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Z of the Day  作者: 吹雪
29/38

相沢銃砲店6

治療を終えた後に軽バンを適当な民家の前に停めておく。一応民家の中を確認したが誰かが居る気配は無かった。唯、玄関のドアには鍵が掛かっていたのは少し気掛かりだったが。


「もしかしたら中で奴等になってるなんてオチは無いよな」


一株の不安を抱きながらも相沢銃砲店に戻る。そして戻る道中にある事に気が付いた。それはこれから先の旅には必要不可欠な物だ。


「バイク何処に置いてたっけ?確か自販機の前だった筈だけど。何処の自販機だっけ?」


色々頑張っても結局最後が微妙に締まらないのが残念だ。何とかバイクの場所を思い出しながらゴーストタウンと化した街中を歩くのだった。


……


無事にバイクを回収し再び相沢銃砲店に戻る。店の中に戻ると篤さんが手招きしていた。


「織原君。沢山の物資を持って来てくれて本当に有難う。お陰で私達は生き延びる事が出来る」


「いやいや、お気に為さらず」


「勿論私もお礼はしないといけない。でなければ助けられた意味が無い。さあ、こっちに来てくれ」


篤さんの後に着いて行く。カウンターの床に引いてあるのマットを退かし床下ドアが現れる。其処からキーロックを解除して開ける。床下ドアを開けて篤さんはその中に入って行く。


「おお!これ秘密基地じゃん!」


「私の一番の自慢でもありお気に入りの場所さ。着いて来てくれ」


床下の梯子を伝って降りて行く。そして灯りが付くと少し広い工房が姿を見せる。そして作業台に置かれていたショットガンと工具を見せる。


「さあ、これを受け取って欲しい」


「コレってポンプアクション式?」


「そうだ。レミントンM870。通称ハナマルだ。それからこのハナマルには少し改修を施したんだ」


篤さんはレミントンM870を持ち俺に分かりやすく説明してくれる。


「日本でのハナマルの扱いは本来なら3発までしか装填出来ない。けど私の趣味で手に入れた部品で5発装填出来る様にした」


「もう見た目からしてTHEショットガンって感じですもんね」


ゲームや映画と同じ形のレミントンM870。正に本物のショットガンと言えるのではなかろうか。


「弾は薬室に1発装填すれば5発入る。それから二連装式と違って中折れはしない。弾は此処から装填が出来るよ」


「な、成る程ね。うんうん、成る程ね」


「……織原君、こっちに座って。マンツーマンでしっかり教えるよ。勿論整備の仕方も任せてくれ」


篤さんの良い笑顔が眩しい。でも僕今日だけでも色々あったから休みたいなぁ〜…なんてね?


「織原君、こっちに座って。マンツーマンで」


「あ、駄目だこれ。逃げらんねえや」


狭い空間だから余計逃げる事は無理だろう。それに篤さんは間違い無く善意で教えようとしている。それを態々無下にする必要は無い。

俺は自分に喝を入れながら朱美さんが夕飯だと呼ばれるまでしっかりとレミントンM870の扱い方と整備の仕方を覚えるのだった。


……


辺りが暗闇に包まれる。だが未だに各家やマンション、街灯には明かり灯っていた。故に完全な暗闇とは言えない状況だった。

そんな中途半端な暗闇に紛れる様に数人の集団が静かに行動していた。彼等は慧が集めた物資の略奪に失敗した挙句仲間を8名失ってしまった連中だった。完全に死んだり噛まれてたと確認出来たのは5名までだが、残り3名は行方不明だ。

人数が減った中だが彼等は復讐心を燃やし続けていた。あの時、慧が大人しく物資を渡し服従していれば良かったと思っている。そうすれば大切な仲間を失わずに済んだと。特にリーダーである佐藤 良二の怒りはかなりの物だ。仲間を大勢失ったのもあるが、最後に中指立てられた挙句悠々と逃げた慧の態度が憎たらしいのだ。


「村松が言うにはこの辺りで奴の車を見つけたそうだ。車を見つけ次第一気に押し込みあの野郎を捕まえるんだ。誰を敵に回したのかしっかりと教えてやる」


「そうっすね。大体俺達に歯向かった時点で終わりっすから。だったら殺しちゃいましょうや」


「生きてる人間が初めてって訳でも無いしな」


「言えてる。それに仲間の仇だ。いちいち生かしておく必要がねえぜ」


そして二階建ての民家の前に軽バンが停まってるのを発見。車のナンバーが一致してるのも確認して民家に侵入する。


「よし窓にガムテープを。静かにやれよ」


「了解っす」


仲間の一人に指示を出す。そして静かに窓ガラスを割り鍵を開ける。


「全員聞け。相手は銃を持ってる。だが多勢に無勢だ。俺が先陣を切る。お前達は俺に付いて来い」


良二の言葉に部下達は静かに頷く。一番槍なんて危険も良い所だがこうしなければ人は付いて来ない。

民家に侵入する。全員が忍び足で足音を立てない様に気を付ける。各部屋を静かに探し回る。しかし奴の姿は一階には見当たらない。


「二階か。行くぞ」


良二はクロスボウを構えながら階段を上がる。階段からラップ音だけが聞こえる。階段から通路を覗けばドアが三つある。良二は近くのドアの前に行きドアをゆっくりと開ける。そして良二に続く様に仲間達も着いて行く。

