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Z of the Day  作者: 吹雪
19/38

高鷲警察署6

あの後マイクロバスと共に途中まで一緒に行動した。そして無人と思われる荒らされたコンビニの駐車場にマイクロバスを停めて貰った。


「それじゃあブルドーザーを手に入れたら連絡するよ。それまでこれを食べながら待っててくれ」


「あ!チョコレートですね。然も種類も豊富じゃないですか。皆チョコレートよ!」


丁度西蓮寺さんが居たのでチョコレートを渡しておく。これで俺の株は鰻登りよ。


「もう少しで避難所に辿り着ける。それまで我慢してくれ」


「私達は大丈夫です。それより慧さんの方が顔色が悪いですよ」


「まあ、今回は意図的に見捨てたからな」


然も本人達が目の前に居た状態だ。正直胃にかなり来る物がある。


「それでも私達は慧さんに救われてます。ですから、もし辛くなったら…その、相談位になら」


若干俯きながら此方を気遣ってくれる西蓮寺さん。やだ、その姿だけでもご馳走様なんですけど。


「な〜に良い子ぶってんのよ。どうせ今がチャンスと思ってポイント稼ごうとしちゃって」


「ち、違うわよ!何言ってるのよ瑞樹!」


其処に現れたのはニマニマの意地悪そうな笑顔を出しながら西蓮寺にさんに抱き着く瑞樹さん。


「慧さん慧さん。私でしたら夜のベッドの中で慰めてあげますよ?勿論慰める訳ですから色々出来ますよ?そう、イ・ロ・イ・ロ・ね?」


「い、色々…だとぅ?」


(色々て何だよ色々て?まさかまさかの超展開になってませんかね?これは間違いない…逝ける(色んな意味で)!!!)


俺が脳内で悶々としてると他のメンバーも顔を出してくる。


「何々?澪、あんた抜け駆け出来ると思ってたの?無理無理。諦めてハーレム何号になりましょうよ」


「そうそう。一人勝ち状態は此処では出来ません。それに、スタイルなら私の方が良いですし」


「ちょっとそれどう言う事よ!私だってスタイルには自信あるんだから!それにスリーサイズのプロフィールも全部本物だもん!」


「残念。私もなの」


「それマジ?Fカップなの?」


「普段そんな風に見えないのに…」


「私は余りスタイルが分かる服装しないからね」


「それでヒップもあの数字なの?あんた峰不二○なの?あ、でもあっちの方がサイズも質も上よね」


「……麗奈、後で覚えて起きなさい」


何故かキャイのキャイのと盛り上がる女性陣。そんな彼女達を見てると笑いが込み上げてくる。


「まあ、なんだ。取り敢えず俺は先に進むよ。後色々ありがとな」


多分だが彼女達は俺に気を遣ってくれたと思う。先程のやり取りで結構気持ちは持ち直した感じがする。


「私達は慧さんの味方です。例え慧さんがどんな選択をしたとしても」


「…ありがとう」


西蓮寺さんの言葉に感謝して先に進む。彼女達の信頼を裏切ら無い為にも必ず助けてみせる。それが今俺に出来る事だ。


(野々村警部補もこんな気持ちだったのだろうか?だとしたら辛いよな)


大の虫を生かす為に小の虫を切り捨てる。言葉にすれば合理的だが生憎俺は合理的な人間では無い。それでも今は自分が救える人達を必ず高鷲警察署に連れて行く。


それが自分に出来る精一杯なのだから。


……


整備工場に到着する。其処にはブルドーザーだけでは無くパワーショベルも沢山置いてあった。まだ整備中だと思われるパワーショベルかバラバラな状態でも有る。しかし整備工場の至る所に血が付いており戦闘があったのは理解出来た。更に奴等と思われる肉片も確認出来る。


「おいおい、これ人間の腕?うわぁ…エグい」


何かに引き摺られたのかズタズタな状態の肉片やら内臓が沢山落ちている。更に臭いも結構キツイ物がある。

顔を顰めながらM37エアウェイトを取り出し慎重に周りを警戒してブルドーザーに近付く。ブルドーザーには馬力は必要だが大き過ぎると放置車両に引っ掛かる可能性が高い。なので丁度いいサイズが無いか探す。

種類こそあるがイマイチよく分からない。一応工場内の中も確認して行く。

工事のドアを開けて中を確認する。工場内も血溜まりが出来ている。しかし妙な事に奴等が見当たらない。しかし工場内には凄いブルドーザーが置いてあった。


「これは…凄いな。正に浪漫だよ」


ブルドーザーのガラス窓には鉄板が溶接されていた。更に周辺を確認する為か隙間もある。然もその隙間も金網でしっかりガードしていた。それだけでなく至る所に鉄板が溶接されていてかなり頑丈そうだった。


「これ欲しい!でも絶対作った人が居る筈だ」


これを作った人が簡単に譲ってくれるとは思えない。仕方無いので他のブルドーザーを探す事にする。しかし工場内にはバラバラの状態でしか無く使えそうな状態では無い。

結局外に置いてある手頃なブルドーザーを選ぶ事にした。ブルドーザーのドアに手を伸ばし開けようとする。しかしドアには鍵が掛かっており開かない。


「鍵は事務所かな?」


整備工事から少し離れた場所に建屋がある。建屋に近付いて中を確認する。中は争った形跡があり書類が沢山散らばっていた。更に血飛沫も壁やら書類に掛かっていた。

俺はM37エアウェイトを構えて警戒して中に入って行く。しかし此処にも奴等は居ない。それどころか死体すら無い。その事に少し違和感を感じてしまう。普通なら奴等は居る。例え生存者を追い掛けて行ったとしても一体も居ないのが不思議だった。それに死体も無いのも変だ。

