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情報2

「まず初めに、ここガドの大森林は三方を二つの国と一つの都市国家群に囲まれているようです。西には先ほど言ったブルムンド王国が、反対の東には都市国家群があり、南にはレムルス獅子王国があるそうです。

  北にあるのはあの山脈であり、彼らのいるブルムンド王国では森と山脈の間には国がないと考えられていますが、誰も行ったことがないため詳細は不明だそうです。

  その山脈の先には国があると考えられているようですが、それもやはり行ったことがないので不明だそうです。」

「ここってそんなに重要な土地だったのか!?」

「話を聞く限りではそうみたいですね」


 この大森林を開発することができれば、それはつまりその三国の交易路となることができる。もしこの大森林にモンスターが生息していなければ、おそらく三方向からすぐにこの大森林は開発されてしまっていただろう。


「その三国はどれくらいの国力を持っているんだ?」

「男たちはこの大森林近くの街を拠点にしていて、ブルムンド王国のほかの街に行ったことはあっても、それ以外の国には行ったことがないそうです。

  ブルムンド王国と国境が接しているレムルス獅子王国のことは多少知っていても、国境の接していない都市国家群についての情報はないようです。

  なので、ある程度詳細に説明できるのはブルムンド王国、レムルス獅子王国のことは少しだけ、都市国家群の情報はまるでないということになりますがよろしいですか?」

「わかった。それでいいから話してくれ」

「はい。それでは……」


 男たちからの情報では、ブルムンド王国は大森林から西にある国の中では比較的大きく裕福な国で、その人口のほとんどが人族で構成されているらしい。

  国の人口が多く、戦争になると国や辺境伯の所有している騎士団(ブルムンド王国で騎士団などを含めた敵を倒すための武力を組織できるのは、他国と国境が接している辺境伯と国王のみ)だけでなく、金を使って冒険者や傭兵を雇ったり、王家直轄領や各貴族領からも平民を徴兵してくるため、兵の質はともかく数という面ではかなり強力な国らしい。

 

  国境が接しているとはいえレムルス獅子王国とは友好同盟などを結んでいるわけではないが、ブルムンド王国には獣人が、レムルス獅子王国には人族が一定数暮らしているため、両国は敵対関係にあるというわけではないようである。


  レムルス獅子王国は獅子の獣人の王族が治める国である。獣人は強さを尊ぶ種族であり、この国の戦力はかなり強いらしい。獣人は傾向として、魔法が苦手だがその代わりに身体能力が高いという特徴があり、白兵戦では周辺国家最強を誇る。

  特に国王は、生まれた順や王妃から生まれたとか側室から生まれたとか関係なく、新たな国王を決めるときに戦い、その戦いに勝った者、つまりその代の最も強い王族が国王に選ばれる。

 

  王族の種族である獅子の獣人は他の獣人族の中でも最強の種族であり、それに王家の高水準の教育が合わさった結果、国王は基本的に国最強であるらしい。


  二つを簡単にまとめるとこんな感じであり、特にブルムンド王国についてはまだいろいろ細かい情報があったが、長くなるのでここでは省略させてもらう。


「都市国家群はわからないが、ブルムンドもレムルスもどちらに攻められてもめんどくさそうだな」

「この森だけならそうかもしれませんが、わたくしたちが邪魔すれば大丈夫だと思われます」

「なぜそう言い切れる?」

「はい。あの冒険者たちに聞いたところ彼らは銀級冒険者であり、彼らの地元ではナンバーワンの冒険者だったみたいです。ですが、正直彼らの強さはわたくしたちからすれば弱いと言えます。あの程度で上位だとすれば、仮に攻められても何とかなるでしょう」


 シルヴィアは胸を張って答える。


「いろいろ突っ込みどころがあるんだが……まずは銀級冒険者ってなんだ?冒険者の位なのはなんとなくわかるが、それはどれくらいの価値なんだ?」

「銀級冒険者とは七段階ある冒険者の位の中で、上から三番目の強さです」


  冒険者のランクは七段階あり、黒<赤<緑<青<銀<金<白金であるらしい。

  当然上に行けば行くほど該当する冒険者の数が少なくなっていき、男たちのように銀まで行くとその人数は非常に少なくなるらしい。

 

  ブルムンド王国の騎士団は平民もいるが、その構成員のほとんどは貴族出身者であり、上層部も貴族出身者で固められている。

  しかし、ブルムンド王国の貴族が平民に比べて戦いの才能で優れているという事実はない。平民よりも高水準の教育を受けられるのでそこいらの一般人よりは強いかもしれないが、素質で上回っているというわけではない。同じ条件なら貴族や平民でも個人差があり、貴族だからといって誰もかれも平民より素質が優れているというわけではない。


