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Z of the Day  作者: 吹雪
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袖振り合うのも多少の縁ですな

ある程度離れれば奴等の姿は見えなくなる。だが、もしかしたらこの辺りも見えない場所に潜んでるのかも知れない。大半は生存者を追い掛けてはいるだろう。それでも残る奴等はいる訳だ。


「それにしても最近射撃が上手くなってる気がするな。さっきも片手撃ちで当たったし」


多分射撃自体に慣れ始めているのだろう。でなければ片手撃ちなんて出来るとは思えない。実戦は訓練より数倍も経験になると言うが正にそれだろう。勿論基礎が無ければ意味は無いがな。


「後はバイクも回収しないとな。と言うかあのギャル達は無事に逃げ切ることは出来たんだろうか?」


レミントンM870の弾をリロードしながら呟く。そもそも一輪車乗れるとか言ってたけどバイクと全然関係無いからな。

道路を歩きながら使えそうな車を探す。大半は使えそうだが鍵が掛けられていて意味が無い。車の持ち主もまさかこんな事態になるなんて思いもしなかったのだろう。俺も逆の立場なら普通に鍵を掛けるだろうしな。

時々死体も転がってる。もしかしたら死体に鍵が有るかも知れない。死体を足で蹴り反応を見る。動く気配は無いので両手を合わせてからポケットやリュックの中を漁る。


「水にタオルにお菓子か。後は財布にスマホか。鍵は無いな」


お菓子と財布の中身を貰って次の死体を漁る。それでも車の鍵は見つからず。暫く死体を漁っているとエンジン音が聞こえてくる。俺は車の陰に隠れてレミントンM870を両手に持ち警戒する。

車の陰からエンジン音が聞こえる方を見る。徐々に音は近付いて来る。


「マジかよ。戻って来てんじゃん」


どうやらギャル2人が戻って来ていた。俺は車の陰から出て手を振る。此方に気付いてバイクを寄せて近付いて来る。


「おー、凄いッスね。あの状況で生きてるんッスね。然も此処まで逃げてるし」


「それに本物の銃使ってるし。最初は変態で軍事オタクかと思ってたけど」


「お前ら言いたい放題だな。まあ良いや。取り敢えず無事で何よりだ。それじゃあバイク返してくれ」


俺は手を出す。するとギャルは手を握り返してくる。いや握手したい訳じゃないんだけど。


「いや〜、バイクの運転って楽しいッスよね。暫く使ってて良いッスか?」


「ダメです。それは俺が大学時代からの愛車なんでね」


「ちぇ〜。なら仕方ないッスね」


「ごめんなさい。美由紀も悪気がある訳じゃないんで」


バイクを返して貰い少しギャル達と話をする。どうやら話を聞く限り彼女達は食料調達として駆り出されてるらしい。


「君達だけでか?男子もいるだろう?」


「それは私達が別の学校の生徒なんスよ。制服は高鷲の奴を借りてるんスけど」


「制服もウチらのだと目立つだろうからって生徒会長が予備のを渡してくれたんです」


「成る程な。それでも女の子だけで探索に行かせるのはどうなの?」


「そうなんスけど。正直学院だと肩身が狭いと言いますか…」


「私達は所詮余所者扱いですよ。だったら沢山の食べ物見つけてギャフンと言わせたいじゃん」


「後男子の目が結構ヤバイッスね。一緒に行動したくはないッス」


逆境の中でも前向きに生きようとする姿は正直言って凄いと思う。後ムラムラしてるのは俺だけでは無かった様だ。その辺りは殆どの男に言えるだろうな。だが彼女達を見続けてれば仕方ないかも知れない。


「そう言えば俺名乗ってなかったな。織原 慧だ。宜しく」


「美由紀ッス。浜田 美由紀(みゆき)。宜しくッス変た…慧さん」


「黒川 小夜(さよ)です。宜しくです」


美由紀はパッチリ目で童顔だが若干大人びた雰囲気がある。正に高校生のみに与えられた危うい雰囲気がある。髪型も肩まで掛かる長さで銀髪に染めている。尤も髪の根元は染まってないが。

小夜は若干ツリ目だ。表情はクールで少々キツイ印象を受ける。だが左目の下に泣き黒子があり中々セクシーに感じる。彼女はロングヘアーを茶髪に染めてるのだろうが美由紀と同じ状況だ。

そして二人共高校生にしては実ってるたわわな果実は禁欲男子にとって目と下半身に猛毒だ。そりゃ理性的に見ろと言う方が無理ってなもんだぜとっつぁん!