一番立派な椅子と机がある場所に向かう。其処には書類の束やペン入れがある。その中に一枚の写真が写真立てに飾ってあった。

それを取り近くで見る。五十人位の従業員の人達と社長と思われる五十を少し過ぎた感じの男性が笑顔で写っている。誰もが活気のある人達の様に見えるから、今の現状と比べてしまうと何とも言えない気分になる。


「はあ、早く元の生活に戻りた…何だ?」


突然外から重厚なエンジン音が聞こえる。窓に近付き外を見る。すると整備工場の扉が開いて行くではないか。


「誰か居たのか?」


そして中から現れたのは先程の浪漫溢れるブルドーザーだった。そのブルドーザーは一気に加速したと思ったら此方に突っ込んで来た。


「え!?ちょ!うわああああ!!!」


俺は慌てて事務所のドアから出る。そして次の瞬間。


ボゴオオオォォン!!!


ブルドーザーが建屋に突っ込み一瞬で建屋を全てバラバラにして行く。


「こ、此奴だ。此奴がやったのか!」


奴等が居ない理由。肉片と内臓が辺りに散らばってる理由。これらの答えが目の前にあった。


「渡さんぞ!!!この場所は誰にも渡さんぞ!!!」


ブルドーザーの中から男性の声が聞こえた。それと同時に再びブルドーザーは動き出す。


「いやいやいや!?勝てねえから!?あんなガチガチに作られたブルドーザーとか勝てねえから!!」


俺は脇目も振らずに走る。しかしブルドーザーのエンジンも改造をしたのか凄い勢いで此方をミンチにしようと襲い掛かる。


「この場所は儂が守る!!!貴様等盗っ人なんぞ轢き殺してやるわ!!!」


「確かに盗っ人ですけど!反論の余地が無いくらい盗っ人ですけど!ミンチは嫌や!?」


慌てて横に飛び込む。それと同時にブルドーザーは機材置き場に突っ込んで行く。更にそのまま壁をぶち破り外に出て行ってしまう。


ブオオオオオオ!!!


しかしエンジンの唸り声と同時に再び壁をぶち破り此方に来る。俺はM37エアウェイトを構える。そんな時自問してしまう。


(撃てるのか?生きてる人をだぞ?)


狙いを運転席に合わせる。それでも引き金を引く事が出来ない。当たり前だ。奴等なら別に構わない。だが相手は人間だ。人間なんだ!


「くたばれああああ!!!」


「っ!?畜生!」


狙いを少しズラしてから発砲。更にもう1発撃つ。運転席に囲まれてる鉄板に当たるが、そのまま此方に突っ込んで来る。

俺は慌てて左に転がり逃げる。ブルドーザーは俺の直ぐ側で止まり此方に正面を向ける様に回頭する。


「ヤバイヤバイヤバイ!?」


「逃しはせんぞ!!!このまま死ねええええ!!!」


ブルドーザーのブレード部分を上下に叩きつけながら此方に迫る。俺は脇目も振らずに走る。

ブルドーザーの振動と男性の声が俺に襲い掛かる。そして俺はパワーショベルの下に滑り込む。


ドガジャアアアン!!!


ブルドーザーがパワーショベルに打つかる。しかしブルドーザーは後退する事は無く前進を選ぶ。パワーショベルが徐々に押され始める。俺はパワーショベルに引っかからない様に急いで匍匐前進で抜け出そうとする。


「ええい!しつこい奴め!いい加減に死ねええええ!!!」


更にブルドーザーのエンジンから唸り声が聞こえる。それと同時にパワーショベルが持ち上がる。


「不味い!このままじゃあ!」


死ぬ。この時俺は確かに肌で感じた。明確な殺意が俺を押し潰さんと迫り来る。

だがこの時俺に死が迫っていたのと同時にブルドーザーの運転手にも死が襲い掛かろうとしていた。

それは物凄い勢いで此方に迫っていた。人体の限界を突破したソレは一気にブルドーザーのエンジンに乗り掛かる。


「貴様ああああ!!!このブルに触れるなああああ!!!」


「ヴギヤアアアァァアアア!!!」


運転手の声に反応した奴等は一気に運転席に迫る。そして運転席の覗き窓に手を突っ込む。そして…



奴等の大きな雄叫びと同時に前方に付いてた鉄板が剥がされる。



そのまま奴等は運転席に頭から一気に乗り込む。


「貴様あああ!!!うがあああ!?!?儂は、儂は負けん!!!」


運転席では咀嚼音が聞こえるのと同時に何かの工具の音が聞こえる。そして咀嚼音と同時に何かをグチャグチャにする音が鳴り響く。運転席からは悲鳴に近い声と呻き声が混ざって聞こえる。

俺はこの隙にブルドーザーから距離を取る。そして工具の音が止まった時、一つの声が止まった。後に残ってる音は咀嚼音だけだった。

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