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家族みたいなホームレスたち  作者: びでばき
やはり家族にはなれない?
15/30

第十五話 夜回りに出会う


 私は公園内の椅子に座って、空を見上げていた。

 今日の空は昨日とは違って薄曇りの間から日差しが差し込む。

 彼ら3人から離れた場所のベンチに一人座っていた。

 おっちゃんが私を見つけ、歩み寄ってくる。

私が

「どうしたのですか」

 と尋ねたのでおっちゃんは

「気分はどう?」

 と聞いてくる。

 私は

「多少落ち着きましたが。まだ食欲がわかないんですよ」

 と言ってみたものの、どんどん広がる体の悲鳴を隠そう・・・としている。

 おっちゃんは

「こればかりは仕方ない。わしも経験済みだから・・・・・・」

 といって、さらに

「あんたも乗り越えられるさ。きっと」

 と付け加えた。

 私はその言葉にすごく勇気づけられた。

 そして(おっちゃん、ありがとう・・・と)心の中で感謝した。

 一方の彼女は悩んでいた。

 大切な友人になりつつあった彼の体調が悪くなっていくことに対して、何もできないことに。

「一体どうしたら・・・」

 とつぶやいた。

 私はその様子を見て困惑した。

(こんなにも心配してくれるなんて・・・)と思った。

 会って数日しか経ってないのに、まるで「家族」のように接してくれる。

 その優しさと温かみがじんわりと心にしみる。私が数年間感じたことがない気分だった。

 と、同時に「壊してはいけない」関係になっていることに気が付いた。

 そのためには、まず自分がしっかりとしなければいけない。

「不慣れ」に負けてはいけないのである。

 しかし、気持ちはそう思っても、体がついていけない。


 そんな感じの中で、私は「初めておっちゃんと出会った頃」を思い出した。

 あの頃はまだ何もわからず、所持金も少なく、ネットカフェにも泊まれない状態だった。

 あてもなく街をさまよい、夜にたどり着いたのがこの公園である。

 公園に着いた時、のどが渇いていたため、公衆便所の手洗い場の蛇口から水を手ですくって飲んだ。

 そしてここから出ようとした時、鉢合わせになったのがおっちゃんだった。

 私は最初(将来はこんなみじめな姿になるのかな・・・絶対嫌)と思っていたが、公衆便所の前にあるベンチに座っていたらおっちゃんが横に座り

「あんた、帰るあてはないの?」

 と聞いてきたのだが、私は最初無視していた。

 しかしこのタイミングで腹の虫が鳴った。

 それを聞いたおっちゃんは

「あんた、腹減ったか?パン食べるか?」

 と、拾ってきたパンを差し出されたのだが私は

「いいです」

 と言って受け取らなかった。

 しかしおっちゃんは

「食べなよ」

 と言われたので私は無視していたが、おっちゃんは

「人は腹が減ると怒りっぽくなるからな。わしはあんたを死なせたくない。いいから、騙されたと思って食べてみなよ」

 とさんざん勧めてきたので私はしょうがなくロールパンを一気食いした。

 その時の味は今でも覚えている。

(ただおいしいだけでなく、心が満たされるようだ・・・)と。

 そしてこの日から、おっちゃんと共に生活するようになり、会話もするようになった。

 それ以来、おっちゃんの事を「父親」みたいに感じたのである。

 残り少ない持ち金でタバコを買って分け合ったり、残飯の見つけ方を教えてもらったり。

 私がホームレスになりながらも生きてこれたのはおっちゃんに教えてもらったことがいろいろ役立ってる。


・・・と思ってる間に日が暮れた。

 3人が待つ場所に戻り食事する。

 私はこのところずっと食欲がない。

 お弁当だったが、食べきれなくて残した。

 おっちゃんと彼女が心配する。

 私は「心配ありがとう」と言って、2人を安心させる。

 そして寝る時間だ。

 4人が四角形を作るようにして段ボールを敷いて、毛布や寝袋を用意する。

 寝る準備ができたとき、私が見知らぬ人がやってきた。しかも5人もいる。

「あのー、夜回りです。何かお困りですか?」

 と、訪ねてくる。

 すると彼女は

「そこの彼、松田君と言うんですけど、最近食欲がなくて・・・」

 と相談する。

 するとこの中のリーダー的存在がどこかへ電話をかける。

 しばらく話して電話を切った。

 そして私と彼女に話しかける。

「医療班が来るので、待っていてほしい」

 とのことである。

 彼女が

「医療班って・・・医者ですか?」

 と尋ねる。

 夜回りのリーダーは

「そうそう。医者です」

 と答える。

 そして彼らはビラを配り、「お腹がすいていませんか?おにぎりがありますよ」と聞いてくる。

 しかしここの4人はすでに食べた後だったのでおっちゃんと彼女は

「もう食べたのでいいです」

 と、やんわりと断る。

 彼だけおにぎりをもらって食べてる。

 その時、白衣を着た4人が現れた。

 医療班の到着である。


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