「おい美由紀。お前今俺の事変態って言おうとしただろ」


「所で慧さんはこれからどうするんスか?」


「無視かよ。まあ良いけど。俺は北海道に行くつもりだ。と言うか北海道に行くしかないんだ」


「北海道スか。確か安全な場所ッスよね」


「でも北海道まで遠いじゃん。ぶっちゃけヤバ過ぎでしょ?」


普通の人なら北海道行くのは奴等に襲われて死ぬ可能性が高い。勿論同じ人間からもだな。特に食料関係で何処かの避難所に行かなくてはならない状況に陥る可能性もある。

だが俺なら問題はない。人間には襲われる可能性はあるが奴等には襲われないし食料だって普通に調達出来る。


「まあ俺は平気だよ。それにコイツらが有るからな」


レミントンM870とM37エアウェイトを見せる。本物の銃を見て美由紀と小夜は納得した表情をする。


「でも銃を見ると姐さんを思い出すッスね。元気ッスかね」


「大丈夫でしょう。だってあの人強いもん」


「銃繋がりで思い出す人ってどんな人なんだ?」


ちょっと気になり聞いてみる。すると意外な人物との繋がりがあったのだ。


「えっと…姐さんは私達の一個上の先輩なんス。学校では番格張ってたんス」


「姐さんは本当にカッコ良かったなぁ。然もメチャ強なんですよ。特に石とか瓶とか投げれば百発百中なんです」


「然もアーチェリーもやってて何時も持ち歩いてたッス」


「「でも男の趣味が…」」


散々姐さんを持ち上げてたのに突如落下する2人。そんなに男の趣味が悪かったんか?


「え?何さ。付き合ってた奴が駄目駄目ヒモ男とか?それとも良い年になっても厨二病を克服出来なかった夢見る男子とか?」


「なんスか。そのピンポイントな趣味は。寧ろ同い年でそれなら許せないけど許す感じッスかね」


「それくらいなら根性焼きは必須だけど姐さんが止めますから結局やらず終いですよ」


「「ただねぇ〜」」


「じゃあ一体どんな人なのさ」


2人は渋い表情になりながらも話す。そんなに嫌なのか?なんか同じ男として少し同情するよ。


「姐さんより一回り…いや、二回りくらいかなぁ?年が離れてるんですよ」


「初めて写真で見せて貰った時に親戚の伯父さんですか?って言っちゃったんスよ。そしたら姐さんにアイアンクローされたッスけど」


「そりゃアンタが悪いわよ。まあ私も同じ事思ったけどね〜」


「そんなに歳離れてるのか。それもう犯罪じゃねーか。あ、でも最近似たような夫婦を見たな。アレも中々ショッキングだったけど」


今朝に別れたばかりの相沢家族を思い出す。あの夫婦も中々インパクトがあったな。然も猛アピールしてたのが朱美さんだったとは。俺は信じる事が出来ず何度も篤さんを見て確認してたな。


「今時年の差婚は珍しい物でも無いしな。それに赤ん坊も居たし。名前は純子ちゃんでな。中々利発そうな子だったよ」


俺が赤ん坊の名前を言った瞬間、地味に間が空く。


「…純子ちゃん?」


「…マジッスか。因みに奥さんの名前は朱美姐さんで合ってます?」


「合ってるな。旦那さんは篤だけど。え、もしかして相沢家族と知り合い?」


「知り合いも何もないッスよ。朱美姐さんがウチらの番格でしたもん」


「アッと言う間に結婚までしちゃいましたからね。いやー、あの時は皆豆鉄砲食らった表情してましたよ」


まさか意外な所で相沢家族との知り合いに出会う事になった。それから朱美さん…もとい相沢家族について色々聞かれた訳だ。

やれ無事なのかとか、銃は相沢銃砲店で手に入れたのか、純子ちゃんは可愛いだろうとか。全ての質問に答えると2人は安堵の表情になる。


「でもまさか朱美さん繋がりでの知り合いに見つかるとはね。昨日会ったばかりなんだけどな」


「まあまあ良いじゃないッスか。それより慧さんはこれからどうするんです?」


「うーむ、そうだなぁ」


正直バイクを返して貰ったから此処でさよならしても良いんだが。だけど相沢家族には多少は世話になった。それに何より改修仕様のレミントンM870を譲ってくれたし整備や撃ち方も教えて貰った訳だ。

