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家族みたいなホームレスたち  作者: びでばき
それは、まるで家族のように
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第十一話 和解

 この公園には、イチョウの木が茂っていた。そして季節は秋である、

 彼女は、イチョウの木から落ちる銀杏を集めていた。


 彼女が

「銀杏取るの手伝って」

 と声掛けする。

 おっちゃんと私は腰を曲げて銀杏を取るが、彼は動かない。

「俺はこんな面倒くさいことはやらない」

 と言ってさぼってる。

 それを見つけた彼女はたまりかねて

「木崎君も手伝って、これ今日の晩御飯だから・・・」と言った。

 彼は

「しょうがないな」

 と言って銀杏拾い始めた。


 そして1時間後。

 たくさんの銀杏が集まった。

 今度は銀杏の皮をむく。

 彼女は慣れた手つきで剥むいていくのだが、私やおっちゃん、そして彼は苦戦していた。

 思うように剥けない。


 ここで一番苦労をしているのは彼だった。予想通りに

「西もっちゃん、俺は疲れた。もうやらなくていいか?」

 と言ってくるが彼女は

「これはみんなでやる物だから、木崎君も手を動かしなさい」

 と、半分怒り口調で言った。


 これには私も

「言い過ぎじゃないのかな」

 と疑問を呈ていす。


 すると彼女が

「家族なんだからさぼったら怒るのは当たり前でしょ」

 と言った。


 私は(厳しいな・・・と)心の中で思った。


 そうこうしているうちに全部の皮が剥けた。

 彼女以外の3人の指先は痛くなっていた。

 彼女無言では鍋を用意し、皮の向けた銀杏を茹で始めた。

 それを見つめる3人。


 そして銀杏が茹で上がった。

「やっと出来たか」

 と3人が言う。すると彼女は

「お待たせ。から剥きお疲れ様。ありがとう」

 と3人に言った。


 彼は私に

「やるじゃん」

 と声をかけた。私は少しびっくりしてしまった。

 なにしもこれまで散々認めなかった私への態度が明らかに変わってしまったのだ。


 私は心の中で(銀杏剥くのに手伝ったからかな?と)思った。さらに(もしかしたら彼と打ち解けるチャンスかもしれない・・・とも)感じた。

 そして私はこう言った。

「困ったときはお互い様ですよ」

 と。

 すると彼が無言で頷いた。

 しかし彼の心の中では完全に信じ切っていなさそうだった。

 その気持ちを感じ取った私は心の中で(後何をしたらいいのだろう・・・と)思った。

 私がそんなことを思っているとき、彼女が

「食べるわよ」と言ってきた。


 そして銀杏を食べる。

 たくさんあった銀杏も、4人で食べるとあっという間に無くなる。


 私はあまり食べれなかった。どうやら気持ち悪くなってきて、食欲が落ちてる気がする。

 私は食べ切れない分を彼に分けた。すると彼は

「食べないの」

 と言ってきたので私は

「うん・・・」と頷き倒れ込んだ。

 その姿を見て彼が

「おいおいおいおい・・・大丈夫か」

 と言ったのがおっちゃんと彼女に聞こえたようで、心配して私の周りを取り囲む。

 私はすぐさま起き上がり

「心配させてごめんなさい」

 と謝った。


 しかしこの時点で私の体に異変が起きているのがまだわからなかった。

 その様子を見ていた彼は、私の体を起こしてくれるのを手伝ってくれた。そして再び

「大丈夫か」

 と声をかけた、


 彼がそんな態度をとるのは、ちょっと前は信じられないくらいだった。何分初対面の時は、切れないとわかっていても包丁を突き付けた相手である。そんな彼から心配の言葉をかけてもらうなんて・・・と思った。たった数日の時間で和解するなんて「奇跡」以外の何物でもない。私は彼の心変わりを分かっていなかったみたいだったが、彼も私を敵視するのをやめたみたいであった。



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