上坂中央ドーム4
ゾンビ映画で衝撃的だったのは28日後と28週間後でした。当時走るゾンビもそうでしたが、まだ理性がある状態でも引っ掛かれただけで殺さなければならない。
そんな世界にならなくて良かったなと映画を観ながら思いました。
ゾンビゲームだとデッド アイランドでした。特にPVの映像と音楽が心に強く響きました。そして生き残ってる人達との交流とかも。唯、途中で弾薬の作り方を覚えてからは弾薬を作りまくって銃を乱射してましたが笑。
(尚武器レベリング制についてはノーコメントで笑)
上坂中央ドームに居る生存者達の探索はある程度終わった。確認出来た生存者は全部で67名で思ってた以上に少なかった。恐らく奴等が現れて観客は早々に外に逃げたのだろう。此処に残ってるのは逃げ遅れたか逃げれ無い状況に陥ったり色々有るだろう。
「先ずは彼等の逃走手段を確保だろ。次に其処に行くまでの安全通路確保。そこから先は彼等次第だな。流石に避難場所までは知らないし」
そもそも俺には避難場所とか必要無いからな。兎に角、今は生存者達を如何にして此処から脱出させるかだ。一度会議室へ向かう事にした。
会議室に着きドアをノックする。会議室付近には奴等が数体居るだけなので無視する事にした。ドアが少しだけ開き中からMSSの二人が顔を出してくれた。
「戻って来てくれたんですね!」
「他の人達は?澪は無事でしたか?」
「あぁ、他にも生きてる人達は居たよ。それから西蓮寺 澪も生きていた」
「良かったぁ。澪は生きてたんですね」
「これからどうするんです?」
先ずは俺の考えを彼等に伝える事にした。
脱出用の乗り物は此方で用意出来る。唯、乗り物を動かす為の鍵が必要な事。奴等を如何にして退かすかを考えてるなど。
簡単に脱出の説明すると中の人達も色々考え始める。
「あ、中央ステージの音響を使ってみたらどうだ?この建物の防音対策は万全だから少なくとも建物内部の奴等はステージの方に集まるんじゃ無いか?」
「でも音響の使い方なんて、あの人分かんないだろ?場所も知らないだろうし。お前が付いて行くのか?」
「スマホがあんじゃん。そこからやり方と場所を教えれば良いじゃん」
「車の鍵か。送迎用のマイクロバスなら警備室で管理してるな」
「警備室の場所は分かりますか?分からないなら地図書きますよ」
そこから脱出方法は順調に進んで行く。やはり一人より多数だなと改めて思う。
「でもさ、仮に音響とかで奴等を引き寄せれたとしても数体は絶対に居るだろ?其奴らはどうすんの?」
「それは…どうしよう?」
彼等はそう呟き此方を見る。俺は肩を竦めながら言い放つ。
「椅子でも何でも良いから頭を叩き潰せば良いよ。と言うか、俺は音響の操作で此処には居ないし。それに全ての奴等は倒せないよ。因みに噛まれたオッサンはどうしたの?」
「縛ってます。さっきまで呻いて暴れてたんですが突然血を吐いたんです。そうしたら…」
ドアの隙間からオッサンを見ると口や目から血が出ていながら身動き一つしていない状態だった。もうオッサンは手遅れだろう。
「一応言っとくけど奴等の腕力は半端無いからな。しっかり縛っといた方が良いぞ。それじゃあ俺が音響操作するからスマホ出してくれ。フリフリするぞ」
俺はチャットアプリを起動する。音響操作を教えてくれる男性は慌ててスマホを出してフリフリする。贅沢が許されるならMSSメンバーとフリフリ交換したかったなぁ…。
無駄な事を考えながらお互い登録を済ませてから俺は行動する。
「これで良し。先にマイクロバスを裏口に用意しとくよ。其処から電話するから待っててね」
「分かりました。気を付けて下さい」
俺は他の生存者達にも脱出の手立てを伝えて行く。怯えながらも頷く者や拒否する者も居た。勿論拒否するなら別に構わない。その辺りは個人の自由だからな。
「後は西蓮寺さんに伝えて作戦開始だ。気合い入れて行くぞ」
西蓮寺さんの元へ駆け足で向かう。道中の奴等を全て無視して行く。
(しかしアレだな。もしこれで西蓮寺さんを助ける事が出来たら俺モテるんじゃね?)
考えてみて欲しい。今や世界は絶望的な状況に陥っている。希望は無く絶望と恐怖が辺りを埋め尽くさんとしている。そんな中、ヒーローの様に颯爽と現れて救助する俺の姿!
(いやいや、もしかしたら生き残ってるMSSメンバーから「素敵♡抱いて♡」とか何とか言われちゃったりしてさー!)
妄想の中では煌びやかな衣装を着たアイドル達が俺に抱き付いている。誰が見ても今の自分の表情は不審者そのものだろう。だが此処には通報する人も居なければヘルメットで表情は見えない。
「いやー、参ったなー。モテ期来ちゃったとか?アダムとイブ達みたいなハーレム展開しちゃう?ウッハー!最高かよ!」
気分良く自分の妄想を抱き続ける。そのまま西蓮寺 澪の所まで走って行く。勿論彼女に会う時にはだらしない表情を引き締めないとだめだろうが。
それに彼女にはこれから上坂中央ホールから脱出する為の心構えと準備だけはして貰う。そして西蓮寺 澪が居る備品室に着きドアをノックする。暫くしてドアが少し開く。
「慧さん。無事で良かった」
「おうさ。取り敢えず中に入らせて貰うよ」
備品室の中に入り西蓮寺さんに脱出方法を伝える。最初は驚愕した表情をされたが段々と不安な表情になる。
「でも、それだと慧さんが危ないんじゃ…」
「俺は平気だから大丈夫だよ。兎に角準備だけは頼むよ」
俺は立ち上がりドアに向かう。しかし西蓮寺さんに腕を掴まれてしまう。
「駄目よ!慧さんが危険な目に合うだけじゃない!他の脱出方法は無いんですか?」
「他の方法は有るだろうな。けど犠牲になる人は間違い無く増える。それに俺は自由に動けるからな」
そう言ってヘルメットを被りながら西蓮寺さんを見る。
「俺は織原 慧であり、サバイバリストスレ主でもあるんだ。と言っても西蓮寺さんは分かんないか。此処から脱出したらサバイバリストスレ主の事を誰かに聞くと良いですよ」
西蓮寺さんの手を解きドアを開ける。振り向くと不安そうな表情で此方を見続ける西蓮寺さんの姿。そんな彼女にグットサインをする。
「それに言っただろ?サインと写真を貰うからさ。心配しなさんな」
「あ…うん。必ず無事に生きて帰って来てね」
彼女の笑顔を見ながらドアから出る。
「やっぱり美人の笑顔でお見送りされるのは格別だな」
自分に気合いを入れながら地図を取り出し警備室に向かう。生存者達を上坂中央ドームから脱出する為の第一歩を歩む事にするのだった。