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要求

「待たせたな。俺に用があるようだが、生憎俺はお前たちのことをまったく知らない。だからまず自己紹介からしてもらおうか」


  里長は同胞たちに囲まれている侵入者を一目見て、副戦士長の言ったことが間違っていなかったことに気づいた。彼の感覚からしても侵入者たちが強いのは間違いなく、それらと戦うにはある程度の犠牲が必要になるであろうことは容易に理解できた。

  しかしここは自分たちの里の中であり、周りの者たちは里長である自分の行動をしっかりと見ている。もし仮に侵入者が自分よりも強かったとしても、この状況で下手に出るようなことはまずあり得ない。

 

  自分が対等、取り方によっては上から要求していると取られてもおかしくないような態度と言い方をした族長であったが、内心ではこれを受けて相手がどう出るか不安なのだった。


「その前に、彼らの持っている武器を降ろしてもらえないか?こちらに警戒心を抱く気持ちはわかるし、君たちが我々を取り囲んでいることは容認する。しかし、さすがにずっと武器を向け続けられるのはいい気がしない。

  それに何らかの事故で攻撃されれば、当然我々だって黙っていない。こちらは構わないが、そうなるとそちらは大きく困るんじゃないか?」


  優斗は暗に自分たちが戦争も辞さないし、そうなっても勝てる自信があると言っている。里長もそれくらいの意味は当然分かるので、優斗たちを取り囲んでいる者たちに武器を降ろすよう命令した。


「これでいいいか?」


  里長としても戦争になれば負ける気はないが、それでも得体のしれない優斗たちと戦争することはなるべく避けたかった。

  里長は優斗たちがある程度の使い手であるところまでは察しているが、具体的にどれくらいの強さなのかまではわからない。そして優斗たちの人数が十人だけとは限らず、他に何人も仲間がいる可能性だってあるのだ。


  得体の知らない敵と戦争するのはなるべく避けたい。これは至極当然の考えであり、里長も例外なくその考えを持っていた。


  里長に命令されて武器を降ろしたダークエルフたちは、納得した顔の者と不満そうな顔をしている者が同じだけいる。基本的に若い者ほど不満そうな顔をしていて、経験豊富な者になればなるほど納得して武器を降ろした。


  不満そうな者は今まで侵入者は例外なく殺してきたのになぜこいつらには攻撃しないんだという気持ちと、侵入者を倒して功績をあげたいという欲が見える。

  反対に納得した者は目の前の侵入者がただ者ではないことを察知し、むやみやたらに戦いを挑んではだめだと判断したからである。


  ダークエルフは東で最大の勢力ではあるが、それでも決して東で敵なしというわけではない。森には何十人もでかからなければ勝てない敵がいるし、里ができて安定するまでは負けることも少なくなかったのだ。


  自分たちの勢力が最強じゃない時代から生きてきた経験豊富な者ほど、自分たちの強さを正確に把握して敵のことを侮らずに観察するのだ。侵入者がある程度の強さを持つとわかった彼らは、里長の判断に賛同して積極的に武器を降ろしたのだった。


「武器は下げてもらえたようだね。それではこちらの自己紹介と行こうか。俺の名前は野村優斗、後ろにいるのは俺の部下に当たる者たちだ」

「なるほど。俺は現在この里の長を任されているガンカだ。面倒な小細工は好かんから単刀直入に聞く、俺にどんな用があるんだ?」


  二人がお互いに自己紹介する。ガンカの言葉を聞いた優斗は、少し考えてからガンカに用件を伝えた。


「面倒な駆け引きがなくていいのはこちらもうれしいよ。俺の要求は簡単だ。この里には我々の支配下に入ってもらう」


  優斗がこの発言をした瞬間、周囲を取り囲むダークエルフたちの目がこれまで以上に鋭くなった。直接見ずとも優斗にはそれが感じられ、自分の周りだけ気温が少し下がったような気がした。


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