変態ではない!紳士だよ!
西暦2022年5月18日
相沢家族と別れて北海道に向けてバイクを走らせる。しかし道中突然ある発作が起きた。正確に言うなら前からソレは起こっていたのだが相沢夫婦を見てから余計に意識してしまった訳だ。ほら朱美さんとか美人じゃん?人妻じゃん?でも純子ちゃんも居るし何より他所の家だしね。
なら発作とは一体何なのかと言うと。
「一発抜きたい」
そうオナ○ーである。たかがオ○ニー、されど○ナニーだ。最早伏せ字の意味を持たない位ヤバイのだ。因みにどの位ヤバイのかと言うと。
「凄くムラムラします」
この台詞を真顔で言えるくらいだ。
俺も漢だ。小説やゲームでもゾンビ娘とあんな事やらこんな事をしちゃってハーレム作ってる物は知ってる。他にもゾンビ娘を題材にしてムフフな展開物も知っている。まあ紳士としての当然の嗜みと言っても過言ではない。
なら現物のゾンビ娘を相手に出来るのかと問われれば答えはNOと断言出来る。理由はやはり結構グロいのだ。血が大量に付いた奴等とか腕が無くなってる奴等なんて可愛いもの。酷いのは内臓が見えてる状態や顔面がモザイク必須な状態の奴等も居るのだ。更に付け加えるなら。
「やっぱり匂いだよな。多分腐敗臭だろうけど」
僅かながら腐敗臭がしてるのだ。死んでるからか内臓とかは機能停止しているから徐々に腐敗して行くのだ。仮に綺麗な奴等を見つけたとしても実質死体な訳であって中々手を出し難いのが実情だ。
「全く、こんな時に限ってコンビニが見つからない。何処だ?何処にある」
この際紳士達御用達のアキハ書店でも良いのよ?この辺りに無いかな?
暫くコンビニか書店を探しながらバイクを走らせる。すると漸くコンビニを発見する事が出来た。俺は顔を綻ばせながらコンビニの駐車場にバイクを停める。
コンビニは非常に荒らされていた。自動ドアも窓ガラスも全て割れており食べ物や飲み物は殆ど無く、煙草などの趣向品も殆ど残されてはいなかった。代わりに雑誌類は結構残ってはいた。
「やっぱりレジとATMは狙われるよな。まさに火事場泥棒って奴だな」
カウンターにあるレジと雑誌の隣にあるATMは見事に力技で破壊されていた。尤も今の俺にとっては非常にどうでも良い事だ。
目的の物は直ぐに見つかった。全て手付かずで綺麗な状態で残っていた。今の俺にとっては食料よりもずっと価値ある物だと断言出来る。
「【昼下がりの人妻と危険な関係特集】に【若いギャル達との学園性活】か。ムフフ、他にも沢山あるじゃないの!あるじゃないの!」
俺は目の前にある大量のお宝を目にして有頂天になる。そして白昼堂々とエロ雑誌を見る。
だがどんな時でも周囲の確認はすべきだった。例え世界が崩壊してるとしても。いや、崩壊してるからこそ周囲への警戒は必須だったのだ。
エロ雑誌を見て色々高ぶって来た訳だ。では、そろそろと思い顔を上げる。そして女子高生と思われるギャルっぽい子と目が合った。制服からして高鷲私立学院の学生だろう。
この時お互いの時間が止まったのは間違いない。1分なのか10秒なのかは分からない。だが間違いなくお互いの時間は止まったのだ。
最初に動いたのは女子高生の目線だった。俺が読んでる若いギャル〜のタイトルを見てから再び目線を合わせて来る。かくいう自分はと言うと目線を右往左往させるしか出来なかった。
(ど、どうする?どうすんだよ?え?おい。これどうやって誤魔化せば良いんだよ。いや、そもそもこれ誤魔化せんのか?)
何となく頭に浮かんだ考えは3つ。
・そのままギャルを無視して読み続ける。
・奇声を上げてバイクで逃走。
・奴等に成り切る。
(この視線の中で読み続けるとかどんな羞恥プレイだよ。かと言って奇声を上げるなんて論外じゃん)
結局どれ選んでも後悔しかしないだろう。てか後悔は確実にする。それなら一番マシな奴を選んだ方が良いのではなかろうか。
俺は瞼を閉じて深呼吸する。そして再び瞼を開けて奴等に成り切る。一世一代…とは行かないものの取り敢えず大勝負にでる!俺はエロ雑誌を閉じて白目を剥いて腕をギャルに向ける。
「うがぁ〜」
「……キモ」
ギャルは一言呟き去って行く。残されたのはキモいと呼ばれた俺が虚しく腕を伸ばしてるだけである。
余りの虚しさに俺はその場で体育座りしてしまう。
確かにこの非常事態に何呑気にエロ雑誌読んでんだよと。でも仕方ないじゃん。だって、男の子なんだもん。
暫く体育座りしながら内心言い訳ししてると足音が聞こえる。顔を上げて見ると高鷲私立学院のギャルが2人居て此方を見ていた。
「ほらあの人っスよ。マジでエロ本読んでたし。然も私達みたいなのを」
「うわー、ないわー。この状況でエロ本読むとかないわー。あ、でも逆に変な方向で度胸あるんじゃない?」
「何それ。エロ本の為に外出るとか超ウケるっスね」
口々に俺の悪口を言うギャル2人。
(やめて!もう俺のライフはゼロよ!)
