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Z of the Day  作者: 吹雪
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相沢銃砲店2

あの後お互いに自己紹介をする事にした。この二人は相沢 篤と朱美と名乗り、お子さんは純子だと言う。


「この子は本当に良い子なんですよー。だって今は全然泣か無くなりましたからね。多分私が泣くたびに口を抑えてしまったからだと思うんですけど」


「朱美は悪くないよ。こんな状況じゃ仕方ない」


確かに赤ん坊の泣き声は結構響く。それで奴等が引き寄せられる可能性は充分ある。


「それで織原さんは今迄何処に居たんですか?」


「そうだよ。織原君は何故奴等と一緒に居ても襲われて無かったんだい?」


「え、そうなの?なら外はもう安全なの?」


色々外の現状を知りたそうなので今迄の出来事を簡潔に話す事にした。

目覚めた時にはパンデミックが起きてから少し経った事。生存者に襲われ奴等に囮にされるも襲われなかった事。上坂中央ドームで世紀の大脱出をした事。そして高鷲警察署に避難させた事。


「それ本当なの?然もMSSアイドルを助けた?ちょっと待って」


朱美さんはスマホを取り出し弄る。そして目を丸くして小さく呟く。


「本当だ。サバイバリストスレ主に救われたってコメされてる」


俺もスマホを取り出し見る。スマホには最近のツインと出ておりタップして画面を開く。



【MSS】西蓮寺❤︎澪2022.5.16

皆さん、御心配お掛けしました。漸くスマホの充電も完了しましたので此方からも生存報告させて頂きます。

この度上坂中央ドームから高鷲警察署まで救助して下さった方が居ました。その方はサバイバリストスレ主と名乗っていました。本名は伏せて欲しいと言っていたので伏せさせて頂きます。

また私を含め33名が救助された事も此処に報告させて頂きます。

サバイバリストスレ主さん、本当に有難う御座います。またお逢い出来る事を私達一同は切に願っています。



ツインには西蓮寺さんを含めたMSSアイドル6人が此方に向けて手を振りながら「サバイバリストスレ主さん有難うございます!私達はMSSアイドルを続けて行きます!貴方の様に希望を皆さんに届けたいから!」と動画付きで記載されていた。

更にこのコメントを見たフォロワーのコメントが凄まじい事になっていた。今だに返信数と良いねが伸び続けてるのが良い証拠だ。


「本当、助けて良かった」


「お、織原君が助けたのかい?」


「まあ、俺は奴等に襲われないからな。あ、俺がサバイバリストスレ主って事はバラしちゃ駄目ですからね」


俺はスマホを閉じる。すると丁度お腹が鳴ってしまう。どうやら俺のお腹が空腹を訴えている様だ。空腹の音に釣られて篤さんからもお腹が鳴る。


「えっと…ご飯にする?と言っても食パンとマヨネーズしか無いけど」


「マジかよ。それしか無いんで…いや、それが普通なのか」


少し考えたら直ぐに分かる事だ。俺にとっては食料難とは無縁の関係だ。けど相沢家にとっては?いや他の人達も同様の筈だ。パン一つ取ってくるだけでも命懸けだ。


「あー、俺は別に無くても平気です。適当に外で済ませちゃうんで」


俺はそう言って立ち上がろうとする。すると篤さんが突然俺に向かって土下座をする。


「織原君、図々しいのは重々承知の上でお願いしたい。食料を取ってきて貰えないだろうか?」


篤さんは土下座しながらお願いする。しかし篤さんに続く様に朱音さんも同じ様に頭を下げて来る。


(別に取って来ても良いけどな。唯、これを他の所でも続けてたら北海道に行けないよな)


酷い様だが何処かで線引きは必要だろう。でなければ際限が無い。

勿論俺だって救える命が有るなら救いたい。現に目の前の相沢家族だって助けたいと思ってる。しかし彼等だけを特別扱いする訳にはいかない。それに俺はスレ建てした時だって助けを求める声を簡単に見捨てた。


(目の前に居るのと居ないのでは全然違う。はぁ、参ったな)


