第二十三話 仲間が助けに来た
こんな生活が数日間続き、保護費の支給日になった。
みんな、男が運転する車で役所へ向かう。
車を運転していた男が代表で貰えない。
保護費は本人でしか渡せないからだ。
彼らは役所で封筒を貰う。
その中に保護費が入っている。
そして役所の敷地を出たとたん、男が手招きして
「封筒を渡せ」とせがむ。
男は金を抜き取り、再び渡した。
渡された封筒の中を見てみると、残りは2万円しか残っていなかった。
男は封筒を渡し終えると
「車に乗れ」
と言ってあのアパートへ帰る。
途中のコンビニで
「必要なものは今のうちに買っとけ」
と言い、車を止める。
彼は
(逃げるのは今しかない)
と思っておっちゃんに耳打ちをした。
それを見ていたあの人は彼らに近づき
「逃げるつもりならやめたほうがいい。もっと痛い目に合う」
と忠告した。
すれを聞いた彼はガックリと肩を落とす。
しかし、これ以上こんな生活はしたくない。
(何とか逃げ道を探さなければ・・・)
おっちゃんも
(ここの生活はこれ以上できない)
と思い始めていた。
しかし「絶好のきっかけ」を失た彼らは、この生活を続けるしかなかった。
一方の私と彼女は、急に姿を消したおっちゃんと彼のことを心配していた。
あれから数日間がたつ。
「どこへ行ったんだろう・・・」
と私がつぶやく。
彼女も心配する。
私たちは夜回り団体が持ってきた服に着替える。
今度はサイズが合った。
しかし、女物の服は少ないため、彼女の服はちょっとだけ着替えただけだった。
それでも「こざっぱり」とした姿になった。
団体も
「彼とおっちゃんはどこへ行ったんだろう・・・」
とつぶやく。
「何かきっかけがわかりませんか?」
と、団体の別の人が言う。
私が
「そういえば、「アパートに入らないか」とホームレスに話しかけてきた人がいたような・・・」
と言うと、団体のリーダー格の人が何かを気付いたようで
「あいつらの事だ」
と言った。
私は
「あいつらって誰ですか?」
と尋ねた。
すると団体のリーダー格は
「アパートに連れていき、生活保護を受けさせ、それをピンハネする人たちの事です」
と答えた。
「そんな人がいるのですね」
と、私は言った。
団体のリーダー格は
「ここは弁護士に頼みましょう」
と言い、電話する。
夜遅い時間だったんだが連絡がついた。
団体のリーダー格は
「明日、訪問することに決めました」
と、私と彼女に告げた。
私は
「よく場所がわかりましたね」
と、感心する。
団体の別の人は
「同じケースが1回会って、一回連れ戻したことがあるのですよ」
と答える。
私は
「そうですか・・・そんなことがあったのですね」
と返事した。
翌朝。
弁護士と駅で会う。
「おはようございます。よろしくお願いいたします」
と挨拶する。
すると
「おはよう」
と、挨拶が帰ってきた。
私と彼女と弁護士と団体のリーダー格が電車へ乗り込む。
そのアパートへは電車で向かう。
目的の駅に着いた。
4人は電車から降りる。
アパートに行く前に福祉事務所へ寄る。
担当ケースワーカーと相談するために。
4人は窓口に行き、ケースワーカーを呼び出してもらう。
窓口の係員は
「呼び出しますのでお待ちください」
と言う。
30分待った頃だろうか。
1人の女性が現れた。
このケースを担当してるのはこの方だ。
弁護士はケースワーカーに
「この状態で放置すれば生活保護法違反になりますよ」
と切り出す。
すると担当は悩んだ後。こう切り出した。
「それはわかっています」
と。
そしてこう言った。
「仕方がないのです」
と。
1時間ぐらい話しただろうか。結局担当がアパートへ訪問調査することになった。
役所からアパートへ移動する。
アパートに行くと車が止まっていた。
部屋へ行こうとすると、男が
「誰だお前ら」
とこちらをにらんでいる。
男は訪問した5人の中にケースワーカーがいるのを見つけると
「訪問ご苦労様」
と、急にへこへこする。
そして弁護士が
「これはひどい・・・」
と言うと男は
「ひどいとは何だ!」
と激高して弁護士の胸をつかむ。
「やめてください」
とケースワーカーが言う。
男は弁護士から手を降ろしたが、その様子を団体のリーダーが撮影していたので
「証拠画像は取りました。警察に行きますか?」
と言うと開いても観念したのか
「勝手に連れていけ」
と言ってアパートのドアを開けた。




