表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Z of the Day  作者: 吹雪
28/38

相沢銃砲店5

「ぐわっ!?何だ!?」


突然フロントガラスが割れたと思ったら左腕に痛みが走る。痛みで急ハンドルを切ってしまい軽バンを歩道に突っ込んでしまう。慌てて急ブレーキをして事故は防ぐ事は出来た。


「イッテェ…何で矢が?」


刺さってる矢を掴み引っこ抜き見る。よく見たら先端がギザギザになって無くて良かった。何も考えずに抜いたから後からホッとした訳だが。


「おいおい、一体何が起きてんだよ。まさか襲撃か?」


相沢銃砲店を出る時に篤さんの言葉を思い出す。この辺りには野盗が居る事を。嘗ては篤さんも野盗に車を強奪された筈だ。


「だからと言って直ぐにエンカウントすんのは如何な物かと俺は思うよ?」


愚痴を言いながら二連装式ショットガンとリュックを背負いながら軽バンから降りる。そして軽バンを盾にして周囲を見回す。


ヒュン!


頭を軽バンから少し出したら容赦無く矢が飛んで来る。直ぐに頭を引っ込めてショットガンを握り締める。


(おいおいおい、連中は容赦って言葉が無いのか?大体野盗なんて言うけど結局は只のクソ野郎共じゃん)


段々理不尽な状況に苛立ちを覚える。然も足音が複数聞こえる。間違い無く此方に近付いているではないか。

逃げると言う手段もある。だがその選択を選べば再び俺は襲われるのではないか?更に言えば相沢銃砲店だって安全ではない。最悪篤さんが食料調達してる間に店の方が襲われる可能性だってある。その時朱美さんは対処出来るのだろうか。

ショットガンを握り締めながら目を閉じ一回だけ深呼吸をする。もう今迄とは違う。奴等だけが敵では無い。同じ人間だって襲い掛かって来るではないか。現に俺は一度学生に襲われている。


(自衛だ。これは自衛なんだ。だから、俺は悪くない。悪くない)


目を開けて覚悟を決める。ショットガンを構えながら軽バンの横から飛び出る。そして周りが見えた時にボウガンを持ってる奴が視界に入る。其奴は此方から少し距離が離れた車からクロスボウを構えていた。

一瞬だけ目が合う。生きてるのだ。其奴は間違い無く同じ人間なのだ。こいつらも野盗と言われてるが生き残る為に必死なんだ。だがそれは此方も同じ。だからこそ俺は大きな声を出して自分に言い聞かせる。


「俺は悪く無いんだあああ!!」


そしてショットガンの引き金を引く。人に当たる事は無かったが代わりに車が穴だらけになる。車の防犯ブザーが辺り渡る。続けてもう1発撃ちリロードする。


「おい、あれ本物じゃねえか?」


「良二さん!無事ですか!」


「隠れろ隠れろ!早く車の後ろに!」


「音がかなり響いてるぞ。直ぐに奴等が来るぞ!」


野盗共は右往左往し始める。中には自分達の車に乗り込もみ逃げる準備をする連中も居た。


「大体今迄好き勝手やって来たんだから此処が年貢を納め時や!覚悟せいや!あ…俺も何だかんだ言って好き勝手やってるやん」


再び軽バンから出てショットガンを撃つ。今度は野盗共の車に向けて撃ち風穴を多数開ける。更に流れ弾が他の車に当たり防犯ブザーが鳴り響く。

しかしショットガンを撃つのは中々迫力がある。先ず銃声が力強い。反動は有るが連射する訳じゃないから問題は無い。そして当たれば結構キモティ〜。こう気分が上がるね!


「ヒャッハー!逃げれるもんなら逃げてみな!」


今度はM37エアウェイトを取り出しクロスボウを持ってる奴に向けて連射する。俺が本物の銃を持ってるだけで衝撃的なのに他の銃も持ってると判ると野盗共は更に混乱し始める。この状況…どっちが悪者かわっかんねえな。

何発も銃を撃ち続けてく内に野盗共の戦意は無くなって行く。


「あの野郎どんだけ弾持ってんだよ!可笑しいだろ!」


「こうなったら全員で攻めるぞ。そうすれば勝てる筈だ」


「ふざっけんな!テメェだけで行けよ!俺は死にたくねぇんだよ!」


「ギャッ!?痛えよ!腕に当たってえ!!」


「もう逃げようぜ!このままじゃあヤバイぞ!」


「誰だよサバゲーマニアとか言った奴!責任取れよ!」


「んな事より音だよ音!奴等が寄って来…あ、あぁ、もう来てるぞ!逃げよう!」


「高田!仲間を見捨てる気か!」


最早野盗共に戦う気は無くなっていた。それはそうだろう。俺が散々撃ちまくった結果、弾は車両に当たり防犯ブザーが鳴り響く。恐らくこの辺り一帯の奴等は遅かれ早かれ来る事になるだろう。

一人また一人と野盗が逃げて行く。だが仲間を見捨て無い奴は徐々に奴等が迫って来て逃げ場を失って行く。こうなると最早俺が直接手を下すまでも無い。俺は最後に奴等に向けてショットガンを撃つ。至近距離で撃ったからか胸辺りがゴッソリ無くなりながら奴等は吹き飛ぶ。


「ショットガンって結構エグい銃なんだな」


何せ弾が当たった箇所の原型が殆ど留めて無かったからだ。あっさりした感想を一言呟きながら軽バンに乗り込みエンジンを掛ける。そして奴等を適当に轢きながら野盗達から走り去る。だが最後の悪足掻きなのか矢が運転席のドアに一本突き刺さる。


