フライパンしか無い
改めて某有名サイトや他の掲示板も確認したが内容は似たり寄ったりだった。後は避難場所や助けを求めるコメントなどが多数ある位だろう。それから動画には正にゾンビやアンデットと言える連中が人々に襲い掛かってる様子が見て取れる。
本来ならこんなスプラッターな映像は即バンされそうだが、今はそれどころでは無いのだろう。寧ろこの動画達は貴重な映像と言える物だ。
幾つか調べて一つだけ言える事がある。それは外出は控えておく事だ。何故なら未だに奴等が多くの地域に蔓延ってる状況でもある。ならば暫く静かにしてやり過ごすのが賢い選択だろう。
だが、俺にはその余裕は無かった。
「飯が無い」
冷蔵庫の中身はチューハイ一本とおつまみが少しあるだけでカップ麺もパンもこの前食べ尽くしてしまったのだ。
「畜生、運が無い。けど行くしか無いよな」
俺は手持ちで武器になる物を探す。と言ってもすぐに終わってしまう。安物の包丁にカッターナイフ位しか無い。
「これで戦えとか無理ゲー過ぎる。他に何か無いか?」
何か無いかともう一度探す。そして目に入ったのはフライパンだった。フライパンを持ち振りかぶってみる。意外とイケるかも?と思ってしまう。
流石にこのまま外に行くのは正直言って無理だ。現に外では破壊音と悲鳴が偶に聞こえるのだ。俺はネットにスレッドを立てる事にした。
【今から食料求めて外に行きます。因みに武装はと言うと…】
1:サバイバリストスレ主
・フライパン
・安物包丁
・カッターナイフ
以上!
2:サバイバリスト名無しさん
はい無理ゲー。乙でした。
3:サバイバリスト名無しさん
終わるのはえーよwww
4:サバイバリスト名無しさん
スレ主、そんな装備で大丈夫か?
5:サバイバリストスレ主
>>4
大丈夫だ。問題しか無い。
6:サバイバリスト名無しさん
>>5
ダメじゃねえかwww
7:サバイバリスト名無しさん
>>5
もっと頑張れよwww
8:サバイバリストスレ主
真面目な話。他に必要な装備とかある?
9:サバイバリスト名無しさん
本気で外に行くならタオルを靴に巻いとけ。奴等は音に反応する性質があるみたいだし。後は嗅覚も有るから気を付けろ。視覚は分からんけど。
10:サバイバリスト名無しさん
死体の状態によるかもな。鼻が生きてる奴は嗅覚があるだろうし。視覚は俺も分かんね。
11:サバイバリスト名無しさん
後は腕や足に油塗っとけ。掴まれても運が良ければ逃げれるかもな。奴等の腕力は馬鹿に出来ん。
12:サバイバリストスレ主
タオルと油ね。タオルは結構あるからそれ使ってみるよ。他に何か必要なのある?
13:サバイバリスト名無しさん
フルフェイスのヘルメットとかあると良いな。動画とか見る限り結構使ってる奴いたし。
14:サバイバリストスレ主
おお!それなら丁度良いのが有るよ!俺よくバイクでダートコースとか行くから。
15:サバイバリスト名無しさん
スレ主の防御装備は整ってきたな。問題は攻撃装備だな。流石にフライパンはなぁ。
16:サバイバリスト名無しさん
でも一番良さげなのはフライパンじゃね?包丁とか奴等の頭にスレ主が刺せるか?そもそも安物包丁が刺さるか?フライパンなら最悪振り回せば良いじゃん。
後カッターナイフは論外な。
17:サバイバリスト名無しさん
俺もフライパンに一票だ。ほらバトロワゲーでもフライパン防御にも使えるし。
18:サバイバリストスレ主
残念ながら刺すとか勇気無いな。そして意外な程高評価なフライパン君。
19:サバイバリスト名無しさん
>>18
フライパン以外マシなのが無いんだよ。
20:サバイバリスト名無しさん
>>18
せめて木刀辺りを用意して欲しいね。
21:サバイバリスト名無しさん
>>18
フライパンが良いんじゃ無い。フライパンしか無いんだよ。
22:サバイバリストスレ主
なんてこったい!まあ、取り敢えず準備して行くよ。
目標は近場のコンビニでカップ麺と缶詰を確保するぞ!
23:サバイバリスト名無しさん
スレ主頑張れよー。後手袋か軍手は必須だからな。
24:サバイバリスト名無しさん
無理だと思ったら即逃げろよ!命あっての物種だがらな!
25:サバイバリスト名無しさん
スレ主の健闘を祈る。敬礼!(*`・ω・)ゞ
26:サバイバリスト名無しさん
(*`・ω・)ゞ
27:サバイバリスト名無しさん
(*`・ω・)ゞ
28:サバイバリスト名無しさん
(*`・ω・)ゞ
俺はパソコンの電源を切り外に出る準備をする。先ずはタオルを手足に巻き付ける。丁度ビニールテープが有ったのでそれを強く引っ張り細くして使う。更にタオルに油を塗り込む。そして靴にもタオルを巻き付けて足音が出ない様にする。そして中型のリュックサックを背負い白と黄色のツートンカラーのヘルメットを被る。最後にフライパンを装備して準備完了だ。
「あー…出たく無い。でもご飯無いし。このままだとジリ貧なのは間違い無いし」
俺は諦めて玄関のドアノブに手を掛ける。そして外に出る事にしたのだ。
だがこの時の俺は楽観視していたのは否定しない。何故なら此処は家の近くの場所だ。つまり何時も使ってる場所なのだ。だが、その何時もの場所が最早別の意味で全く違う場所になってるとは。この時の俺は想像すらしていなかったのだ。