ドアを開けると少年の様な部屋だった。部屋の中を見渡すとベッドが膨らんでいた。そして良二はクロスボウをベッドに向けて構える。


「お前ら、やっちまえ!」


良二がクロスボウを撃つ。矢がベッドの膨らんでる真ん中辺りに突き刺さる。仲間達がバットや鉄パイプで叩きまくる。


(ザマァ見やがれってんだ!俺達を敵に回した報いだ!)


良二がクロスボウの矢を装填し直してる時、別の部屋のドアが何者かによってぶち破られる。だが誰もが興奮して気付かない。ソイツは音がする方へ向かい無防備な良二の背中に向けて口を開く。


ブヂュヴヴ


良二は一瞬理解出来なかった。突然顔を背後から何者かに掴まれたと思ったら首に激痛が走った。だが自分の肉が何かに噛みちぎりられる瞬間理解する。


「ぐわああああ!!!やめあぎぃ!?」


更に深く首を噛まれる。そして首の動脈が噛みちぎられ血吹雪が舞う。良二はクロスボウを落とす。そして仲間達が良二の背後に居る存在に気付く。

だが悪夢は終わらない。先程まで殴られていた者が突然襲い掛かる。殴られて骨が何本も砕かれてるのも御構い無しで近くにいる奴に襲い掛かる。一番近くに居た腕を掴むと同時に其奴の手に噛み付く。


「あいいい!!!俺の指いいい!?!?」


悲鳴が響く。急いで奴等と化した連中に対処する。だがもう遅かった。

悲鳴と怒声は静かな街には良く響く。結果として周りに奴等が集まり出す。然も慧に気付かれない様に夜に攻めに来たのも悪かった。暗闇は奴等の姿を隠してしまう。

誰かが逃げようと言う。だが一階の窓ガラスが多数割れる音が聞こえる。ベランダから周りを見渡す。だが隣接してる民家とは距離が離れており行く事が出来ない。


「嫌だ…死にたく無い。死にたく無い」


「畜生!俺達は嵌められたんだ!」


「馬鹿!それより階段を塞ぐんだ!急げ!」


仲間を噛んだ学生服と私服姿の奴等を叩き殺しながら誰かが指示を出す。そして急いで椅子や本棚を階段の方へ持って行く。しかし何もかもが遅かった。

奴等は階段を登り始めていた。そして階段での攻防戦が繰り広げられる。

奴等は決して遅くは無い。確かに歩くだけの存在は居る。だが基本的には早歩きが大半だ。そして中には走る奴等も居る。

階段の上で刺股で奴等を抑えながら木刀で頭を叩き割る。だが他の奴等を押し退けて迫る一体の走る奴等。そして他の奴等の上に乗りかかったと思った瞬間、一気に刺股を持ってる人に飛び掛かる。


「クソが!!離しやがれ!!」


「待ってろ!今助けっ!しまっ!?うわあああ!?」


仲間を助けようとした瞬間、壁が薄くなった所から奴等が押し寄せる。そして一人が奴等の中に悲鳴を上げながら消えて行く。


「早く塞げ!このままだと皆死んじまう!」


仲間の一人が奴等に貪られてる間に階段を塞ごうと試みる。だが彼等は忘れていた。最初に二人の仲間が噛まれていた事を。その内の一人、佐藤 良二だった者の目が開く。そしてゆっくりと起き上がる。良二の目には無防備な仲間達の姿が写し出されていた。だが彼がそれを認識する事はない。あるのは理性を失い本能のまま食欲に身を任せる事だけ。そして勢いよく嘗ての仲間の背中目掛けて奇声を上げながら襲い掛かるのだった。


……


夜遅く。某有名なチャンネルにスレ立てが出されていた。


【此処最近奴等より生存者の方が危険と感じて来た件について】


1:サバイバリストスレ主

いやー、まさかクロスボウで攻撃される機会があるとはね。人生とはままならん物やね。


2:サバイバリスト名無しさん

ごめん言ってる意味が分からない。敵は奴等じゃないの?