内心溜息を吐きながら土下座し続ける二人を見つめる。すると有る物が目に入った。それはこの先でも役に立つのは間違い無い物だろう。


「取り敢えず頭を上げて欲しい。食料に関しては取りに行ける。唯一つ条件があるんだ」


二人は顔を上げて俺を見る。すると丁度朱美さんと目が少しだけ合う。朱美さんはハッ!とした表情をして自身の体を守る様に抱き締める。


「駄目よ!私は人妻だし。あっくんとは今もラブラブなんだから!」


「ま、まさか。あ、朱美は命に代えても渡さんぞ!」


「あっくん…」「朱美…」


何やら三文芝居を始める二人。此処は流れに乗った方がええんやろうか?


「おうおう、俺が言おうとしてる事が分かってるじゃねえか。なら話は早いな」


「こ、この外道!身体を手に入れても私の心は決して屈しないんだから!」


「朱美に手を出したら私とて容赦はしないぞ!」


「へっへっへ…良いのかなぁ?この中で安全に食料を取れる奴は俺しか居ないんだぜ〜?」


すると朱美さんが篤さんの手を取り見つめ合う。まだやるんかな?そろそろ終わらせたいんやけど。


「あっくん…私、我慢するわ。それで私達は家族全員が生き残れるんだから」


「朱美…く、すまない。私が不甲斐ないばかりに」


「そんな事無いよ?あっくんは何時も私にとって頼りになるんだから」


「朱美…」「あっくん…」


そう言って二人は抱き合う。俺はスマホを弄りながら煙草を咥える。しかし赤ん坊が居るのを思い出し咥えるだけにする。相沢夫婦の相手?なんかもう面倒臭くなっちゃって。

それからお互いの好きな所や僕が私の方が愛してる〜とか。最後は後何人子供を作るか〜の話になって行く。

俺?スマホで色々情報見てますよ。今だとMSSアイドルの救出劇が持ち切りになってるな。後は以前俺が水道水について聞いた事が少しだけ大きくなり始めてるかな。

どうやら水道水に関しては何れ止まる可能性があると考えた方が良いとか。今は平気だが奴等の血液は水道局で徐々に溜まり続けている。そして水道局の濾過限界に達した時、水道水は止まるだろう。それに情報では奴等のウィルスが口内から侵入すれば感染する可能性は非常に高い。

尤も、これらの情報は全て推測の域を出ていない。それは奴等に関する情報に正確な答えが無い為何とも言えないのも理由の一つだ。


「と言ってもな。濾過する部品や薬品にも限界が有るだろうし。交換出来るまでが水道水飲み放題期間だな」


嫌な世の中になったもんだぜ。咥えていた煙草を箱に仕舞う。そして相沢夫婦を見る。二人は正座してこっちを見ていた。


「あ、終わりました?じゃあ早速本題に入っても?」


「ええ、構わないわ。覚悟は出来てる。けど…出来れば誰も居ない場所で」


「はい?もうその話は良いですよ。それより篤さん」


「ま、まさか…私……なのか?」


「そんな…あっくんの方なの?」


篤さんは自身の体を守る様にするし、朱美さんは篤さんを庇う様に立ちはだかる。


「あっくんは私が守るんだから!指一本触れさせないんだから!」


「織原君!幾らなんでも非常識だよ!いや、人の性癖に意見するつもりは無いが。唯、全員が君とは違うんだよ?」


何故なんだ?どうして話が前に進まない。余りに面倒臭くなって来たので話をぶった斬る事にした。


「何時迄この話を続けるつもりだよ!俺はショットガンと交換条件だって言いたいんだよ!全く、悪ノリした俺も大概だけどさ。良い加減空気読もうぜ」


俺がそう言うと二人は再び顔を見合わせる。


「あ、ああ。ショットガンね。構わないよ。代わりに食料を調達してくれるならね…ホッ」


「そ、そうよね。全く、私ったらちょっと早とちりしちゃったかな…フゥ」


「溜息吐きたいのはこっちだよお馬鹿夫婦め」


こうして俺はショットガンと交換条件で食料を手に入れる事を決めたのだった。

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