一網打尽
昨日投稿できなかったので今日は二話投稿します。
投稿予定は18時です。
「これで四人倒したことになるから、残りは少し離れたところにいるのを入れて後十七人か」
「いや、後はそこにいる十六人で終わりやで」
いつの間にか優斗たちのところからいなくなっていたユズは、少し離れたところにいた商人と思われる男を捕まえていた。
ユズに捕まっている男はかなりの肥満体型であり、見た感じで彼はとても戦闘ができそうな体型ではない。それにある程度高価そうな服を着ているところからして、おそらくは目の前にいるチンピラたちの雇い主か何かだと考えられた。
「おいユズ、もちろんその男も殺していないだろうな。商人は貴重な情報源だぞ」
商売するにあたって情報というものは非常に大事である。どこにどんなお店があり、その地域ではどういうものがたくさん売れているか。その地域では盛んでなくとも人気があり、自分たちが参入できる見込みがあるかどうかなど、ものを売るにはそういったリサーチが必要である。
日本ではそれだけでよかったかもしれないが、この国には貴族や王族というのが存在している。そういった権力者やその関係者は要注意だし、裏組織なんかも活動している。
優斗たちは図らずもルクセンブルクトップの冒険者からたくさん情報を引き出したのだ。今度は冒険者ではなく商人の持つ情報も必要である。
「当たり前や。気絶させとるだけで決して殺してへんよ」
ユズもちゃんと優斗の考えを理解していたようで、捕らえられている商人の体には外傷すら見当たらない。
ユズが商人風の男を捕まえているのを見て、生き残っている男たちがあたふたしだした。やはり商人風の男は彼らの雇い主である可能性が高いと優斗は改めて思った。
「そろそろ奴らを捕らえたいけど、今俺が動くとめんどくさいことになりそうだな」
生き残っている男たちは、今までにさんざん優斗の強さを見せつけられている。さすがにここまでくれば自分たちが優斗たちと戦っても絶対に勝てないことはわかりきっているし、動けばその先に死か気絶が待っているであろうことも容易に想像できる。
優斗たちも今目の前にいる男たちが逃げたり逆に攻撃しに来たりせずまったく動かないままでいるのは、男たちが自分に攻撃されることを怖がっているからであることはわかっている。
もしここで優斗たちが動けば、男たちはそれを合図にそれぞれバラバラな方向に逃げるだろう。最初に口火を切れば確実に優斗の餌食になる。それがわかっているからこそ男たちは動けないのだ。
そして自分が誰かを攻撃すればそれを合図に男たちが逃げ出すことがわかっているからこそ、優斗たちも行動に移れないのだ。
優斗たちと男たちの実力差なら、男たちがバラバラに逃げたところでそれらすべてを捕まえることはさほど難しくない。
しかしそれは手間のかかる行為であり、万が一逃すということも考えられる。
優斗と男たちのにらみ合いはこのまま続くかに思われたが、それはしびれを切らしたアシュリーによってたやすく破られることとなった。
「何ちんたらしてんだよ。逃がしたくないならさっさとこうすればいいだろ」
アシュリーは大きな結界を張って男たちを逃がさないようにする。優斗たちからするとこの結界の耐久度は高くないが、その中にいる男たちの実力からすると簡単には破れない代物になる。
ここに閉じ込めている間に男たちを全員捕縛するのは、優斗たちにとってそう難しくはない。もし結界を破られても外にはユズがいるため、転移魔法などがない限り男たちがここから逃げるのは不可能である。
それにもし転移魔法が使えるのなら、もっと早く使って早々にここから逃げているはずである。だが優斗たちは念には念を入れて転移阻害の魔法も使った。これで男たちは目の前の優斗たちを倒さない限りここから逃げるのは難しくなった。
そして男たちが全員束になったところで優斗たちを倒すことは絶対に不可能である。つまりは男たちたちがここから逃げるのは不可能なのだ。
逃げ道が完全になくなった男たちは最後の意地とばかりに優斗たちに攻撃を繰り出そうとするが、それらの頑張りもむなしく、男たちはすぐに全員捕まってしまったのであった。