていた。
台車の上に私の荷物を置かないように指示されたため、私の荷物を路上に置き、彼女の帰りを待っていた。
ちなみに私の荷物は破けそうなリュックとごみ袋と傘である。リュックの中は手袋や寝袋、それと電池切れの拾ったラジオが入っていた。ごみ袋には少しの残飯が入っている。
帰りが遅いので道路にへたり込んだその時、いきなり刃物を持った男が現れ、
「その台車は西もっちゃんのものだ!なぜ貴様が持っているんだ」
と切れそうにないほど錆びた庖丁を突き付けた。
ちょうどその時、彼女が現れ、その事態を目の当たりにしたのを一目見て
「あんた、何やってんのよ!庖丁をしまいなさいよ」
と彼女が私と包丁を突き付けた彼の中に割って入り、彼女が包丁を持った彼に説明を始めた。
「この人は松田さん。高校の同級生よ。ほら、仲良くしないと。同じ仲間じゃない」
と話しかける。
すると、彼はこう言った。
「俺は木崎と言うんだ。俺は中学中退だ」
と答えた。(その時彼は「私は仲間じゃない」と思われていた)
続けざまに彼が
「お前は西もっちゃんと何の関係があるんだ?まさか、俺と西もっちゃんの食べ物を奪う気ではないのか?」
と言ったので彼女が
「高校の同級生って言ったでしょ」
と言ったが、彼は認めようとしなかった。
とっさに私が
「すみません」
と謝ったのだが、彼は庖丁をしまわなかった。
緊迫した状況を打破しようと、彼女が割って入り、彼は庖丁をしまい、事なきを得たのである。
彼はこれまで見たようなことがないくらい格好をしていた。なんと、足が丸見だったのだ。
上半身は短めのジャケットとロングコートの二枚重ね、下着が破けたのか股間がロングコートで隠れるだけの姿で、足元もレジ袋を包んだのが目立って冬は寒そうだな・・・と感じた。
彼女は彼の姿を見かねてこれはいけないと思い魚市場で使われてた前掛けや長靴をごみ箱から拾ってくるのだが彼は私以上に長靴をはくのが嫌で、サンダルを履いていたのだが、サンダルが擦り切れたためにレジ袋を靴下代わりに足に巻き付けて凌いでいたのだった。
当然、髪やひげも伸び放題で、全体的に痩せていてみずぼらしく見える。
私ら三人は道路上に座りお互いについて話し合った。
彼は
「俺はこれまで一人で生きてきた。これからも一人で生活できる」
と言い切った。しかし話を聞いていた彼女は
「一人で生きていけるのだったら、なぜ私に声をかけたの?」
と逆に聞き返した。
彼はは悔しいのか
「べ・・・別に」
と答えるのがやっとだった。
座ってる時間は短かった。
私達は無言のまま立ち上がり、公園へ向かった。