高鷲警察署8
10話纏めて出すか。それとも1話ずつ出すか。迷う…
まあ、どっちでも良いか(小並感)
改造ブルドーザーを運転しながらスマホを取り出し連絡をする。
「もしもし。聞こえる?ブルドーザーは手に入れたからこのまま一気に警察署まで行くよ」
「分かりました」
「それから今もブルドーザーの音で奴等がチラホラ出てきてるから付いて来る時は気を付けてくれ」
「はい。織原さん、本当に有難うございます」
相手の男性の方が感謝を述べる。俺は少し頬を緩ませながら言う。
「おいおい、まだ避難出来た訳じゃないぜ?此処からが本番だ。いつでも動ける準備だけはしておけよ。それじゃあ、また後で」
スマホを切り運転に集中する。しかし奴等はブルドーザーのエンジン音に引き寄せられて来る。正面から数体が道を塞ぐ。
(躊躇するな。もう奴等は人間とは違う。此処まで来て怖気付くのは絶対に駄目だ)
ブルドーザーを加速させ奴等を轢き殺す。肉と骨が磨り潰され砕かれる音を聞きながら道を進み続ける。邪魔な放置車両も無理矢理退かしながら彼等との合流を急ぐ。
そしてコンビニが視界に入るとマイクロバスが動き出す。俺は彼等の先頭に行きそのまま高鷲警察署に向かう。
高鷲警察署に近付けば近付く程、奴等と放置車両の数は増えて来る。だが改造ブルドーザーにとっては大した障害にはなっていない様子だ。
「流石改造ブルドーザーだ!何とも無いぜ!」
改造仕様なだけあって良い音でしょう?余裕の音だ。馬力が違いますよ。
そして遂に此処に来て一番の山場に到着した。高鷲警察署まで続く道は何処も車が通れる場所は無い。これからより大きな音が出る。そして奴等は勿論だが変異種が襲って来る可能性は非常に高い。
「それに襲われないだけであって、感染はするかも知れないし」
襲われない=感染しないとは楽観的に思うつもりは無い。勿論誰よりも危険な場所に行けるのは間違いない。けどリスクが無い訳じゃ無い。
そして高鷲警察署が視界に入る。それと同時に大量の奴等と放置車両が見える。俺はブルドーザーを加速させ一気に突っ込んで行く。徐々に奴等との距離が縮まる。奴等はブルドーザーのエンジン音に反応して此方に視線を向けながら、腕を伸ばし向かって来る。
「行くぞおおおお!」
そしてブルドーザーを一気に突っ込ませる。衝撃と共に次々と奴等を轢き殺し、放置車両を退かして行く。凄まじい破壊音が静かな街に響き渡る。更に放置車両から警報が鳴り響きより騒音に拍車が掛かる。
音に反応して色んな所から奴等が現れ始める。マンションのベランダから現れて、そのまま地面に落ちて行く。窓やドアを突き破り此方に近付こうとする。車の下からも這い出て来る。更に厄介な奴等も姿を現した。
「ヴギャアァァアアア!!!」
変異種が奇声を上げてブルドーザーに迫る。そして走って来る勢いで一気にブルドーザーに飛び乗る。そのまま爆音鳴り響くエンジンを叩き壊そうとする。
「ふざっけんな!壊されて溜まるか!」
M37エアウェイトで変異種を撃つ。撃たれた拍子にバランスを崩しキャタピラの上に落ちる。そしてそのまま姿をキャタピラの奥へ消えて行く。奇声と共に肉が潰れる音が聞こえるが構ってる余裕は無い。
流石に放置車両に打つかり続ければスピードは落ちる。それは必然的に奴等と変異種がブルドーザーに登り易くなる。奴等が数体エンジン部分に登り始める。だが突然奴等の頭が吹き飛ぶ。何事と思うと銃声も聞こえた。
俺は警察署の方に視線を向ける。すると屋上の方に数人が狙撃銃を持ち集まっていた。
「援護もある。これなら行ける」
再び変異種を撃ちながらブルドーザーを加速させる。更にブレード部分も動かし放置車両を動かし易くしようと試みる。そして僅かに出来たスペースに一気にブルドーザーを突っ込ませる。
ブルドーザーが一気に進む。それに続く様にマイクロバスも進む。更に高鷲警察署からの狙撃による援護がブルドーザーとマイクロバスを守る。
