表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族みたいなホームレスたち  作者: びでばき
やはり家族にはなれない?
13/30

第十三話 どしゃ降りの雨の中で


 こうして、2人は出かけてしまったため、おっちゃんと私の2人きりとなった。

 時折、雨粒が路面にたたきつける音が響く。


 そんな中おっちゃんが

「元の公園に戻りたい」

 とつぶやいた。

 私は

「もうちょっとここで待ちましょう。せめて雨が止むまで」

 と言った。

 雨はまだ止む気配は無い。おっちゃんが空を見上げ

「元の(1㎞先の)公園に帰っても居場所がないな・・・」

 とまたつぶやく。

 ちょうどその時、彼と彼女がずぶ濡れになって帰ってきた。

 彼女はにこやかに

「やっぱりね。いっぱい取れたわ」

 と言う。

 彼も

「いっぱい取ったぞ」

 と大はしゃぎする。

 私はこれを見て

「すごい・・・こんなに取れるものなのか」

 と驚いてしまった。

 彼女は

「私たち2人を含めてもも3人しかいなかったのよ」

 と、(なか)ば興奮気味に言う。

 普段はめったに驚かないおっちゃんさえも

「これだけあったら、明後日まで取りに行くことがないなぁ」

 と驚きを隠せないようだった。

 今日3回目の食事だが、めったに2回以上しか食べれない4人にとって、ちょっとしたご褒美なんだ・・・と思った。

 取ってきた食べ物をみんなで分けて食べる。

 今日はいつもより多そうだ。

 しかし、私は食欲がない。

 そのため彼女に

「残していい?」と聞いた。

 彼女は心配そうに私の顔を見つめ

「どこか痛い場所でもあるの?」

 と聞いてきた。

 私は

「最近食欲がなくて・・・う・・・あ・・・」

 と言った後すぐに食べたものを吐き出してしまった。

 彼女は(松田君、どこか変だわ・・・)とそう思いつつ、かける言葉を探していた。

 おっちゃんと彼も私の異変を感じたようで

「どうしたの?」

 とおっちゃんが言い、彼も

「大丈夫か?またかよ・・・」

 と言う。

 私は心配してくれる3人が過去自分の世話をしてくれた家族みたいに感じてきた。

 そして服の袖の裏で口を拭いて

「心配してくれてありがとう。もう大丈夫だから」

 と言って

「もう1回食べるから」

 と、弁当に手を伸ばした。

 その時に彼女が

「賞味期限から日にちがたってない弁当を選んであげる」

 と言って、弁当を選んでくれた。

 私は弁当を食べ終わった後、彼女に

「すまない」

 と言った。

 彼女は黙って頷いた。そして

「少し横になったほうがいいわよ」

 と言いながら段ボールを用意してくれた。

 私は横になる。

 少しづつ体の痛みがとれていくようだった。

 そして、3人も横になった。


 朝が来た。

 強く降った雨はやんでいた。

 私は昨日より体調がよさそうである。

 おっちゃんと彼女はすでに起きていた。

「おはよう」

 と声を交わす。

 彼女は「体はどう?」と聞いてきた

 私は「大丈夫です」と答えた。

 彼も目が覚めて「今日は元気そうだな」と言って近づく。

 そのあと、昨日傘をさした割にはずぶ濡れだったせいか「ハクション」とくしゃみをする。

 その後、彼は私に

「こんなの平気だよ」

 と言って笑った。

 おっちゃんはにこやかに

「向う(1㎞先)の公園へ行くか」

 と言う。

 私も彼も同意する。

 ところが彼女は

「新しい場所に行くのは不安だわ」

 と言い、この場所を離れることへの抵抗感を見せた。

 今度は3人で彼女を説得する。

「1度、出かけてみませんか」

 と頼み込むように言った。

 彼女は

「そんなに言うなら・・・」

 と、出かける用意をする。

 今度は、私とおっちゃんと彼が知っている場所だ。

 私は

「わからないことがあれば聞いてください」

 と言って、彼女を安心させる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