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家族みたいなホームレスたち  作者: びでばき
出会い
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第一話 お茶目な命の恩人

 都合で今までの生活をすべて捨てざるを得なかった主人公、松田真一(まつだしんいち 35歳)。

 何もわからずに路上へ放り出された主人公を救ってくれたのは、小汚い格好をした年齢・名前不詳の「おっちゃん」だった。

 絶望の淵に立たされた主人公が何事も楽観的に考えるおっちゃんとともに生き延びるためのホームレス生活が始まった。


 ふと、目を覚ました。

 秋の一日、私は公園の中にいた。拾った寝袋から顔をのぞかせると、傍らにおっちゃんがいた。


 私がホームレスになって半年が過ぎようとしている。私と年上のおっちゃんとはお互いの名前が知らないが、絶望に瀕して飢え死に寸前の私に声をかけてくれたおっちゃんに色々と教えてくれた私の命の恩人と、とある公園で一緒に日々を過ごすことがもう日課になってしまった。


 時には寿司屋の裏に行き、残飯の酢飯を一緒に取りに行ったり、ファーストフード店も余った食材を取りに行ったり、マンションのごみ箱から服を拾いに行ったりして何とか凌ぎながら過ごしていた。そのため私はスーツの上に敗れたジャンパーやボロくなったシャツ着こんでいた。そのため気温が下がる夜は冷えずにすんだが昼間は「暑い」と感じていた。


 おっちゃんは拾い物を重ね着している・・・というか着ているものが破けているのでまるで包まっている状態で足元は長靴をはいていた。私は普通の皮靴を履いていたが、かかとがすり減り継ぎ目が破けて爪先も破れて底と本体をテープで巻いて剥がれないようにした位ボロボロな状態だった。その靴を見ていたおっちゃんは私のために長靴を拾って来て

「これを履いたほうがいい」と言ってきた。

 私は最初は嫌がっていた。スーツに長靴は似合わないと思ったが、おっちゃんが

「わしもスーツを着てたんだ。ボロボロになったがな」

 とか言いながら、

「あんたみたいに破れた靴より長靴のほうがいいぞ」と、すでにきちんと履けない靴の事ををさんざん指摘されてしまって、私は長靴をいやいや履くようになった。最初は抵抗があったが、おそらく、雨が降ったためだろうか、何日か履いているうちに抵抗がなくなった。

 さらにおっちゃんはビニール傘が嫌いなようで、散々探しまくって見つけた普通の傘を持っていた。私は折り畳み傘を持っていたが、おっちゃんから普通の傘を渡されるとそれを使うようになった。折り畳み傘は「杖替わり」にならないためである。


 ホームレスは基本的に孤独を好む事が多いが、おっちゃんの様になるべく長い時間を一緒に過ごすことは珍しい。私は基本的には人寂しいので一緒にいるのは大歓迎だがおっちゃんも人寂しいみたいで

「今日も一緒だなぁ」


 と照れくさく話すのが印象的である。時には連れ小水を誘うのが日課となっていた。

 お小水を私の長靴めがけてかけると「やった」という表情を見せる。対して私がおっちゃんの長靴めがけてお小水をかけると逃げてしまう。結構おちゃめなところがあるのだ。


 私は髪が伸びてきたので後ろでくくっていたのだが、おっちゃんが

「ただで切ってもらうところがある」

 と教えてくれたので一緒に別の公園へ行った。そこには美容専門学校の生徒が練習のためにただで髪を切ってくれるのだった。


 おっちゃんはすでに切っていたようで髪が短かった。髪の毛を切ってもらうとすっきりとした気分になる。


 そんなこんなで一緒に過ごしていると時にはお互いの「不平不満」が出てくるようで、おっちゃんが

「一人で過ごしたい」


 と言って、私から離れていった。


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