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情報

「彼らから情報を集めましたよ。ご主人様への恐怖もあってか、想定よりもかなり早く済みました」

「だね。僕の薬も最小限で済んだし、一応節約にはなったかな。でも、できるならもう少し彼らでいろいろ実験してみたかったけどね」

「二人とも、任せっぱなしにして悪かったな」


  男たちから情報を引き出したのはエリアスとシルヴィアの二人だ。エリアスは自分の作った薬を使って情報を引き出すのと、その薬の性能テストを行った。

  シルヴィアは魅了系の魔法が使えるうえ、自分の眷族にすることで男たちを自分に絶対服従のヴァンパイアにすることができる。ヴァンパイア化した場合、劣等レッサーヴァンパイアになって知能も低くなるため、ヴァンパイア化した者たちから十分な情報を得られない可能性はある。

 

  しかしもしもヴァンパイア化した者たちからもちゃんと情報を引き出せるなら、これ以降捕虜から情報を引き出す時は全部ヴァンパイア化させることになるかもしれない。シルヴィアは〈魅了チャーム〉による情報収集とヴァンパイア化の実験のために男たちを尋問しに行ったのだ。


「まああいつらはエリアスにやるよ。ヴァンパイアにしたものについてはシルヴィアと相談して決めてほしいが、それ以外のエリアスが尋問したものについては任せるよ。どうせほかにあいつらを欲しいやつもいなさそうだし」

「ほんとにいいの!」


  エリアスがうれしそうな顔をする。

  彼女にとって実験体と言うのは、たくさんの種類と数あればあるほどうれしいのである。


「まあいいよ。情報を引き出した後のあいつらの使い道はDPにすることくらいだろうが、幸いDPは足りている。

  もちろんDPはどれだけあっても困らないからたくさんあるに越したことはないけど、エリアスも実験体は欲しいだろうからあいつらはエリアスにあげるよ」

「優斗ありがとう!」


  エリアスは様々なものを作るが、それにどれくらい効果があるのかという実験を十分にはできていなかった。その中でも特にできていなかったのが人体実験だ。まずダンジョンにいる優斗とNPCたち、そしてアコを被検体にする実験は優斗によって当然禁止されている。

 

  そしてダンジョンモンスターたちはDPさえあればいくらでも生まれてくる存在であるとはいえ、わざわざ召喚しておいて実験体、それもマッドサイエンティストであるエリアスの実験体として使うというのはあまり気が進まない。

  そのため、エリアスは十分な数の実験体を持っていなかったのだ。エリアスは優斗に禁止されたり嫌がられたりさえしなければ、自分の研究のためにどんな残酷なことでもやる。

  エリアスは、あの男たちのような気兼ねなく実験体にできる者たちを求めていたのだ。幸いにも男たちは優斗の怒りを買っていた。エリアスはあの男たちなら自分の実験に使えると期待していたのだ。


  ダンジョンコアでは人間を出すことができなかった。そして、森を探索しているときも人間を発見することはできなかった。そのため、今まで人間を使っての実験をすることができなかったのである。


「(しかし同じ人間が実験体になると言うのに、そのことに関して何も感じないな。

  彼らがあくまで異世界の人間だからか?それとも俺の種族がこの世界に来て人間でなくなったから?もしくはダンジョンマスターになった影響か?はたまた彼らに対してまだ怒りを覚えているからか?どれが当てはまるのかはわからないが、彼らに対しては全然同情を覚えないな)」


  前世なら人間が実験体になると言われれば必ず嫌悪感を覚えていたはずだ。それがどんな極悪人でああっても、絶対に多少の同情心はあったはずである。だが、今は彼らに対してそれをまるで感じない。優斗はそんな自分が少し気持ち悪く感じた。


「それでさっそく情報を教えてくれないか。二人の表情から見るに、結構いい成果が出たんじゃないのか?」

「ふふふ。まあその通りだよ。あいつらからは結構いい情報を得られたね」

「はい。それと、早めに対応しなくてはいけないかもしれない情報もありましたよ」


  エリアスとシルヴィアは、優斗に促されて捕虜たちから得た様々な情報を話していった。







「そりゃまた厄介なことになったな。ユズとフレイヤが聞いたことはやっぱり間違いじゃなかったわけだ。この情報になにか裏付けがあるわけでもなく、あくまでさっき男たちから聞いた話だけだが、これからいろいろと忙しくなりそうだな」

