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獅子王国

  ブルムンド王国や都市国家群などの国家、そして世界最大の森と評されることもあるガドの大森林と接しているレムルス獅子王国は獣人たちが数多く住んでいる国であり、その国風は基本的に弱肉強食だ。

  この国に住まう者は獣人だろうがそうでなかろうが強い者は評価され高い地位に、反対に弱い者は評価が低くなり低い地位につくことが多くなる。特に婚姻関係ではそれが顕著に出て、強い雄と雌はたくさんの伴侶を持つことができるが、逆に弱い者は生涯独身でいることも珍しくない。


  これだけ聞いた他国の人間は獅子王国を野蛮な国だと侮るのだが、その者たちが直接獅子王国に行って自分の目でこの国見ると、皆一様に驚いた顔をする。特に王都を見た者の驚きは大きく、周辺国の者がその王都を見た後で再び獅子王国を侮るようなことは一切なかった。


「ここが獅子王国の王都……僕が想像していたものとは全然違います」


  クルスが王都を見て感嘆の声を上げる。クルスは王都までの道中にあったこの国の都市にも驚いていたが、この王都を見た時の驚きはそれを優に超えるものであった。


「そりゃ驚くわな。俺も情報をもらってなかったらクルスくらい驚いたかも」


  ダンジョンでいうとまだ下っ端の部類にあたるクルスはともかく、そのトップに君臨している優斗には配下たちの集めた情報がどんどん入ってくる。

  直接見たことはなくとも獅子王国の情報は知っていた優斗は、自分が抱いていたイメージと大きく変わらない王都を見てもその驚きは小さかった。


「しかしよー発展しとんな。聞いてた通り、ブルムンド王国よかよっぽどすごい国やで」

「ですよね!これほど発展した都市はまだ見たことがありません!!」


  獅子王国はブルムンド王国と比べて文化的に一歩二歩先に進んでいる。これは王国側も認めざるを得ないことであり、王国は獅子王国を野蛮だと非難することはあっても決して舐めているわけではなく、むしろ獅子王国に行く機会が多い貴族程警戒を強めていた。


  獅子王国はその性質上武官ばかりが幅を利かせているというイメージがあるが、国家を運営するには武力だけではだめだという認識がちゃんと浸透しており、文官もそれなりの数が雇われている。当然力関係でいうと文官よりも武官のほうが強く、武官にあこがれる者は多くいるが文官にあこがれる者は非常に少ないという状況だ。

  しかし文官にもそれなりの配慮をし、ある程度の権限を与えているからこそ今の獅子王国があると言っても過言ではない。特に王家が武官だけでなく文官も大事にしているため、文官は戦闘力の低い者たちからはあこがれを抱かれている。


  さらに言うと獅子王国はブルムンド王国とは違い王が絶大な権力を持つ国であり、王国とは違い三大貴族のような国王にも負けないような権力を持つ者もいない。また後継者争いの方法も獅子王国らしい方法で決められるため、後継者争いによって国力を落とすようなこともあまりなかった。


  そしてそんな獅子王国の本拠地ともいえる王都は、ブルムンド王国の王都の約1.5倍の広さに加えてその倍近い人数が住んでいる大都市である。

  国力もまたそれ相応に大きいため、周辺国家の中では一目置かれている国であった。


「やっと王都に入れるな。ここまで本当に長かった。後は王都を中心にいろいろ見て回ってからルクセンブルクに帰ればいいか。正直都市の発展具合だけ見ればここで暮らしたいけど、ルクセンブルクはルクセンブルクでまだやり残してることがあるしな」


  獅子王国の王都は大きい。優斗にとってこの国は将来敵になるかもしれないし、場合によっては味方になるかもしれない周辺国の一つだ。この国に商会とスパイを送り込んでいるのはどっちに転びそうか見極めるためであり、それと同時にどっちに転んでも対処できるようにするためである。

  この国の弱みと強みに貴族同士の仲や王家の評判、そして国に属さない組織の立ち位置など、様々なことを調べ獅子王国への理解を深める。


  今回優斗たちが来た目的もその一環であり、スパイのように積極的に情報収集することはないが自分の目で直接いろいろなものを確かめるのである。

 

  優斗は所詮ただの会社員であり、国家戦略どころか会社の経営戦略を考えるような立場ですらなかった。それなのにいきなりダンジョンと言う巨大で利用価値の高いものを持っている優斗にはダンジョンが生き残るための戦略を立てる必要があり、優斗も日々本などで勉強はしている。

  しかし今の優斗には情報を聞くだけで判断するような力がないため、ルクセンブルクに行った時のように獅子王国も自分の目で確かめる必要があった。


  今回の獅子王国では優斗に先んじて潜入している者が多数おり、ルクセンブルクに潜入した時と比べて事前に知識はたくさん入っている。

 

  ダンジョンのためにも自分の目でしっかり見ておこうと気合を入れる一方で、パンフレットなどでしか見たことがなかったような場所に旅行に来たようなわくわくする気持ちが同居していた。


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