3:サバイバリストスレ主

生存者も敵になりつつ有りだね。理由としては食料確保だと思うよ。態々危険を犯して取りに行くより安全を取って他者から奪った方が良い。

因みに食料不足の理由だって今日の朝に助けた人からパンとマヨネーズを出されかけたもん。


4:サバイバリスト名無しさん

パンとマヨネーズだって今やご馳走だぞ。俺なんてビスケット5枚だけだぞ。これでどうやって生き残れって言うんだよ。


5:サバイバリスト名無しさん

食べ物は無し、水もいずれ止まる。日本終わったな。


6:サバイバリスト名無しさん

良かったじゃん。散々世界の終わりを望んでる人達の願いが叶ったんだから。もっと喜べよwww


まあ、俺はコンビニに立て籠もってるから平気だけどね。いやー、ブラックな店長やってて良かったわ〜。


ほらよ!食料の宝庫だ!

http://××××.×××


7:サバイバリスト名無しさん

>>6

マジ氏ね。冗談抜きで氏ね。


8:サバイバリスト名無しさん

>>6

お前の様な奴は直ぐに居なくなるべきだよ。


9:サバイバリスト名無しさん

>>6

分け合うとか考えないの?馬鹿なの?


10:サバイバリスト名無しさん

嫉妬がキモティーーーwww

精々空腹に苦しみながら生きるんだなwww

あ、でももう無理かwww


11:サバイバリストスレ主

お前ら落ち着けよ。そんなに空腹で厳しいなら生きてる連中で集まれば良いんじゃね?

少なくとも俺を襲って来た連中は生きる為に戦ってたぞい。まあ、俺を襲って来たのは許さんがな。


そして忘れてないぞ。最初に襲い掛かった学生よ。


12:サバイバリスト名無しさん

集まるってどうやってだよ?


13:サバイバリストスレ主

いや、パソコンやスマホあんじゃん?スレ立てかツインで呟くなりして集まれば良いじゃん?


住所や個人情報?命と天秤に掛ければ答えは出るやろ。現に襲って来た連中だって徒党を組んでた様なもんだし。


14:サバイバリスト名無しさん

>>13

スレ主…お前天才かよ!


15:サバイバリスト名無しさん

>>13

そう言われればそうじゃん!てか今しかチャンス無いじゃん!いつネットが止まるか分かんねーし!


16:サバイバリスト名無しさん

早速出会い系サイトで募集するお!そうすれば男女の比率は大いに傾くんだお!

夢のハーレムが出来るんだお!


17:サバイバリスト名無しさん

>>16

お前…天才かよ!


18:サバイバリスト名無しさん

>>16

その手があったか!今からでも遅くはねえな!


19:サバイバリストスレ主

でももう一週間近く過ぎてるんだけどな。


20:サバイバリスト名無しさん

それを言っちゃらめええええ!!!


21:サバイバリストスレ主

賭けになるだろうが頑張れよ。無論出会った瞬間食料だけ奪われる可能性は高いがな。それでも生き残れる可能性は高くなるだろうよ。


22:サバイバリスト名無しさん

因みにスレ主は何処に居るんだ?


23:サバイバリストスレ主

俺?銃砲店に居るよ。そして大量の食料と日用品の交換で念願のショットガンを手に入れた!

これで野盗だろうが奴等だろうがそんなの関係ねえ!関係ねえ!


24:サバイバリスト名無しさん

>>23

マジかよ。ガチ武装しちゃってんの?

そしてネタが古い!


25:サバイバリスト名無しさん

>>23

ショットガン撃てんの?

後ネタ古!


26:サバイバリストスレ主

もう奴等にも野盗にも撃ってるんだよなぁ。やられたらやり返す。これJKな。


27:サバイバリスト名無しさん

もっと平和的に解決しろよ。スレ主は奴等には襲われないんだろ?


28:サバイバリストスレ主

話し合う前に襲われたんだから仕方ないじゃん。一体俺にどうしろと?

俺は奴等に襲われないだけの普通の一般人やで?


29:サバイバリスト名無しさん

普通の一般人は銃を撃ったりなんかしない。


30:サバイバリストスレ主

まあ今の普通の定義がどうなってるかは知らんがな。てか、コメ立てが少なくない?


31:サバイバリスト名無しさん

多分募集掛けてるか探してるんだと思うよ。


32:サバイバリストスレ主

そっかぁ。じゃあ今日はお開きにしますか。予想以上に早くスレが過疎ったけど良い事かな?


33:サバイバリスト名無しさん

俺も近場の所で募集されてないか探すよ。無ければ作れば良いだけだろうし。


34:サバイバリストスレ主

後は避難所だよ。多分地域毎に指定はされてる筈。だからそこを目指すのも一つの手だね。


35:サバイバリスト名無しさん

少しだけでも希望が見えて来たよ。スレ主、アンタが早くワクチンを作ってくれる事を願ってるよ。


36:サバイバリスト名無しさん

頼むぞスレ主。今の所スレ主以外襲われないと言う情報は出てないし。


俺もそろそろ屋根裏に行くわ。食い物が沢山あるコンビニとは言え奴等の直ぐ近くで寝る気はしねえし。

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