  現に捕らえた冒険者たちは全員平民であるし、学がなくても入れる冒険者ギルドには、貴族出身者以外の冒険者が数多くいる。そして戦闘力と言う面だけで見れば、貴族出身者でほとんど固められている騎士団よりも、平民でほとんど固められている冒険者たちのほうが圧倒的に優れている。

 

  ここまで言えばわかるだろうが、ブルムンド王国の騎士団というのは決して優れているわけではない。騎士団と言うのは様々な利権が深く絡まっている場所であり、採用や出世には実力よりも金やコネ、そして身分のほうが必要になってくる組織なのだ。


 そんな状況だから国や辺境伯の騎士団は腐敗しており、結局どちらも弱い騎士団しか作れていない。ブルムンド王国の騎士団は冒険者で言う黒級や赤級レベルばかりで、強くても緑級が限界らしい。極々稀に青級以上が出てくるが、それは十年に一人も出ないようなレベルであり、それくらいの強さしかないブルムンド王国の騎士団のレベルは、青級以上ももそこそこいる冒険者ギルドと比べれば非常に低いと言わざるを得ない。


  その冒険者ギルドも上位の銀級であの程度なら恐るるに足らず!ということなのだろう。それは確かに全体で言えば間違ってはいない。間違ってはいないが、シルヴィアは重大な見落としをしている。


「シルヴィアはそういうが、金級や白金級が銀級よりどれくらい強いのかまだわからないだろ?それに、なんかすごい兵器を持っている可能性だってある。今の情報だけでは油断禁物だと思うぞ」


 優斗たちはまだ銀級冒険者以上の実力を知らない。もしかしたら金級や白金級は銀級よりもはるかに強く、優斗たちに近い実力を持っているという可能性はゼロではない。

  それに優斗は地球出身だ。今の地球では個人がどれほどの強さを持つということよりも、お金をかけて強力な兵器を一つ造るほうがはるかに重要である。一般人でも高性能の武器を持てば、素手で戦えば自分よりもはるかに強い格闘家でも簡単に殺せる時代だった。

 

 そんな世界を知っている優斗からすれば、いくら自分が前世とは比べ物にならないくらい強くなったとはいえ、そういう強力な兵器の存在を無警戒でいることはできない。

  捕らえた冒険者たちはそんな兵器の存在を知らなかったようだが、それがもし仮に国の切り札的なものだとすれば、一般人はもちろん国の重鎮でも一部にしか知らされていないはずだ。

  そういうことを考えると、男たちの強さだけを見て安心するのは早すぎる。今までより少し警戒を緩めるくらいは許容範囲だが、完全に緩めるのは愚策だ。


「相変わらずめんどくさいくらい慎重派ですね」

「これは性分だしな。それに何度も言うがこの情報の裏付けは取れていない。完全に信じるのもまずいだろう」

「まあそうですよね……では気を取り直して、次はわたくしたちの住むこのガドの大森林について説明します」

「ああ頼む」


 ここガドの大森林は、大森林と言うだけあってものすごく広大な森であり、その広さは一国に匹敵すると言われている。ガドの大森林には様々な種類、数のモンスターや動物たちがいて、冒険者ギルドでもすべての種類を把握することはできていないらしい。また、モンスターや動物以外にもエルフなどの森で暮らす亜人たちもいるらしい。


  ブルムンド王国はその亜人たちとは友好関係を結んでいるわけではなく、むしろ敵対関係にあるらしい。実際に森にいるエルフたちは見目美しい者が多く、それらが人間にさらわれて奴隷となることも珍しくないようだ。男たちも以前この森にいる女のエルフをさらってきて奴隷として売ったことがあるらしい。


 とにかくこの森はすごく大きくて、生物無生物にかかわらず様々な資源があるということだ。男たちもこの森のことはそれほど詳しくない。と言うか詳しくないからこそ調査していたわけで、森の調査自体は引き続き優斗たちがやっていかなければならないようであった。


「森に関してはほとんど収穫なしか。なら最後はその伯爵領についてだな。あいつらはそこが地元だったみたいだからいろいろ知っていたんだろう?場合によっては伯爵領に潜入して、この世界の情報などを得なくてはならないことになる可能性もあるからな」

「今度はやけに積極的ですね」

「どうだろうな。慎重だからこそ潜入して情報を得たいとも言えるが」

「それも一理ありますね」


「自分の話すことはもうないから早く実験しに行く」と言っていつの間にかエリアスが自分の研究室に帰ってしまっていたが、それを気に留めずシルヴィアによる優斗への報告が続けられていった。



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