森の防衛
本日二話目です。
フレイヤを中心とした部隊がガドの大森林南側を支配下に置き、その後西側にいたエルフを支配下に置いて彼らと一緒に西側も支配下に置こうとしていたころ、ダンジョンに帰ってきた優斗が主なメンバーたちを召集した。
集まっているのは『インフィニティ』の時から優斗とともに行動してきたメンバー、そして幹部候補として優斗が創造した将来性豊かなダンジョンモンスターたちである。
「みんな忙しいところよく集まってくれた。そして当然集まってもらったのには理由がある。実は、今俺たちが潜入しているルクセンブルクの冒険者たちがガドの大森林西側に近々討伐隊を送ることが明らかになった。もちろんこのダンジョンの存在がばれたわけでも、この森に強力なモンスターがいることを確認されたわけでもない。
この依頼を出したのは領主の伯爵なんだが、どうやら彼は本格的にこの森の開発に乗り出すようだ」
優斗のその言葉を聞いても、彼らは少しも狼狽えることはなかった。むしろ、『それで何か問題があるか?』と言わんばかりの顔で優斗を見ている。
「ルクセンブルクにいる冒険者程度なら、何人来ようが俺一人でも勝てる自信がある。正直単純に全滅させるだけなら、こんな大事にしなくても適当な人員を派遣すれば簡単に滅ぼせる。
だがそれだと面白くないし、何より勿体ない。わざわざ向こうから来てくれたのだ。こちらでもいろいろともてなしておきたいだろ?」
敵である討伐隊を歓迎するのはおかしいことだし、そもそも慎重派の優斗がわざわざそんなことをするわけがない。
シルヴィアやフレイヤなど最初からなにかあると分かっていた者たちはともかく、ミアやアコなどの言葉通り受け取っていた者たちは軽い混乱状態であった。
「もてなし……ですか?」
「そうだ。せっかくだからいろいろと試しておきたいことがあるんだ?」
もてなしと言われて不思議そうな顔をしていた面々も、優斗が討伐隊を使っていろいろと訓練しておきたいと聞いて納得した。
「何を試すんですか?」
「調べるのはうちの戦力とその使い方だ。もちろん相手の人数や討伐隊の規模や編成によってできることとできないことがあるだろうし、俺だって今回で試したいことがすべて試せるとは到底思っていない。
ただ討伐隊には俺も入るわけだし、まさか向こうも討伐隊の中に森のモンスターを支配している者がいるとは思わないだろうから、討伐隊の動向くらいは簡単には把握できるだろう。だからできる範囲でいろいろ試してみたいんだ。そうすれば強力な敵がダンジョンに近づいてきたときの練習にちょうどいいだろ?」
優斗の話を聞いて彼が求めていることを理解した彼らは、討伐隊を倒すいろいろなアイディアを出し合っていく。特に森での狩りを多くこなし、なおかつ森の西側と南側を侵略しに行ったフレイヤからはいろんな意見が出た。
もちろんその意見の中には彼女らしい残酷な作戦もいくつか含まれており、あくまで支配下に置くために行った遠征では使えなかったような策もどんどん出していった。
フレイヤだけでなく他のメンバーたちも意見を出し合い、さすがにもう新しい意見が出なくなって来た頃、最後のまとめとばかりに優斗が口を開いた。
「みんな貴重な意見をありがとう。今出た数々の意見を参考にして、討伐隊の当日の動きを見ていろいろ試していこう。
全部の作戦を実行するのは絶対に無理だし、向こうの動き方によってはどの作戦も使えないかもしれない。だが、どのような作戦であったとしても討伐隊を倒すのが第一条件となる。どうなるかはわからないが、それでも作戦を行う者は敵を確実に全滅させるつもりでいくんだ!!」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
こうしてダンジョン内での対討伐隊作戦会議は幕を閉じた。どの作戦が採用されるのか?それが決まったのは作戦が行われる前日であった。
一応言っておきますと、この作戦とは44~50部分の話です。