「そうだね。これは早急に対応するべき案件だと思うよ。少なくともこれに関することは確かめるべきだろうね」


  男たちはこの森の西側にあるという、ブルムンド王国から来た冒険者たちのようだ。男たちは冒険者ギルド経由でこの森の調査を依頼されたらしく、彼ら以外にも複数組の冒険者たちが同じ内容の依頼を受けているようだ。

 

  この森の調査依頼自体はよくあることだ。この森(巷ではガドの大森林と呼ばれている)は、多数の動物やモンスターが生息している。動物くらいなら村にいる狩人だけでもなんとかなるが、さすがに多様な能力を持つモンスターを普通の村人が何とかするのは難しすぎる。

  しかし、時折この森からモンスターが出てきて近くの村や街を襲うことがあるため、城壁や兵士がいて守ってくれる街ならともかく、そんなものがない村にとっては死活問題である。そのため、村が調査依頼を出すこともある。


  それに、この森にはまだ誰も知らないような薬草などが眠っている可能性だって大いにあるのだ。そういった事情から森の調査を依頼されることはよくあるのだが、今回の調査依頼はそれらとは少し違うらしい。


  まず普段なら、森の調査は街や村に近い比較的浅いところを調べるものだ。深くまで行くとそれ相応の危険があるうえに、森深くにいるモンスターがわざわざ森から出てくることはほとんどない。それに強いモンスターであればあるほど、餌が豊富な大森林からわざわざ出てくることはないのだ。


  また、薬草の調査の時はその道の専門家を護衛しながらになることが多い。既に見つかっている薬草採集の場合とは違い、新種の調査の場合は専門知識のない冒険者だけじゃ難しい。依頼者が冒険者だけ送り出すことはないし、そもそも彼らは今回薬草採集を依頼されていない。


  彼らに依頼されたのは森の地形やモンスターたちの数に強さ、それらのなわばりの確認、そして人が通れるような道があるかどうかの調査などだ。薬草などはガン無視で森の地形とモンスターの強さや数、生息域の調査と言うのは、普段行われている森の調査とは大きく違うところである。

 

  さらに、今回動員されている冒険者パーティーは十五組近くいると言う。いくら広い大森林の調査とはいえ、さすがにその数は多すぎる。

  それだけの数の冒険者を雇うとなれば、当然依頼者はそれ相応の金銭を用意せねばならない。そして男たちのようにこんな森の奥まで来るというのもおかしいのである。

  男たちは独断ではなく、依頼内容の範囲に従ってここまで来たのだ。つまり、依頼者はここまで調査範囲に入れていたということになるのだ。


  男たちは冒険者ギルドからの依頼とはいえ、この依頼内容に少し不信感を抱き、いろいろと事前に調べていたらしい。結局調べてもよくわからなかったそうだが、それでも護衛依頼とかならともかく、さすがに森の調査依頼ではめられるようなことはないだろうと判断して、今回の依頼を受けたそうである。


「今の話を聞いて、このままずっとダンジョンに籠ってばかりいるわけにもいかなくなったな。ダンジョンとしてはこの森を調査されたくはないが、敵のことをよく知らない以上それらを防いだりその狙いを読むというのは難しいな。

  こうなったらブルムンド王国に潜入して情報を得たほうが賢明か?ついでにこの世界のこともいろいろと分かりそうだし、一石二鳥とも言えるな」


  優斗は独り言を言いながら自分の考えをまとめていく。しかし、それはシルヴィアによって一度中断された。


「慎重かと思ったら今度はせっかちですか?わたくしたちの得た情報はこれだけではないんですけど」


  シルヴィアが優斗をジト目で見る。


「そうだった。これに関する結論を出すのは、二人が得た情報を全部聞いた後でも遅くないよな」


  その後もシルヴィアとエリアスが、男たちから得た情報を優斗に話していった。





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