それに此処で見捨てたら自分にとって色々目覚めが悪いからな。


「決めたよ。君達を学校まで送って行こう。さっきもだけど奴等が何処に潜んでるか分からないからな。安全だと思っても実はなんて事がありそうだし」


「それは有難いんスけど。ウチらまだ食料とか集めないとダメなんで」


「そうですよ。幾ら朱美姐さんの知り合いでもこれ以上無茶は言えないし」


妙に遠慮してるギャルっ子共。全く、こいつらはいつから大人になったんだかな。


「子供ってのはな大人に頼っても良い権利があるのさ。俺は大人でお前らはギャルっ子な訳だ。ほらさっき拾った菓子やるよ」


チョコ菓子を差し出しながら言う。するとお菓子を受け取りながら頭を下げる。


「慧さん、あざッス」


「どうもです」


「不器用な感謝の言葉やね。まあ良いか。それじゃあ食料調達もやって学校に向かうか」


こうして俺は朱美さん繋がりの美由紀と小夜のギャルっ子達と共に奴等が潜む街の中へ探索に向かうのだった。




日本領空 アメリカ軍所属MH-60L ブラックホーク


第1特殊作戦部隊デルタ分遣隊、通称デルタフォースのメンバー6名とパイロット2名はブラックホークに乗り込み日本領土の空に居た。彼等の目的はただ一つ、目標である織原 慧の捕縛である。


「俺さ5年前に日本へ行った事あったけど…今の光景が信じられねえな」


彼等の眼下には黒煙を上げ続ける街が見える。嘗ての街の姿は無く、代わりに奴等の大群が街を闊歩していたのだ。


「日本だけじゃない。ワシントン、ボストン、ロサンゼルス、デトロイト、そしてつい先日にはシアトルとの連絡が途絶えた。アメリカでそうなったんだ。日本…いや、世界が同じ状況だ」


「クソッタレが。ノロマなゾンビだけだったら何も問題無かったんだ。走る奴や脚力が異常に高い奴。それ以外にもうじゃうじゃと変異種が出て来やがるから」


「今だと大雑把に分けるなら稼働してるゾンビや非稼働なゾンビになる。今は稼働してる方が厄介だが街の奪還作戦時には非稼働の方が手間取るだろうな」


「変異種は全部頭に入れたか?俺は全体的に強化された【フォース】型が厄介だと感じたな。拳銃程度だと効かねえんだとさ。それに若干の知性が有るとか」


「映像を見る限り腕で頭を守って突撃して来てたからな。然もパワーもある。逆にファットマンは無視しても構わねえな。寧ろ爆発でゾンビ共を巻き込める」


「フォース型はそんなに多くは無いだろ。寧ろ走って来るゾンビの方が厄介だぜ。彼奴ら弾丸を物ともせずに突っ込んで来るからな」


様々なタイプの奴等について話し合うメンバー達。そして目的地へ向かうブラックホーク。

だがデルタフォースを乗せたブラックホークの姿を双眼鏡見つめる1人の白髪の女性が居た。


「意外とお早い到着の様ね。私も急いだ方が良さそう」


女性は双眼鏡を仕舞い車に乗り込む。そして織原 慧の持つスマホのGPSから場所を特定する。


「先に連中が接触する。それなら待ち伏せして落とせば良いかしら。今織原 慧に電話したら足が付いちゃうし」


車のエンジンを掛け一気に加速して走り出す。奴等はエンジンの音に引き寄せられるが捕まえる事は出来ない。唯腕を伸ばし呻き声を出す事しか出来ない。

後は恨めしそうな視線を走り去る車に向けるのだった。

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