第二十話 それぞれのホームレスからの脱却
しかし、おっちゃんの決意は固い。
彼は根負けした。
一緒についてゆく覚悟を決めたのだ。
たとえ、それがひどい場所であろうとも。
「西もっちゃんが認めた人だ。ここは一丁、付き合ってやるか」
といい、おっちゃんについていくことにしたのだ。
一方の彼女は
(松田君と結婚するのは嬉しいけど、木崎君らはどうなるのだろう?)と思っていた。
彼が
「俺とおっちゃんも生活保護を受けることに決めた。だからあいつと幸せになってくれ」
と告げる。
「えっ、でも・・・」
彼女はまだ驚きを隠せない。そして
「できれば一緒に住みたいけど、それが無理なら各々の家へ泊まりに来る関係になればいいわね」
と言ってから
「こうやって4人で飯を食うことももう最後かな」
と笑っていた。
私は夜回り団体に彼女と一緒にアパートに入りたい・・・と要望していた。しかし何故か夜回りに来ない。
これは困った。
私の体は病み上がりで寒さが堪える。
彼女は心配して毛布を貸してくれた。私はそれに包まる。
そして食べ物を取りに行く時間である。
私は
「彼女と一緒に行きたい場所がある」
と言い、ついていこうとする。
すると彼女は
「まだ体調が慣れてないからダメよ」
と言い、そして
「とりあえず待ってて」
と声をかける。
しかし、私は
「どうしても連れていきたい場所がある」
と言って歩き出した。
彼女は
「仕方ないわね」
と、半分あきれ顔で着いていくことを了承した。
今回は2班に分かれた。
私と彼女の班とおっちゃんと彼の班に分かれて商店街に入っていった。
私が彼女を連れて行きたかった場所は「豆腐屋」である。
もし、アパートを借りる事が出来たら、この店で働かせてもらおう・・・と思っていた。
店主に
「お久しぶりです」
と挨拶する。
すると豆腐屋の主人は
「ずいぶん御無沙汰だったけど、何かあったのですか?」
と問いかける。
私は
「入院してたんです」
と言うと、主人は
「そうでしたか・・・」と答えた後
「今日はまだおからが出てないから、もうちょっと待って」
と言った。
私は
「今日はおからを取りに来たのではないんです。この人は西本さんと言います。今度一緒にアパートへは入れたら、彼女と一緒に働きたいんです」
と答えた後
「ゲホゲホ・・・」と思わず言ってしまった。
彼女が
「ほら、無理するから・・・」
と気に掛ける。
それを見ていた豆腐屋の主人が
「給料は安いし結構体を使うしおまけに朝が早い。それでもよかったら働いていいよ」
と答える。
そして
「働くのは病気が治ってからにして」
と付け加えた。
「そうしたまずは私が働きます」
と彼女はすかさず言った。
彼女は話さなかったが、実は借金取りに追い掛け回されたらしく、私に対して
「アパートに入ったら借金取りが来るかもしれない」
と不安げに語った。
ちょうどその時、夜回り団体の人と出会った。
「探しましたよ」
と言われる。
私も
「来ないのかと思ってました」
と言う。
私と彼女はアパートに入ることを決断した。あとは私と彼女の借金問題である。
その点に対しても団体は
「弁護士を知っています。相談に乗りますよ」
と話す。
彼女は
「弁護士?そんなお金ないです」
と言ったが団体は
「費用の事なら気にしなくていいです」
と、彼女らを安心させるように話す。