「あの野郎…さっさと死んじゃえば良いんだ」


最後の最後迄奴等では無く俺を殺そうとする気概に呆れながら悪態を吐きながら軽バンを走らせる。俺にはもう連中を助ける気持ちは無い。このまま死ぬのも良し、生きるも良し。勝手にすれば良い。車のラジオからは曲が流れ続ける。俺は曲を聴きながら相沢銃砲店に帰るのだった。


……


良二は今の状況に理不尽な怒りを感じていた。今迄自分達が狩人で他の存在は獲物に過ぎなかった。特にクロスボウを手に入れてからは良二の天下だった。

音を立てずに安全距離から奴等を倒せる。リーダーである自分がクロスボウを持つ事で統率も取れていた。

そして今日の獲物もいつも通り狩れる筈だった。獲物に近付き警告をする。そうすれば物資を安全で簡単に大量に手に入れる事が出来た筈だった。

偵察役の村松からの連絡が来た時良二は歓喜した。何故なら大量の食料を軽バンに詰め込んで此方に向かっていると聞いた。そして軽バンは予想通りに来た。風は自分達に向いている。この時はそう確信していた。

だが結果はどうだ?サバゲーマニアが本物の銃を持ち、更に大きな音で奴等を大量に引き寄せた。逃げようにも何発も此方に銃弾を撃ち込んで来るので逃げれない。そうこうしてる間に奴等が迫って来ていた。

そして銃声が鳴り止み車のドアが開く音が聞こえる。頭を出して見ると軽バンが動き出していた。


「お前だけ逃げる気か!!!」


堪らずクロスボウで運転手を狙う。だが矢はドアに当たる。そして獲物と目が合う。獲物は中指を立てながら走り去る。再び矢を装填しようとするが奴等が迫って来る。


(此処までか…)


良二はそう思った。だがクラクションが鳴り響く。其方に目を向ければ村松の乗るスクーターが此方に来るではないか。


「このまま死んで溜まるかよ!」


クロスボウで近場の奴等の頭を撃ち抜きながら鉄パイプを手に取り奴等の頭を叩き潰すのだった。


……


暫く軽バンを走らせて相沢銃砲店に向かう。しかし最近思う事は奴等より人間に襲われてる方が多いのではないだろうか。


「そりゃさぁ俺は奴等に襲われないよ?だからと言って生きてる人に襲われるのは如何なものかと思うんだよな」


今度この事をネタにしてスレ立てしようと考えていると相沢銃砲店が見えて来た。俺は店のシャッターの直ぐ横に軽バンを寄せて停める。エンジンを切り軽バンから降りてシャッターを軽くノックする。

少し待つと覗き窓から篤さんと目が合う。そして覗き窓が閉じシャッターがゆっくりと開く。


「今から取って来たのを中に入れて行きますね」


俺は其処から回収して来た物資を店の中に入れて行く。店の中では篤さんが物資を運んで行く。そして全部の物資を入れた後に俺も店に入るのだった。


「織原さん、本当に有難…あれ?腕怪我してません?」


「本当だ。朱美、救急箱を用意してくれ」


「分かった。慧さんちょっと待っててね」


朱美さんは救急箱を取りに中に戻って行く。その間に襲われた時に刺された矢を篤さんに見せる。


「先程野盗に襲われましてね。コレで車のフロントガラス越しから刺されましたよ」


篤さんは矢を受け取り何度か頷く。


「フロントガラスを貫いたなら結構強力なクロスボウだよ。ウチも多少は扱ってるけど。多分この辺りのクロスボウだと思うけど」


店のショウケースの中には幾つかのクロスボウが飾られている。そしてお値段も7万円以上が殆どだ。


「この辺りはアメリカ製だね。威力も精度も凄く良いヤツばかりさ。勿論値段もね」


得意げに言いながら篤さんはクロスボウを見せる。因みに値札には15万と書かれていた。確かに店的には良い値段だね。


「後この辺りはオプションパーツが結構豊富でね。他にもお洒落したい人とかにもお勧めだよ。あ、こっちはアーチェリー用だね。この辺りは朱美が商品を選別したんだ」


「朱美さんも売ってるんですか?てっきり専業主婦かと」


「彼女の場合は今でもアーチェリーをやってるからね。その影響で色々揃え始めたのさ」


「成る程」


クロスボウやアーチェリーを眺めていると朱美さんが救急箱を持って来てくれた。


「ほらほら話は一旦終わり。慧さん、こっちに来て座って。治療するから」


俺達は一旦話を終えて治療を行う。 上着を脱いで左腕を見せる。矢の刺さった痕に消毒液が噴き掛けられ血をタオルで拭って貰う。


「イタタ。結構染みるなぁ」


「我慢するの。男の子でしょう?」


「子と言われる歳じゃないだけど」


「私にしてみれば慧さんは子供っぽいですから」


治療を受けつつ今後について考える。今回は野盗から逃げれる事が出来た。だがあの後に野盗がどうなったか。恐らく何人かは生き残ってる筈だ。例え奴等に襲わたとしても今迄生き残って来ていたんだ。そう簡単に死ぬ連中だとは思えない。


(なるべく早いとこ此処から出た方が良いかも。出来れば今日中には)


相沢家族を巻き込むつもりは無い。それなら原因となってる俺が逃げれば良いだけの話だ。


「後は軽バンだけでも移動させておくか」


相沢銃砲店の前に軽バンを停めてたら此処に居ると教えてる様なものだ。俺は治療を終えたら軽バンを適当な場所に停める事に決めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