第二十一話 おっちゃんらの焦り
一方、おっちゃんと彼は、ファーストフード店のごみ箱から食べられそうなものを漁っていた。
10分後。
一人の男が現れた。
以前、おっちゃんに声をかけた人だ。
おっちゃんは、その人にに話しかける。
「わしと彼がアパートに入れるようにしてください」
と。
男は
「いいよ。じゃあ行こうか」
と言って駐車中の車に乗り込むよう指示した。
その時彼は
(やはり嫌な予感がする)と心の中で思った。
おっちゃんは
「どこか遠いところに行くのですか」
と聞いた。
男は
「ちょっと移動するだけだ」
と答えた。
2人は車に乗り込むと、男の運転ですぐ発進した。
15分くらい走ったのだろうか、男はアパートの前で車を止め
「ついたぞ」
と言い、2人に降りるよう指示した。
階段を上がり2階の部屋の鍵を開ける。
そこには小さなテーブルと布団が2組敷いてあった。
男は
「明日9時、役所に行って生活保護の申請に行くから。荷物を忘れずに持ってこい」
と告げて袋を差し出す。
袋の中身は弁当だった。
「お腹がすいただろ。それを食べなさい。水は出るからそれを飲んでくれ」
と告げて去っていった。
おっちゃんは本当にここで暮らせるのか不安に思っていたが彼に
「本当にここで暮らせるだろうか」
と聞いたが彼は
「そうだったらいいのにな」
と返事した。
そして彼はトイレに入った。
やや汚かったので
(なんでこんなに汚いのだろう・・・まさか、だれも掃除してないのでは?)
と思っていた。
そして弁当を食べて布団の中に入る。
彼はまだ「嫌な予感」を払拭出来ずにいた。
第一、まだアパートの鍵を受け取ってないからだ。
彼が布団の中に入りながらおっちゃんに呼びかける。
「本当にこれでいいのだろうか」と。
おっちゃんは
「きっとうまくいくさ」
と言い、寝てしまった。
翌日。
寒さを感じずに寝たので、気持ちがよかった。
そして朝9時。
彼ら2人は車で役所に向かう。
「生活保護課」と書かれたカウンターの奥の個室で面談した。
所持金や資産などを聞かれ、メモを取っている。
そして担当係と男が相談している。
そして2人は「生活保護」を受給できることになった。
これで一件落着・・・とはいかなかった。
これから「本当の地獄」が待ち受けているとも知らずに2人は内心で喜んでいた。
おっちゃんは
(これで彼と彼女が心置きなく生活できる)
と思っていた。
手続きが終わって役所の外に出た。
すると男は保護費の入った封筒から金を抜き出した。
「何する!」
と彼が言った。
すると男は
「アパート代と食事代を徴収した」
と言い、車に乗るように指示した。
車は昨日泊まったアパートではない別のアパートの前で止まった。
彼は
「どうして(アパートの)鍵をくれないんですだ?」
と強い口調で聞いた。
すると男は
「鍵なんて必要ない。いいから入れ」
と命令口調で話す。
彼の「不安」が当たってしまったのだ。
2人は中に入った。
部屋には6人の知らない人がいた。
男は
「ここが住む場所になる」
と言って押し込もうとする。
彼は
「こんなひどい所にいるのなら路上の方がましだ」
と叫ぶように言う。
普段温厚なおっちゃんさえも
「こんなところには住めない」
と言った。
すると男は
「文句を言うな!出ないと金を渡さんぞ」
と2人を一喝する。
2人はしぶしぶ中へ入る。
そのやり取りを見ても、6人は黙っていた。
そして男はどこかに去っていった。




