竜の里 4
「生息するモンスターの強さが違うだけで、あくまでも同じガドの大森林ではあるんだよな」
北の環境も他の場所とはほとんど大差がなく、少なくとも表面上は何ら大きな違いを見出すことはできない。優斗の感覚では少し魔力が濃い(魔力の回復スピードがちょっと速くなる)くらいしか違いが感じ取れなかった。
「おっ!モンスター発見」
優斗たちは北の森に生息する(北の森に棲むモンスターは他の森に棲むモンスターたちとは強さが違いすぎるため、比較的簡単に見分けることができる)モンスターを発見する。そのモンスターもおそらく北から逃げてきたくちであると判断した優斗たちは、早速そのモンスターを捕えにかかる。
「拘束系の魔法を使えば結構簡単にいけそうだな」
いくら北の森に棲むモンスターたちが強いとはいえ、さすがに優斗の持つ力と比べると非常に大きな差がある。
実際優斗が拘束系の魔法を使うと、先ほどまで逃げていたはずのモンスターは簡単に動きを止めてしまった。
「さて、聞きたいことがあるんだが……お前は言葉を理解できるか?」
基本的に知能の高いモンスターになればなるほど言語を解することができるようになる。もちろん言語を解せなくても別の方向に知能の高いモンスターもいれば、言語を解することができても優斗の話す言語を解せない場合もあるのだが、ただの動物とは違い言語を解して返答してくる可能性がある以上、優斗はそのモンスターに話しかける。
「……どうやらわからないみたいだな」
北の森に生息するモンスターたちは強さだけでなく賢さも持ち合わせている者が多い(基本的に強いモンスターは賢くもなる傾向がある)が、どうやら目の前のモンスターは少なくとも優斗の話す言語を理解することができない、もしくは理解できていてもあえて理解できないふりをしているかのどちらかのようだ。
「念のため尋問してもいいが……、今ここでそれをするのは時間の無駄だな。こいつはダンジョンに送って尋問して情報をしっかり聞き出した後、配下にせずDPに変換してやればいいか」
優斗は魔法を使いダンジョンにそのモンスターを送る。ダンジョンには尋問及び拷問が得意な者と、様々な相手とコミュニケーションをとることに特化した者がいる。後者については使用している言語が違ったり、そもそも言語を使用していない生物ともコンタクトをとるために、魔法やスキル、種族的特徴や周辺言語の勉強などによって、相手とコミュニケーションをとることに特化させているのだ。
つまり超高度でその上使い勝手もいい通訳であり、外国人とうまく話せなかった経験のある優斗は、ある程度余裕ができ外と接することも多くなった段階でそのモンスターたちを召還して鍛えた。
彼らは言語を解さない相手にもコミュニケーションをとることができる手段を所持しているため、目の前のモンスターから情報を聞き出すには優斗よりも適任であった。
「あれから情報を引き出すのはあいつらに任せて……、俺たちはもっと奥に入って調査すべきだな」
北に行くと奥の方でなんとなく異常が起こっているような気がしないでもない優斗たちは、その言葉にできない違和感を解消するためにも、警戒を怠らないようにしながら奥に進んでいった。