M37エアウェイト
バイクのガソリンが無くなり始めたので道中のガソリンスタンドに寄る。ガソリンスタンドにはパトカーが一台止まっていた。恐らく店員が警察を呼んで来たのだろう。パトカーの側には警察官の死体が二体倒れていた。
先ずはバイクにガソリンを入れる。お金を入れてハイオク満タンにする。普段はレギュラーを入れるが何となくハイオクにしてみた。
「警察官か。銃とか持ってるよな」
確か殆どの警察官はニューナンブM60とM37エアウェイトが基本装備の筈だ。最近ではP230オートマチックの拳銃も一般の警察官にも配備され始めたが、極一部の都心部のみに留まってる状況だ。よってこの辺りの警察官ならリボルバータイプの物しか無い筈だ。
バイクのガソリンが満タンになり蓋を閉める。そしてゆっくりと警察官の死体に近付く。
「う…これは酷いな。ズタズタだよ」
警察官の死体は多数の奴等に襲われたのか至る所が噛みちぎられていた。然も一人は左腕が無くなっている状態だ。しかしM37エアウェイトは死体のすぐ側に落ちていた。俺はゆっくりとM37エアウェイトに手を伸ばす。
「途中で動くなよ。そう言うドッキリとかは要らないからな」
M37エアウェイトを拾い留め具を外して持ち上げる。思ったより重みがあるが、その重みが本物の銃だという証拠だろう。もう一体の死体からもM37エアウェイトを拾う。ついでに警棒と手錠を一つずつ回収する。
シリンダーから弾薬を取り出す。空薬莢が7発で使える弾薬が3発手に入った。使える弾を装填して構える。
「やっぱりエアガンとは違うな。でもこれでマシな武器が手に入ったか」
俺はM37エアウェイトを仕舞いバイクに跨り走り出す。上坂中央ドームまで後少しだ。気合いを入れ直す様にアクセルを回しスピードを上げるのだった。
……
上坂中央ドームは此方側から見て川を隔てた先にある場所だ。向こう側に向かうにはすぐ側にある大橋を渡るのが一番早いだろう。しかし大橋は大量の車が詰まった状態で放置されている。更に車からは黒煙も出ているので危険な状況だ。更に言えば奴等も大量に居る訳だから尚更危険な場所と化している。
本来なら大橋を渡るのは自殺行為だが俺にとっては問題無い事だった。バイクを手押しで歩道から渡ってるが奴等は見向きもせずゆっくりと徘徊していた。
だが、この大橋の車の詰まり具合は異常だと言えた。
「これ絶対沢山の民間人が此処で死んだだろ」
大橋を渡って3/4を過ぎた辺りだろうか。警察のパトカーと機動隊の輸送車両がバリケードになって道を塞いでいたのだ。更に放水車も止まっており完全に封鎖されており、此処から先には通さない様にされていた。
だが、奴等はそれでも止まらなかったのだろう。警官隊の必死の行動も虚しく、今は誰も居ない状況になっているのだ。
「これ空薬莢じゃん。此処で戦争でもしたのか?」
地面に転がってるん大量の空薬莢を見つけてふと気がつく。これだけの空薬莢があるならM37エアウェイトより強力な銃があるのでは無いのかと。多少の危険はあるが3発しか無いM37エアウェイトでは心許ないのは事実だ。それに奴等相手に弾は幾ら有っても足らないくらいだし。
「出来れば人間相手には使いたく無いけど」
バイクを止めてM37エアウェイトを取り出しながら道の真ん中辺りを探して見る。状況を察すると多分封鎖自体は上手く行ったのだろう。唯、後方から襲われた感じに見える。更に言えば生存者の必死の抵抗も有ったのだろう。考えれば当たり前の事だ。死にたく無いから逃げて来たのに封鎖されたら死ぬしか無い。だったら封鎖されてる所をブチ破るしか無い。現に封鎖されてる場所にはセダンタイプの車が突っ込んでる状態だ。
「この辺りは完全に血の海だな。かなりキツイ匂いだ」
もう鼻は匂いに慣れてると思ったが、それ以上にキツイ場所になっていた。しかし、ほんの些細な事が疑問として出て来た。
「血があんまり固まってないな。コレって、ウイルスの影響か?」
しゃがみ込み血の海を靴でなぞる。血は靴の跡を残すものの徐々に戻って行く。そんな時、ふと小さな疑問が出る。もしこのウイルスに感染した血液が川に流れたらどうなるか。大半は海に流れるだろうが、途中で水道局に向かうのではなかろうか。最悪水道管から各家庭にウイルス入りの水が送られるのではなかろうか?
