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竜の里 23

「さすがだ!しかし先ほどまでの我とは違うぞ!!」


地竜王はスキルを使い、先ほどまでよりも数段速い速度で突っ込んでくる。


「確かに速いが……、それでもびっくりするほどではないな」


向かってくる地竜王の迫力はすごい。大型トラックよりも何十倍も大きな体を持った生物が車のような速度で突っ込んでくるのだ。スピードが上がったことにより、その迫力は大きく増していた。

普通の人間なら、いやこのガドの大森林及びその周辺にいる白金級冒険者を筆頭とする強者たちであっても、この突進の前には何もできず潰されるか、もしくはギリギリ躱すのが限界であろう。


それほどの迫力のある突進ではあったが、優斗は迫力にのまれることもなく簡単に躱した。確かにその巨体は脅威だがスピードに関してはこの何倍も速い相手と模擬戦をしてきているので、巨体の迫力にさえ飲まれなければ躱すのはそう難しくなかった。


「まだ終わってはおらんよ」


地竜王の攻撃を右に躱した優斗だったが、その優斗に向かって地竜王の尻尾が向かってくる。


「やばっ!」


優斗はその尻尾攻撃をギリギリでかわし切る。しかし態勢が崩れてしまい、空中でかなり不格好な状態になってしまった。


「これも躱すとはな」


地竜王はいつの間にか優斗に顔を向けている。彼は優斗に突進を躱されて減速した後、体ごと回転させることで優斗のほうを向くことに成功したのだ。

つまりまず突進を行い、それが躱されれば体を回転させ尻尾での攻撃を行う。そしてそれすらも躱されたとしても、今度は先ほど体を回転させたことで、近い距離で優斗と向かい合うことができるという三段構えだったのだ。


「さんざんやられたんだ。お主も我の攻撃を食らわねばな」


地竜王はスキルを乗せた状態で前足の爪を優斗に向かって思いっきり振る。最初〈龍雷撃ドラゴンライトニング〉に対して振るったときはスキルを使っていなかった。つまり優斗の魔法を苦も無く正面から打ち破れる攻撃を、さらにスキルを乗せた状態で振るったのだ。


しかも優斗は物理防御よりも魔法防御力のほうが高い。この爪を食らえば、優斗でも少なくないダメージを負うことは明白であった。


「〈転移!《テレポーテーション》〉」


態勢を崩しているためうまく躱すことができないと悟った優斗は、とっさに転移魔法を使うことでなんとか攻撃をかわす。

転移魔法を使いこの空間から出ることはかなわなかったが、その代わりこの空間内の移動に対しては転移魔法が有効であった。先ほど地竜王が凍っている間にこの空間内でなら転移魔法が使えるかどうかも確認しておいた優斗は、万が一の時はいつでもこれで躱せるように準備していたのだった。


「助かった!」


優斗は大きく後方に転移し、地竜王との距離を確保することに成功した……かに見えたのだが……


「〈転移テレポーテーション〉」


地竜王が同じく転移魔法を使い、開いていた優斗との距離を一気に縮める。地竜王は現在〈感覚強化センサーブースト〉によって、ただでさえ鋭いドラゴンの感覚をさらに鋭くするよう強化しているので、彼には優斗が転移魔法を使った瞬間優斗がどこに転移するのか探さずとも理解することができた。


そのため優斗が転移魔法を使ったことがわかった段階で自分も転移魔法を使う準備に入り、優斗が距離をとって地竜王の姿を確認した一秒後には、自身も転移魔法を使い優斗との距離を縮めることができたのだった。


「もう一度だ」

「くっ!」


地竜王はもう一度同じ攻撃を優斗に仕掛けてくる。躱すことも転移魔法を使う時間もないと悟った優斗は、防御壁を出して爪の少しでも勢いを殺し、また攻撃が来るとわかった段階で〈飛行フライ〉を解除しておくことでなるべくダメージを和らげようとした。


「ぐはっ!!」


優斗は地面に思いっきり体をたたきつけられる。おそらく優斗の行った対処は適切だっただろう。しかしそれである程度衝撃を抑えられたとしても、地竜王の攻撃によるダメージは小さくないものだった。


爪による攻撃とそれによって地面に叩きつけられると言う、常人なら一瞬でつぶれてしまうような衝撃を受けた優斗は、そのダメージにより口から血を吐いてしまう。前世では味わったことのないような痛みではあったが、この体に生まれ変わったことやNPCたちとの戦闘訓練でこれ以上の攻撃を受けたこともあった優斗は、痛みに耐えすぐ地竜王の姿を探す。


「あれは……」


地竜王が大きく口を開けている。そしてそこに集まっているとてつもないエネルギーを見れば、少しでもドラゴンのことを知っている者なら何をしようとしているのか誰だってわかる。


「ブレスか!?」


ブレスはどのドラゴンも持っている己の切り札であり、その威力はドラゴンの成長とともに強力になっていく。それが竜王の放つものともなれば、その威力は強大なものであるに違いない。


さらに最悪なのが、地竜王がブレスを放つためにエネルギーをチャージしていることだ。当然溜めて撃てば撃つほどブレスは強力になる。

優斗もおとなしくあれを食らうわけにはいかないので、当然何とかして躱そうと試みる。


「転移!《テレポーテーション》〉」


やはり逃げるために有効なのは転移魔法だ。さっきはすぐ追ってくるように転移魔法を使われることで対抗されたが、優斗の知識ではブレスをチャージしながら転移魔法を使えないはずである。もちろん地竜王がそれを可能としている個体の可能性はあるが、それでもおとなしくブレスを食らうよりはましだと思い実行に移すのだが……


「転移が阻害されている!!」


先ほどまでは使えたはずの転移魔法が今では発動しなくなっている。地竜王が空間のルールを書き換えたのか単純にスキルによって発動を阻止しているのか知らないが、残念なことに転移魔法が発動しないことは動かぬ事実であった。


「なら〈飛行フライ〉〉か肉体強化魔法で逃げ……」


転移魔法が使えないなら別の手段で逃げようとした優斗だったが、よく見ると自分の半径五メートルが土の壁によって囲まれていることを知る。その壁もかなりの高さをもつ壁であり、これを超えるには〈飛行フライ〉を使ったとしても相応の時間がかかることがわかる。


つまり地竜王は転移魔法を封じた上に壁で取り囲むことによって逃げるのに時間がかかるようにし、その上でブレスを放ち優斗に確実に当てようとしていることが分かった。


「それならこうするしかないじゃないか」


逃げることを諦めた優斗は時間が許す限りの防御魔法を使い対抗しようとするが、それを許してくれる地竜王ではなかった。


「終わりだ!」


ブレスのチャージが終わった地竜王は、優斗に向けて極太のブレスを放つ。防御魔法を一つしか追加で使えなかった優斗は、せめてもの抵抗と言うことでしゃがんで体を小さくしブレスに耐えようとした。



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