「後少し。後少しなんだ。絶対に彼奴らを無事に避難させる!絶対にだ!」
放置車両が横転する。車内に取り残された奴等が窓を突き破り腕を伸ばす。だがブルドーザーの下敷きになり姿を消して行く。変異種がブルドーザーに乗り掛かる。だが狙撃とM37エアウェイトの射撃により倒れて落ちて行く。
そして遂に高鷲警察署の正面入り口に到着する。マイクロバスが正面入り口に横付けされたのと同時にバリケードになっていた車両が少しだけ動き隙間が出来る。
俺はブルドーザーのエンジンを切りM37エアウェイトを片手に飛び降りる。そしてマイクロバスの近くに居る奴等を撃ち殺す。そしてマイクロバスのドアを叩く。
「今なら降りれる!急げ!」
ドアが開き一人づつ高鷲警察署に入って行く。それと同時に消防車のハシゴが動き出し後方のマイクロバスに居る運転手の救助に取り掛かる。
だが奴等は襲って来る。死を恐れる事は無く平然と迫って来る。いや、奴等に死の概念があるのだろうか?死んでるにも関わらず何故動いてるいるのか。なら奴等は一体何なのだろうか。
(ハッ!馬鹿馬鹿しいな!そう言う難しい事は専門家に任せれば良いんだ!今は目の前の奴等を殺す。唯それだけだ!)
俺は奴等の頭に向けてM37エアウェイトの引き金を引く。銃声と同時に奴等が倒れる。警棒を展開して奴等の頭に向けて叩き付ける。
辺りは血の匂いが充満している。呻き声と怒声、そして銃声が鳴り響く。この時、俺は血に酔っていたのかも知れない。何故なら奴等に向けた銃口に最早何の躊躇いは無く、簡単に引き金を引いていたのだから。
そして上坂中央ドームの脱出劇から丸一日が経過して漸く33名の生存者達は高鷲警察署に到着。長く辛い逃亡生活から脱却する事が出来たのだった。
……
全員の避難が完了した。避難を見届けた俺も高鷲警察署に向かう。だが再び甲高い奇声が辺りに響く。
変異種がマイクロバスの上に飛び乗る。その姿が見えた瞬間、M37エアウェイトで狙いを付けて発砲。一瞬怯むものの銃声に反応して此方に飛び掛って来る。変異種に対し再び撃とうとする。
カチリ
だが弾切れになってしまっていた。慌ててリロードをしようとした。だがそのまま変異種は体当たりして来て俺は地面に押し倒される。その拍子にM37エアウェイトを落としてしまう。
「離せよ!お前なんぞに押し倒されても嬉しくも何とも無いわ!」
「グギャアアァァアア!!!」
だが変異種は奇声を上げてそのまま顔を近付ける。その瞬間、死を感じた。たった今まで平気だった。だがそれが一瞬で砕け散った。
(此処までか。考えが甘かった付けか…畜生)
襲われない。そう思っていた。現に今迄奴等には襲われては無かった。だが変異種は違うのかも知れない。だが今更それを知った所でもう遅いし意味は無い。
最後まで抵抗はしていた。だが力の差が違い過ぎて抵抗出来ない。変異種の顔が、口が、俺の首に迫る。息遣いが首から感じる。目を閉じる暇も恐怖を感じる事も無く死が迫る。
だが突然変異種の動きが止まる。何事かと思い視線を動かす。変異種は顔を近付けて匂いを嗅いでる様に見える。そして徐々に首から離れて行く。
俺と変異種の目が合う。その時の変異種の様子は何故襲ったのかと言わんばかりに首を何度か捻っていた。同時に俺は何故襲われ無かったのか疑問に思っていた。押し倒され一気に喰われる寸前だったのだ。だが今は喰い殺され無かった事に感謝しながらM37エアウェイトを拾いリロードをしようとする。
そして次の瞬間、変異種の頭から血が吹き出し倒れる。更に追い討ちの如く何度も頭に穴が空いて血が舞う。
「流石警察の狙撃だ。全弾命中だよ」
俺はその隙に立ち上がりマイクロバスに向かう。まだ最後の仕事が残っている。大量の食料を高鷲警察署に入れる仕事だ。これをやらないと助けた意味が無いからだ。
疲れと痛みを感じる身体に喝を入れてマイクロバスに向かう。今は難しい事は考えない。何故なら考えた所で意味は無いのだから。




