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閑話ー 長の責任

本日二話目です。

  ハイエルフ、それはエルフという種が進化した姿であり、その強さは普通のエルフとは一線を画すほどだと言われている。

  エルフにとって自分たちの上位種であるハイエルフとは特別な存在であり、彼らは例外なく自分たちの上に立つべき種族だと受け入れられている。


「まさかうちの集落が初めて受け入れたよそ者がハイエルフ様だとは……長いこと生きて生きたつもりだったが、これにはさすがに言葉が出ないよ」


  フレイヤたちが見つけ、そして彼女がハイエルフだと知った瞬間に支配下に入ることを了承したエルフの集落。そこの長である壮年のエルフは、ハイエルフであるフレイヤとその一行を丁重にもてなすよう部族の者に命じた後、一人自室にこもりこれから自分たちがどうなるかについて考えを巡らせていた。


「私がどのように考えたとしても、最終的にはハイエルフ様には従うしかない。それに、伝承によればハイエルフ様の力は我らエルフとは比べ物にならないほどだと言う。それならば、仮に逆らったところで滅ぼされてしまうだけだ」


  彼はエルフにしては珍しく、フレイヤがハイエルフだからと言って全面的に従うつもりはなかった。面従腹背と言うほどではないが、それでも彼は心からフレイヤに従っているわけではない。

 

  フレイヤがハイエルフであるということは尊重するが、だからと言ってそれだけでフレイヤのすべてを信じられるほど彼は盲目的ではなかった。


「フレイヤ様にはどこかでそのお力を見せていただきたい。しかし、どうすればうまくそうすることができるだろうか?何とか失礼にならない方法があればいいのだが……」


  彼にもフレイヤがハイエルフであるということはわかる。普通の人間やモンスターではエルフとハイエルフの違いを判断するのは難しいが、当事者のエルフたちにはそれが本能的にわかってしまう。

  部族の長である彼を含めたエルフたちは全員それがわかっており、だからこそ一目見た瞬間に降伏したのである。


  それにフレイヤの周りにいたモンスターたちも一筋縄でいかないことはある程度の目があれば簡単にわかる。

  ハイエルフには種族的及び実力的に逆らうことができず、そのうえフレイヤの連れているモンスターも強力だとわかれば、エルフたちが彼らと戦うのは得策ではないどころか自殺に匹敵する。


  部族の長である彼には自分の部族を存続、及び繁栄させる責任がある。そのため自分たちに損しかなさそうな戦いはできるだけ回避するし、新たに自分たちの支配者となったフレイヤの力を知っておきたいとも思うのだ。


「幸いにもうちにフレイヤ様のことを不満に思う者はいない。しばらくは様子見でも大丈夫だろうか?」


  現状フレイヤに対して不満を持っている者は、少なくとも族長である彼の知る限りは存在していない。

  男たちはフレイヤの美貌にすっかりはまってしまい、女たちも高貴なハイエルフである彼女には女性としても尊敬の目を向けている。


  何かと口うるさい老人たちはハイエルフが自分たちの集落に来たことを喜び、彼女による支配を大歓迎している。フレイヤの件を慎重に進めたいと思っているのは彼をはじめとする数人であり、それ以外の者たちは老若男女全員が大賛成であった。


「我々エルフの上位種であるハイエルフ様とその配下であるモンスターたち、そしてそのハイエルフ様が仲間だと認めるような方々、その方々による支配が吉と出るか凶と出るか、これからが我ら部族にとっての大事な正念場になるな」


  いくらハイエルフが強いとはいえ、それと人を従える能力とは別物である。弱くても人の上に立つ素質がある者もいれば、強くても上に立つ素質がない者もいるのだ。


  フレイヤたちによる支配が自分たちにどう影響するか、族長として最悪も考えておかなければならない彼は、同じく現状の危険がわかっているであろうメンバー(ほとんどが彼の側近)を自室に呼んで、これからのことについて夜通し話し合った。



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