竜の里 21
「……あれか?」
地竜王はドラゴンの優れた感覚を使うことで、不可視化している優斗の居場所が何となくわかった。とは言えわかるのはあくまでぼんやりとそこにいるんじゃないかとわかるだけであり、これから戦闘を再開するには少し物足りなかった。
「〈感覚強化〉」
地竜王はただでさえ優れているドラゴンの感覚をさらに強化するスキルを使い、不可視化している優斗がどこにいるか鮮明にわかるようになった。
そしてその強化された感覚によって、優斗が強力な魔法を放とうとしていることも感じ取れた。
「やらせん!」
体力と防御力に絶対の自信を持つ地竜王だが、優斗がこれから放とうとしている魔法はその自分すらも脅かすようなものだと、その優れた感覚、そして本能が訴えかけてきた。当然その魔法への対策をしたいのだが、いかんせんその魔法がどんな魔法かはわからない。強力な魔法であることはわかるのだが、さすがにそれがどんな魔法かまでは発動するまでわからない。
ましてや地竜王の体は巨大であり、空を飛べることを加味してもその機動力はあまり高くないため、距離があるとはいえ優斗の魔法をかわせる可能性は低い。
躱せる可能性が低いとはいえ、もちろんそのまま甘んじて受けていいほどの威力の魔法ではない。そこで地竜王は、優斗めがけて口から大きな岩を弾丸のように吐き出した。
「気づかれたか!だがそれも計算のうちだ!!」
優斗に向けて一直線に進んでいた岩だが、優斗にたどり着く前に突如現れた防御壁によってその進路が防がれてしまう。岩の衝撃によって防御壁は破壊されたが、それと同時に岩のほうも勢いを失い下に落ちていった。
「魔法を仕込んでいたか!?」
優斗は地竜王が自分を知覚する可能性を、というより不可知化を見破られる可能性が高いと考え、あらかじめ自分と地竜王との直線上に防御壁を作り出す魔法をセットしていたのだ。
地竜王の機動力からして自分の魔法発動を阻止するには遠距離攻撃しかないと読み切った優斗は、地竜王が凍っている間にそのための対策をしておいたのであった。
「正解だ。そしてこの間に俺の魔法は完成した。属性付与竜殺しアンド魔法超強化!〈神滅の牢獄!〉」
優斗が魔法を唱えた瞬間、地竜王の体を大きな球体が包み込む。いきなり体全体を包み込まれた地竜王はどうすることもできず、これから何が来てもいいようにスキルを使い自分の防御力の強化のみを行っていた。
「……くらえ」
優斗が自分の右手を力強く握ると、その動作に呼応するように球体は一気に小さくなろうとし、地竜王の体と球体が接触した瞬間、地竜王は大きな声で非常に苦し気な悲鳴を上げた。