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尋問

「おーおーおー、思ったよりずっと元気そうで何よりだ。まあ短い間の付き合いだろうがよろしく頼むよ。俺のことは仮面さんでいいぞ」

「僕は仮面君で。いいよ~」

「ならわたくしは仮面ちゃんでいいです」


  男たちのいる牢屋の前には、仮面をかぶった三人とそれらを護衛するかのようにいる数体のモンスターたちが立っていた。


「ふっざけんなっ!変な仮面しやがって、いいから俺たちをここからとっととだせ!今なら特別に謝罪すれば許してやらんでもないぞ!!」


  牢屋にいる男たちが吼える。


「一応この仮面はふざけてるわけじゃないんだがな。それに、よくこんな状況で吠えられるもんだ。ある意味感心したよ」


  優斗は男たちが吼える姿を冷えた目で見ながらも、一応警戒は怠っていなかった。

 

  優斗たちは何もふざけてこの仮面を被っているわけではない。もしかしたら男たちは何かこの世界特有の方法、つまり優斗たちの知らない方法でここから脱出するかもしれないからだ。

  万が一男たちがここから逃げた場合、彼らに自分たちの顔を知られれば面倒なことになる。優斗たちはそれを避けるために仮面をしているのだ。

 

  当然逃げられなように仕掛けをいくつも施してあるが、それでも未知の手段というのには油断できなかったのである。


「仮面なんてどうでもいい!いいから俺たちを開放しろ!もし開放しなければ痛い目を見るぞ」

「へー、いったいどんな痛い目を見るんだい?」


  今のこの状況で男たちに何かできる可能性はほとんど皆無である。

  そもそもこの状況どうにかできるなら優斗たちが来る前にすでにそうしているはずだし、彼らの持っていた装備やアイテムはすでに優斗たちが回収済みだ。ここから彼らが何かできる可能性は限りなく低い。


  しかし優斗は自分が知らない何かがあるかもしれないという警戒から、意に介していない、それどころか挑発するような口調で問いかけながらも、目の前の男たちの一挙手一投足を見逃さないように鋭く目を光らせていた。


「俺たちは冒険者だ!しかも、俺たちは冒険者ギルド全体で見ても高ランクの冒険者だぞ!それをこんな目にあわせたら、俺たちの所属する冒険者ギルドが黙ってないぞ!!」

「そういう痛い目か……」


  男たちによると、自分たちに危害を加えれば所属している冒険者ギルドが黙っちゃいないということだった。

  優斗は彼らの言う痛い目が自分たちの実力でどうにかするというものではないことに安堵し、それから彼らが所属しているという冒険者ギルドとの今後の関係について頭を巡らせていた。


「俺たちをこんな目に合わせたんだ。相応の謝礼をもらわなければ許してやることはできないぞ」

「そうだそうだ。それとも俺たちの奴隷になるか?そうすれば謝罪として受け入れてやるぞ」

「それはいいですね。あなたたちは卑怯な手を使ったとはいえ、私たちを捕らえることができたのですから、全員そこそこの実力はあるのでしょう。ならいい戦力になります」

「これは意外と儲かったかもな」


  男たちは拘束されている立場のくせに、各々好き勝手な要求を伝えてくる。

  おそらくは優斗たちが冒険者ギルドの名前を出した後から黙っていることで、優斗たちが冒険者ギルドの名前に臆したと思ったのだろう。冒険者ギルドは大きな組織だ。貴族や王族ですら冒険者ギルドと対立することはできる限り避ける。彼らは優斗たちが冒険者ギルドとは争いたくはないからどうすればいいか迷っていると考えたのだ。


「おいおい、黙ってないでなんか言えよ。さっきの勢いはどうしたんだ」

「まあお前は見たところモンスターを操れるテイマーみたいな奴だろ。ちゃんと有意義に使ってやるから安心しな」

「そうだぜ。後、もし美人がいたら先に言ってくれよ。そいつを楽しませてもらいたいからな」

「それは同感で……」


  男たちは急にものすごい圧力を感じ、口を開くことができなくなった。ここら一体が非常に重苦しい雰囲気に包まれる。


「今なんて言った?」


  静かだが、それは非常に恐ろしい言葉だった。

  男たちはこれまでの人生で一度も感じたことのない強い圧力に対して恐怖を感じる。拘束されているにもかかわらず震えが止まらない。『カチカチ』と歯がぶつかり合う音がする。その音は瞬く間に伝染し、男たちは歯ぎしりをするか唇を血が出るほど強く噛むかのどちらかをひたすら行っている。


  男たちは冒険者として、数々の強敵と戦ってきた。時にはモンスターだけでなく人間とも戦い、その中には当然自分より強い者もいた。

  自分たちでは勝てないような強いモンスターと戦うことになってしまった時も、自分たちより冒険者としてランクが上で戦っても絶対に勝てないと思わされるような相手と出会った時も、ここまでの恐怖を感じたことは一切なかった。


「なぜしゃべらない?俺の質問に答えられないのか?」

「そっ、それは……」


  男たちはしゃべれない。いや、しゃべることができるはずがない。

  男たちもわかっているのだ。目の前に立つ仮面は圧倒的強者であり、自分たちでは絶対に敵わない存在だということが。

  先ほどまではこの状況を受け入れきれずに暴走していたが、改めて冒険者として彼を見ると本能でも理性でも否定しきれないほどの力を感じていた。


  そもそも今ここで自分たちを殺せば、冒険者ギルドにこのことを知られることはないだろう。向こうは圧倒的に強い存在であり、その上こちらは全員が拘束されていておまけにここがどこなのかもわからない。

  普通に考えて圧倒的に不利なのはどう見ても男たちの側であり、自分たちの生殺与奪権を握っているのは向こうなのだ。

 

  今までは自分たちに都合がいいことを勝手に想像していたが、目の前で圧倒的存在を見せられてようやく現実に引き戻された。彼らにはもはや先ほどまでの勢いはない。彼らはようやく自分たちが置かれている状況をきちんと理解したのであった。


「まあまあ仮面さん、そこまでにしといたほうがいいんじゃないかな?あんまり怯えられすぎたら委縮してしまって情報をとるのが難しくなるからさ」

「仮面さんにこんな面があったなんて意外でした」


  二人の仮面が納めると、仮面さん(みんなわかってると思うけど優斗)からの猛烈なプレッシャーがなくなった。直接それを受けていた男たちは、このままじゃ精神的負荷によって死ぬんじゃないかと思われるほどのきつかったので、それがなくなったことに一安心していた。

 

  もっとも、冷静になったせいで自分たちの絶望的状況をきっちり理解させられてしまったのだが。


「取り乱してすまなかったな。確かに俺がいてはこいつらが委縮して何もしゃべらないかもしれないし、俺は一度席を外したほうがよさそうだな」

「そうだね。尋問は僕らに任せてよ。仮面さんの怖さを知った彼らにはもう僕らに逆らう勇気はないと思うよ」

「ですね。そもそも彼らから情報を得るのはわたくしと仮面君さえいれば十分ですから」

「じゃあそうするか」


  優斗は尋問を二人に任せて自分は別の仕事に取り掛かった。その後は残った二人の能力と男たちの優斗に対する恐怖により、想定よりもずっと簡単に情報が集まった。


 




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