散々ギャル達になじられてる訳だがふと思う。何故ギャルが此処に?
俺はギャル2人を観察する。制服姿だが2人共スカートの下にはジャージを履いてる。腕にはタオルを巻いて奴等対策はしている。また武器も竹刀を持ってる。それに随分と落ち着いてる様子もあるので外出自体は何度か行ってるのだろう。
「そろそろ弄るのやめよっか。こんな変態に構ってる暇無いし」
「そうっスね。でもこの辺りはもう何もなくないッスか?ぶっちゃけ他の所とか探した方が良いんじゃないスかね」
「でも危ないよ。まだ探してない場所とか有る筈だよ」
ギャル2人が相談してる隙に静かに立ち上がりコンビニから出る。今回の件は自分自身が周辺警戒を怠って招いた結果だ。次に同じ失敗を繰り替えさなければ問題無い。
(人は失敗と後悔をして初めて学ぶ事が出来る訳だ。つまり俺は一つ学ぶ事が出来た。これは大きな前進だな)
エロ雑誌は他の所で読もう。特に人気の無い場所で読めば問題は無い。もしくは適当な民家に入ってしまえば良いだろう。
ギャル達を無視してバイクに跨ろうとした時だった。近くで奇声を上げる声が聞こえる。何処から嗅ぎ付けたか分からないが道路の向こうから走るタイプの奴等が10体以上が此方に向かって来ていた。
「嘘!何で気付かれてんの!私達音出して無いのに」
「それより早く逃げよ…あ、最悪。反対からも来てるッスね」
「防犯ブザーはまだ4つある。向こうに投げれば少しは…」
「逆に周りにいる奴等を引き寄せちゃうッスよ?兎に角コンビニに逃げるッス。ほら変態さんも!」
ギャル2人はコンビニで立て籠もるつもりだろう。彼女達にとって今は絶体絶命のピンチだ。それでも見ず知らずの俺の事も心配してくれてる訳だ。
俺はこんな世の中でもまだまだ捨てたもんじゃないなと思いながはバイクの鍵をギャルに向けて投げる。
「俺は変態じゃねえ。強いて言うなら紳士だな。つまり紳士だからコイツを使って逃げな。奴等は」
レミントンM870を両手で構え奴等に向けて銃口を向ける。
「俺に任せな」
近付いて来る奴等の胸辺りを狙って引き金を引いた。
ドオォン!!
銃声と共に先頭を走っていた奴等の頭部が吹き飛ぶ。フォアエンド動かし弾を装填して再び撃つ。引き金を引くたびに面白い様に奴等の頭が吹き飛んで行く。更に散弾の流れ弾により後ろに倒れる奴等もいる。
後ろからバイクのエンジン音が聞こえる。どうやら逃げる選択を選んだ様だ。上手く逃げてくれよ。
「美由紀ってバイク運転出来たっけ?」
「一輪車とか乗れるしヘーキヘーキッス!」
「えぇ…私超不安なんですけど」
(俺もその台詞聞いて不安しか抱けんわ)
弾をリロードしながら心の中で同意する。だがリロードしてる隙に1体の奴等が反対側からギャル達に迫る。咄嗟にM37エアウェイトを抜き片手で撃つ。弾は運良く頭に当たり前のめりで倒れる。
だが奴等は次々と何処からともなく呻き声を出しながら現れる。ギャル達は逃げてくれたから良いものの普通なら絶望的な状況だろう。
「相手をするだけ無駄か。クソッタレ、一体何処から現れたんだよ」
パッと見た限り居ない場所からも現れている。奴等は隠れる習性でもあるのか?それとも偶々なのか。
(今は考察してる暇は無いか。此処から一旦離れよう)
全てを相手にするのは不可能だ。弾も有限だし。襲われないとは言え押し潰される可能性は有る。それに掴まる時もあるのだ。
俺は逃げる前にコンビニに止まってる車のガラスを割る。すると車の防犯ブザーが鳴り響く。奴等は車に群がり始める。その隙に移動をする。
「あのギャル達が言ってたが防犯ブザーは役に立つみたいだな。今まで気にしてはいなかったけど今度から幾つか持って行こう」
取り敢えずギャル達は無事逃げてくれただろう。今はそれでだけで充分だ。
防犯ブザーの音と奴等の呻き声を尻目にこの場所から離れるのだった。




