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これからの方針

  優斗たちはダンジョンの近くに来ていた冒険者たちを捕らえ、様々な手段を用いて彼らから情報を引き出した。そしてその引き出した情報をすべて報告された優斗は一晩じっくり考えたのち、NPCたちを集めこれからの方針について語ることとした。


「皆集まったな?ではまずそこにある報告書を見てくれ。捕らえた冒険者から情報を引き出してくれたシルヴィアたちと、その報告を聞いた俺が一緒になって作った報告書だ。

  ここに書いてあることはこの森の外の情報、特にここから西に向かって最初に突き当たるブルムンド王国の情報が主だ。またその中でも、ブルムンド王国の中で唯一この森に面しているルクセンブルク伯爵領がメインの情報としてより詳しく乗せられている。

  これは捕らえた冒険者たちの活動拠点がブルムンド王国のルクセンブルク領であったためであり、あくまで冒険者としての視点での情報だと思って読んでみてくれ」


  優斗に促される形でNPCたちが報告書に目を通す。当然各々理解力が違う(NPCたちの中で一番頭がいいのは錬金術師のエリアスであり、逆に一番頭がよくないのはヒルダである)ので、ヒルダを筆頭によくわかっていなさそうなものも数名いたが、とりあえず全員が読み終わったことを確認して優斗が再度口を開く。


「報告書を見てもらってすぐこんなことを言うのも何だが、まず当然のことながらこの報告書の情報だけでは不十分もいいところだ。

  そもそもこれらの情報の裏付けは現時点で全く取れておらず、しかも情報提供者はたった五人しかいない。だからこの情報は、あくまでも参考程度に見てもらわなければならない」

「なに言うとるん?それくらいうちらでもわかるで」


  馬鹿にされたと感じ取ったのか、ユズが少し不満げな表情を見せる。


「一応確認しただけだ。だがこの情報の真偽はともかく、この森の外にいくつかの国や組織、共同体などがあることは間違いない。そしてその実態を確認しないことには、後々厄介なことになる可能性は否定できないだろう」

「そりゃそうやで。下手したらここに書かれている国々や、それ以外の別の組織なりが急に森に攻めてくるかもしれん。そうなったときに戦うんか降伏するんか交渉するんか、どれを選ぶにしても相手の情報がないと難しいやろうからな」

「そういうこと。つまり俺たちは、何らかの手段を用いて外の情報を得る必要がある。

  そして今、裏付けがない情報とはいえ俺たちは外の国、特にブルムンド王国にあるルクセンブルク領の情報を得ることができた。これがどういう意味か分かるか?」

「そこに潜入する……ちゅうことかいな?」


  優斗は静かに頷いて肯定の意を示す。


「まずは西にあるブルムンド王国のルクセンブルク領に潜入し、その後そこで得た情報をもとにブルムンド王国内の他領にも手を伸ばす。またブルムンド王国で獅子王国や都市国家群の情報も得て、その情報をもとにそれらの国へも手を伸ばすことにする」

「しかし未知の国に潜入ござるか。優斗にしてはずいぶんと思い切った判断でござるな」


  千代の言葉に他の面々も頷く。慎重な優斗が未知の国への潜入を試みるとは、皆にとってかなり意外な決断であった。


「慎重と危険なことを何もしないのは違う。慎重と言うのは様々な事態を想定しそれらについてよく考え、その中からより自分にとっていい状況になるよう行動することだ。

  ここで動かずこれまで通りの作戦で行くのと、多少危険だがここで動いて早めに外の情報をたくさん得ること。この二つを天秤にかけたときに、俺は多少の危険があろうが将来的には後者の方がいいと思ったから、今動くことにしたんだ。

  それにこれもあくまでこの冒険者たちの情報だが、彼らは国の中でも上位の力を持っているらしく、ルクセンブルク領ではナンバーワンの武力を持っていたらしい。ならそれらを楽勝に倒せる俺たちなら、最悪でもやばい時に逃げることくらいはできるんじゃないかと思ったんだ」


  NPCたちにはどこか納得した表情がある。彼女たちは、普段慎重な優斗が時折大胆な行動に出ていたことを思い出した。

  まあそれはあくまで生き死にに関係ないゲームだからと言うことが大きかったのだが、そんなことは知らない彼女たちにとって優斗が言う慎重の定義は、自分たちの記憶にある優斗のイメージと大きく違ってはいなかった。


「俺はあくまで平和的に暮らしたい。だがそうは言ってもこの世界には俺たち以外の生物がたくさんいるし、それらがすべて友好的だとは限らない。いや、むしろ敵対する生物の方がたくさんいるかもしれない。

  そういう意味では、この世界のすべてを手中に収めるのが最もシンプルで平和的だろう。もちろんその中で支配下になった者たちが反抗してくる可能性はあるが、それでもそれらさえ潰せればすべてが味方と言うことになる。

  もちろんそれをするのが果てしなく難しいであろうことはよくわかる。だがそれは無理でも建国などをして自分たちの存在を世界にアピールする。そしてその勢力、つまり領土などを適度に増やしていくことが、結果的には一番安全な策だと思っている!!」

「そういうもんなんか?単純にずっと隠れとるほうが安全なんやないんか?」

「俺はそうは思わない。確かに短期的にはずっと隠れていたほうが楽だし安全だろう。だがずっと隠れていては力をつける速度はどうしても遅くなるし、それにもし見つかった時に対処するのが難しくなる。

  例えば国を作っておけば何かあっても表立って対処できるし、それに他国との外交をすることもできる。見つからない様にずっと隠れ住んでいると、もしそれが見つかって他国に攻められてもそれが非難されることがない。だが国として建国していれば、友好国などがそれを非難してくれる可能性もある。

  そしてなにより戦争などで自分たちの勢力を広げれば、その分だけ力がついてくるのだ。だからもしものことを考えると、ずっと隠れ住むよりは建国などをして外に関わっていくほうがずっといいんだ」

「それは道理かもしれません。それにこのダンジョンのことを隠すには、そうやって表に出ていくほうがいいのかもしれません」

「シルヴィアの言う通りだ。ダンジョンのことを伏せておいて、表では別のところを拠点にした組織になればいい。

  例えばブルムンド王国を奪い取りその地で建国する。そうしておきながらダンジョンのことを一切伏せ、真の本拠地としておけば、結局ダンジョンが見つかるリスクも軽減される可能性があるんだ」

「……じゃあ……国を亡ぼすの?」


  ヒルダが目を輝かせながら訪ねる。もしも国を滅ぼすとなれば戦争でたくさんの敵と戦えるので、彼女にとっては願ったり叶ったりだった。


「将来的にはそうするかもしれない。だがどうするにしても、まだ全然情報が集まっていない今の状況では動きようがない。

  だからひとまずさっき言ったことは、自分の頭の片隅に入れておくだけにしてくれ。詳しくは情報がちゃんと集まってから決めるが、最終的には何らかの手段で国などの表立った組織を作り、その組織を通して勢力の拡大と支配をして行く方向で考えている。もちろんその過程では戦争などをしてヒルダの言う通り敵国を滅ぼすこともありうるだろうから、皆心の準備だけはしておいてくれ」

「……楽しみ」


  他のNPCたちにヒルダほど好戦的な者はいなかったが、それでも全員が優斗の方針には賛同する。そして大まかな方針が決まった彼らは、今後の作戦について十分な討議を行った。



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