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気まぐれな者たち

今日は二話です。


  南の森に棲む妖精たち、そのほとんどは森に存在している草や木などに宿った者たちであり、本体があるその場所からあまり遠くへは移動することができない。そのため自分より遠くにいる妖精たちと会話することはできないし、当然大勢で連携して侵入者を倒すこともできない。


  そもそも妖精たちは基本気まぐれな存在であり、自分に害のありそうな相手が来たときは全力で応戦するが、それ以外の時は自由気ままに過ごしている。


  当然妖精にも個性があり、その姿や性格もみんな同じと言うわけではない。

  しかし妖精は本質的に気まぐれでいたずら好きの子供のような存在であり、そのほとんどが各地で何らかのいたずらをしていることは多い。そのくせ知能は子供よりも高いため、妖精たちを倒したり捕まえることは大変な労力が必要になるのであった。


「最近暇だよな~」

「そうだな~。最近獣人たちが俺たちのとこまで来ないもんな。外から来る侵入者は、ほとんど手前の奴らにやられているみたいだぜ」


  彼らは南側の中では中央に近いところに生息している妖精たちだ。両方の本体が近くにある、いわゆるご近所同士の関係であるため、二人が会話することはそう珍しいことではなかった。


「外に近い奴らはいいよなー。俺なんか、モンスターや動物をからかうのはそろそろ飽きてんのによー」

「だよな~。もっと人間どもをからかって遊びたいよなー」


  外から来た者たちは、そのほとんどが彼らのところまでたどり着く前にいる妖精たちの餌食になる。そのため、彼らが外からの侵入者を見る機会は非常に少ないのである。


  彼らは外からの侵入者に会う、もっと言えば外から来た者たちをからかうことができないことに不満を抱いている。この森に娯楽が全くないわけではないが、それでも彼らにとっては自分のいたずらで人が驚く顔を見ることが最大の娯楽であることに変わりはなかった。

 

  妖精にとっていたずらをするというのは、それを受けた相手の対応を見るまでがワンセットなのである。誰も驚いたり困ったりしないようなことをしても何の意味もないし、森にいるモンスターたち相手にはいつでもいたずらができる。

 

  自分の本体から遠く離れることができない彼らにとっては、外から見かけない者たちが来てそれらにいたずらをしてその反応を見ることが、いつもと違って新鮮でまた面白いのである。


  森の入り口に近いところにいる妖精たちからすれば、遊び相手に事欠かないのと同時に常に自分の本体がやられるかもしれない危険との隣り合わせであるのだが、比較的森の中央に近いところにいて暇を持て余している彼らからすれば、そのハラハラも羨ましく思えるのであった。


「おい、何か森が騒がしくないか?」

「そうだな。でも、騒がしい方向がいつもと違くないか?」


  森の中で何か大きな動きがあれば、それに応じて森の中も騒がしくなる。さすがにこの広い森で南以外に大きな動きがあってもそれを感じ取ることは難しいが、南側でそれが起こっているのなら自然との親和性が高い種族である彼らには容易に感じることができる。


「これは中央の方向からだな。いつもはこれの反対側なんだが、森の中央に何かあったのか?」


  南の森で大きな動きがあることは少ない。南側はどういうわけか他の場所と違って妖精が生まれやすいところであり、そこに住む者の約半分は妖精であると言っても過言ではない。


  妖精の行動できる範囲は狭い。本体によって行動範囲が限定されてしまうため、森の中で大きな動きを取ることはできない。

  そして妖精たちは自由気ままでいることを愛するため、他者を支配しようと画策する者は少ない。


  南の森が騒がしくなるのは、外から侵入者が一度に大量に来た時か、非常に強力な侵入者が来た時くらいである。侵入者なのだから、当然騒ぎは外のほうから起こる。

 

  つまり南側で騒ぎが起こるのは森の外側からであるのが常であり、森の内側からと言うのは珍しいのである。

  そして今回の騒ぎの方向は森の中心に近いほうからである。これは普段とは違う、ということで妖精たちの顔が一瞬真剣になったが、


「まあどうでもいいや。それより、そいつらはからかいがいがありそうかな?」

「久々に楽しめそうだよな~」


  妖精たちが真剣な顔をしたのは一瞬で、それからは普段通りお気楽な顔をしていた。


  彼らは普段から森の奥にいるため、敵と戦う機会がほとんどない。そのため平和ボケしており、得体のしれない事態に遭遇しても基本お気楽なのである。


  そしてお気楽なのは彼らだけではない。彼らと同様に森の奥のほうにいる普段敵と遭遇する機会の少ない者たちは、この機会に戦闘と言う名のいたずらをいろいろしようと動き出す。


  彼らにとっては自分の本体が被害を受けなければ敵がどうなってもよく、敵が死のうが生きようがどうでもよいのだ。

 

  まずは自分の本体の安全、それができれば敵をからかってその反応を楽しむ。それが妖精たちの行動基準であり、今回もいつも通りそうしようと彼らは動き出したのであった。



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