「こんな時こそスレ立てだな」
俺はスマホを取り出しながらスレ立ての準備をするのだった。
【水道水は大丈夫なのか?】
1:サバイバリストスレ主
今気付いたんだが、感染した血液が川に流れて水道局に向かうとしたら大丈夫だろうか?2〜3日経ってる血液が未だに乾燥し切ってないんだが。
2:サバイバリスト名無しさん
証拠うp
3:サバイバリストスレ主
こんな感じよ。大丈夫だろうか?
http://×××××
4:サバイバリスト名無しさん
水道局はかなりの薬品を使って水を浄化してるからな。大丈夫なんじゃない?
5:サバイバリスト名無しさん
未知のウイルスだぞ?効果があるか分からんだろうに。
6:サバイバリスト名無しさん
水道局も馬鹿じゃない。その辺りはキチンと管理されてる。特に人体に直接影響が掛かる場所だから尚更。
7:サバイバリストスレ主
なら大丈夫か。もし水道水を通じて他の生存者が奴等になったら日本オワタになるからな。
8:サバイバリスト名無しさん
と言うかスレ主は本物のサバイバリストスレ主か?もし本物なら助けに来てクレメンス。
9:サバイバリストスレ主
今から別の人を助ける予定だから無理。因みに助ける人はみんなが知ってる有名人だぜ!
この人を助けれれば生存者に希望が湧くし、俺がモルモットにされる可能性も下がるってなもんよ!
10:サバイバリスト名無しさん
モルモット?あー、成る程な。確かに今のスレ主は日本中、いや世界中から見たらモルモット一択だもんな。
11:サバイバリスト名無しさん
はよモルモットになれや。お前一人が犠牲になれば全員助かるんだよ。
12:サバイバリストスレ主
>>11
お前みたいな奴から身を守る為に行動するのが俺にとって先決だよ。
13:サバイバリスト名無しさん
>>11
不謹慎。お前がモルモットになって来い。
14:サバイバリスト名無しさん
>>11
気持ちは分かる。けど直ぐにワクチンが出来る訳では無い。怒りをスレ主に向けるのは御門違いにも程がある。
15:サバイバリスト名無しさん
スレ主、なるべく早く然るべき場所に行ってくれ。でないと俺達全員餓死か奴等の仲間入りだ。
16:サバイバリストスレ主
そもそもワクチン作る場所は何処なんだよ!未だに連絡は来ないし。最悪自衛隊の基地に向かうしかないかな?
17:サバイバリスト名無しさん
連絡が無ければそれしか無いかもな。自衛隊の基地にも一応バイオ対策はされてる筈だし。
18:サバイバリストスレ主
なら近い内に自衛隊の基地に向かうよ。其処で血液だけ渡す様にする。
「取り敢えず水道水は大丈夫そうだな。後は武器探し武器探しっと」
スマホを仕舞い再び銃を探す。バリケード付近には警察官の死体が多数転がっていた。更に奴等と化しており辺りを彷徨っている。警察官の死体に近付きニューナンブM60の弾を抜き取って行く。
(相変わらず奴等は俺を襲わないか)
俺を襲わない奴等を見て思うのは、一体自分は何になってしまったのか。もう自分が人間では無くなってしまったのか。だが意識はあるし心臓は動いている。だから奴等では無いと信じながら弾薬を抜き取って行くのだった。