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無礼者?

  現在ダークエルフの里は普段よりも騒がしかった。それもそのはず、今まで会ったこともないような連中がアポなしで、しかも何ら悪びれも隠れもせずに堂々と里に侵入してきたのだ。

 

  ダークエルフの里は今までよそ者を招き入れたことがない。もちろんモンスターや冒険者が迷い込んでくることはあったが、その時は問答無用で殺している。里は彼らにとって他種族には入られたくないある種神聖な場所であり、そこに無断(よそ者が里に入る許可をもらったことはないが)で侵入する者には容赦しないのだ。


  ダークエルフの里は外界との交流があり、都市国家の一つと交易をしているのだが、それでもその使者すらも里に招き入れたことはない。

  外と交易している以上彼らはエルフほど閉鎖的ではないが、それでも他のコミュニティーに属していてなおかつ他種族の者を簡単に信じるようなたまではない。外と交易を始めてすでに百年が過ぎているが、それでもまだお互いの街や里を行き来するような仲ではないのである。


  そんな里に侵入者が現れた。しかも、その侵入者はむしろ感心する位堂々としているのだ。これまでこんなに堂々と、しかも十人前後の集団で里に入ってきた者はいない。

  殺そうと武器を持ったダークエルフたちもそのあまりに堂々とした姿勢を見て、武器を構えてもなかなかそれを繰り出すことはできなかった。


「お前たち!ここは我らダークエルフの里だ。何の用があってここに来た!?」


  これまで侵入者は問答無用で殺していたダークエルフたち。しかし今回の侵入者たちの異様さが不気味だった彼らは、今までとは違い侵入者の目的を知りたくなった。


「我々はこの里に対して話があってきた!ここの責任者と話をさせてもらいたい!!」


  侵入者は、敵意を抱いているはずのダークエルフたちですら見惚れてしまうような堂々とした姿で要求を告げる。

  約束もせず勝手に人様の里に侵入しておいて、挙句にはそこの責任者である里長を出せという。里のダークエルフからしたら、というより普通に考えたらすごい無礼な行為だが、それを告げる者の姿勢や容姿はものすごく輝いて見えた。


「……一応里長に確認を取る。だから絶対にそこを動かないでもらいたい。それと我らの同胞が武器を構えて囲んでいるが、怪しいことをしない限りそれが放たれることがないと誓おう。だから里長が来るまでは我慢してもらいたい」


  侵入者に話しかけた男は里の副戦士長であり、里からの信頼も厚い男であった。彼は侵入者のあまりに堂々とした態度から、もしかしたら里長か先代の長を含む年寄りの古い知り合いの可能性もあると思い、とりあえず一度里長に確認を取ることにした。


「いいだろう」


  先ほども要求してきた、侵入者たちのリーダーと思われる男が鷹揚に頷く。その周りを取り囲んでいるダークエルフたちは副戦士長に何の礼もしない男に憤るとともに、自分たちが武器を構えて取り囲んでいるにも関わらずそれを何ら気にしない彼らを素直にすごいと思うのと同時に、それができるだけの実力を持っているのかと警戒した。






「あの状況であれほど平然としているとは。もし予想通りに里長たちの知り合いでなかったとしても、何も考えず彼らと交戦するのは危険な気がする。ここは里長にも彼らの異常さを軽く伝えておく必要があるかもしれん。

  もしそんな奴は知らんと一蹴されたとしても……だとしても何とかして里長をあの場に連れて行かなければならない。それが副戦士長である俺の使命……なんだろうな……」


  里長を呼ぶためにその屋敷に向かっている副隊長は、侵入者たちが里長たちの知り合いでない可能性は限りなく高いと考えていた。今も念のため里長に聞きに行ってはいるが、それはほとんど意味のない行為だとも予想はできている。

 

  しかしそれでも自分は里長のもとに行かなくてはならないと考えていた。その理由は侵入者たちの力量のせいである。

  侵入者たちの体捌きや自信に満ちた姿勢、そして多数に囲まれても動じなかった胆力と言い、冷静に考えれば考えるほど舐めていい相手ではなかった。


  おそらく里長も侵入者のことを知らない。しかしだからと言って殺せと言われれば、それをした瞬間に自分たちが殺されるような悪寒があった。向こうが武器を向けられても平然としているのは、それが危険だと認識してないからとも言えるのだ。

  向こうがよっぽど平和ボケした人物で、こちらが絶対に攻撃してこないと考えているようなバカならともかく、そうでないとしたらかなりの力を持っている可能性が高いと言える。


  この予想の根拠は薄い。あくまで彼の感覚的なものであり、物的証拠は一つもないのだ。しかし彼も副戦士長を任されるほどの実力者で、それなりの実戦経験は積んでいる。今その実践経験で培われた勘が、『奴らと戦ってはいけない!』と強く叫ぶのだ。


  副戦士長は里長のいる部屋のドアの前まで来ると、一度呼吸を整えてからノックする。


「入れ」


  許可を得て入室した彼は、侵入者を発見してから自分を含めた同胞たちがとった行動とそれに対する相手の反応、そして自分が侵入者に対して感じたことを余すところなく伝えた。


「わかった。今から準備する」


  副戦士長の話を聞いた里長は、真剣な表情をして奥の部屋に入っていった。その表情と向かった先から里長の次の行動を予測くした副戦士長は、自分も最大限の心の準備をしながら里長の準備が終わるのを待った。



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