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竜の里 16

「ここが里長のおる場所じゃ。この先に里長が待っておる」


  優斗たちが連れてこられたのは、竜の里の奥にあるという何の変哲もない洞窟の入り口だ。老婆の案内に従い竜の里を歩いている間は、他の竜人やリザードマンに襲われることは一切なく、また話しかけてくる者もいなかった。


  そのためスムーズに洞窟まで来れた優斗たちだったが、むしろスムーズすぎて何らかの罠じゃないかと疑っていた。


「里長は皆と同じ場所ではなくこの洞窟に住んでいるのか?」

「そうではないがの。ここに来るまでに通っては来なかったが、皆の暮らしておる場所には一番大きな建物がある。それが族長の家になるのじゃ。今は少し用事があるため、この洞窟に入っておるのじゃよ」

「だったらその用事とやらが終わった後でいいんじゃないか?この洞窟が里にとってどういう場所かは知らないが、ここは俺たちみたいな部外者が簡単に入ってもいいところなのか?」


  優斗は目の前の洞窟を見てさらに警戒心を強める。竜の里には普通の民家がたくさんあった。おそらく竜人やリザードマンたちが住んでいるものだろうが、普通人と会うとなったら洞窟ではなくその民家で会うだろう。

  仮に優斗たちのことを警戒していたとしても、だからと言って洞窟で会うというのはおかしい。警戒しているのならばなおさら大勢の目がある場所で会えばいいはずだ。もしも優斗たちと里長が会うのを一刻も早く済ませたいと思っていたとしても、それならば里長が洞窟から出てきてから会うのが自然だ。


「構わん。先代里長の儂が言うんじゃから大丈夫じゃ」

「そうか……」


  優斗は洞窟を見てより一層警戒心を強めた。なぜわざわざ洞窟で行うのか、その意図をいまいちつかみきれずにいたからだ。


「それでは行くぞ」


  老婆が洞窟の中へと促すが、優斗は全く行く気になれなかった。本当ならここで一度帰って考えたいところだったし、そもそも洞窟の中ではなく里長の住んでいるという家でやりたいというのが本音だ。竜の里とのコンタクトは一応取れたので、優斗としてはそこまで焦る必要もない。


  できることならいったん断ってこれまでに得た情報をもう一度精査しなおしてから、もう一度竜の里に出向き今度は里長の家で会談をしたかったのだが、ここで引き返すデメリットを考えるとそれを選択することも難しい。


  先代里長によって洞窟の手前まで案内されているのだ。ここで断れば彼女のメンツを潰すことになり、そうなればこれからの関係性にも影響が出てくる可能性は高い。自分たちの姿が竜の里の住人たちに見られていなかったのならともかく、優斗たちが彼女に案内されているところはたくさんの住人が見ていた。そんな中で引き返してしまえば、間違いなくいい印象は持たれないだろう。


「どうしたのじゃ?遠慮などせんでもよいぞ」


  老婆はなかなか足を踏み出さない優斗たちに怪訝な声で自分についてくるよう促す。


「……食い破るしかないか」


  仮にこれが竜の里の仕掛けた罠だろうが、あらゆる手を使いその罠を食い破る。それが無理でも全員を連れて逃げる。もしもそれすら無理な状況に陥ったのならば、ここにいるダンジョンモンスターでもNPCでも関係なくすべてを犠牲にして、ダンジョンマスターである自分だけは逃げ切ってダンジョンに帰る。


  もちろん優斗だってそんなことはしたとはまったく思っていない。だが命の価値というのは不平等だ。この場において最も命の価値が高いのはダンジョンマスターである優斗であり、またその強さや身に着けているアイテムも一番価値がある。


  最低でも優斗だけはどんな手を使っても逃がす。これは優斗だけでなくここにいる者たち全員の共通認識であり、もし万が一があれば自分の命を犠牲にしてでも優斗を逃がそうと全員が思っていた。



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