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ルクセンブルクの独立31

一気に三十一話投稿しています。それらは読みましたか?これはその最後なので、できれば前の三十話を読んでからお読みください。

  ビャッコたちが王国軍を破ってからはトントン拍子に話が進んだ。元々ルクセンブルクはブルムンド王国の東端にある地であり、中央からは干渉しずらい。おまけに他国と接しているわけではないので、ルクセンブルクが独立したからと言ってすぐに困る国はブルムンド王国しかない。

  しかも王国は現在隣国との関係が悪く、また獅子王国のように内部での争いがひどい国などはわざわざルクセンブルクについて大きく干渉はしてこない。王国と敵対している公国に至ってはむしろルクセンブルクを応援する始末であり、周辺国家からはそこまで大きな非難声明は出なかった。


  そして何より王国は現在次期国王を決めるレースの真っただ中であり、独立したルクセンブルクに対して強い姿勢を示そうとする貴族は少ない。

  貴族で最大の武力を持つロンバルキア辺境伯が正面から戦って敗れたのだ。他の貴族たちでは太刀打ちできないのは明白であり、強い姿勢を示すことによって対立派閥から「じゃあお前が討伐に行け」と言われることを恐れたのだ。


  ビャッコはモンスターを多数支配下に入れているが、そのことに関する非難も少ない。なぜならビャッコたちはロンバルキア辺境伯との戦争において、自軍に一人の犠牲も出さずに圧勝したのだ。

  それに大陸にはモンスターの国家やモンスターが住民として認められている国家も珍しくない。そういった国を刺激することを避けるため、そして何よりビャッコたちの、とりわけ強大なモンスターであるビャッコの力を自分たちに向けられると厄介だという計算から、モンスターがたくさんいることに関する批判もまた少なかった。


「国を治めるというのも大変だな」


  ビャッコは自分の新しい拠点の一つとなったルクセンブルク邸で、送られてきた報告書に目を通し政務を行う。


  一番忙しい時(新しい支配体制に入るにあたっての法律の制定などといった、新しい土地を支配下におくにあたって必要なことをしなくてはいけなかった時期)はやっと終わったためその時ほどの忙しさはなかったのだが、それでも新しい国を作るということでそのトップに立つのは大変であった。


  今は元ルクセンブルクの支配者でもあるルナを補佐官として任命し、彼女の意見も聞きながら統治を行っていた。


「ですが治安的にはものすごく安全ですよ。私の治めていたころに比べれば、ルクセンブルクの治安の良さは段違いですよ」


  ルクセンブルクの治安は、周辺国家と比べると抜群に優れている。と言うのもルクセンブルクの治安を守っているのはダンジョンモンスターたちであり、その力を知っている住民たちは余計な騒ぎを起こして取り締まられることに恐怖を感じている。

  また街道の警備などもダンジョンモンスター、特に疲労を一切感じないアンデッドやゴーレムなどがずっと行っているので、野盗などもまともに活動ができない。


  そしてもうひとつ大きいのが、冒険者や傭兵などの国家に属しない武装勢力が徐々にルクセンブルクから出ていっていることだ。


  冒険者たちが出ていく理由は三つ、まず一つは国のトップである彼女に刃を向けたこと、そしてモンスターたちがたくさんいる国にいたくないということと、最後にルクセンブルクでは仕事がなくなるであろうという予想の三つからなる。


  ビャッコの保有する戦力は強大だ。そしてビャッコはそれらを治安維持やモンスター討伐など、これまで冒険者が担ってきた仕事にも使っている。

  またこの街の冒険者ギルド自体すでに弱体化している。なぜならビャッコを襲った罪で主要な冒険者たちが捕らえられ、さらに国に牙を剥いたということもありまともに活動ができないのだ。


  結局仕事がなくなりルクセンブルクにもいづらくなった傭兵や冒険者、荒くれ者の多い彼らが少なくなったことで、結果的にルクセンブルクの治安が良くなっているのだ。


「そろそろ冒険者たちを檻から出すか。どうせそのほとんどはこの街から出ていくだろうが、もうそれで構わない。街も徐々に治まってきている。今更暴れられたところで何にもならないだろう」

「ですが……それでいいのですか?奴らは死刑に値する者たちです。いっそのことDPにしてしまえばよいのではないでしょうか?」

「それもいいが……。それよりも『インフィニティーズ』を有効に使いたい。彼らには国内外で冒険者として活躍してもらうことで、情報収集やこの国の知名度及び評判を上げてもらうことを任せることになっている」

「なるほど。そうなっているのなら仕方ないですね」


  ルナはそれだけですぐ納得する。


「ですがそれなら『インフィニティーズ』だけを出せばいのでは?わざわざほかの冒険者を出す必要は……」

「それだとこちらとの関係を怪しまれてしまう。彼女たちにはあくまでこの国とは関係のない冒険者として活動してもらいたいのだ」


  やはり生まれたばかりの国としては、そういった評判に人一倍気を付けなければならない。今は他国の政治状況などもあってこの国に対する批判は少ないが、それでも元々はブルムンド王国の領土だったところを奪ったのだ。自分たちの評判を上げるためにも、名声のある『インフィニティーズ』と言うのは格好の存在だ。


  また彼らに第三者と言う立場を取らせることで、その効果はぐっと上がる。この国に敵対心を持つ者を説得するには、その国に所属する者や利害関係にある者が褒める言葉よりも、名声のある第三者が褒める言葉のほうがよっぽど効果があるのだと考えていた。


「そうだ!この国の国名が決まったから、お前たちはそれを国民に公布してくれ。国家としての形もある程度整ってきたし、そろそろ発表のしどきだろう」

「ルクセンブルクではだめなのですか?」

「だめだな。ルクセンブルクと言う地名はだめじゃないが、ルクセンブルクと言う国名だとルクセンブルク家の色が強すぎる。

  お前に言うのはなんだが、ここはルクセンブルクは新しい支配者による支配を受け、これまでとは違った国になるのだ。そのため絶対に国名は変えねばならないということだ」

「ではどのような名に?」

「それはな……」


  ビャッコは長方形の紙を用意し、そこに手書きで新しい国名の名前を書く。


「この国の名はウエストブルクだ!まあ名前的にはルクセンブルクの要素も入っているし、ここの地名自体はルクセンブルクで構わないがな」

「ウエストブルクですか……」

「ああ。まあ単純にダンジョンの西にある国だったからな。西とルクセンブルクを合わせたらこうなった。

  私も悪くはないと思うから、この国の名前はこれで決定だ」


  新国家ウエストブルク。強力な戦力を有しているこの国の登場によりブルムンド王国がさらに荒れていくことになることを、少しでも考える頭を持つ貴族や商人たちが予測できないはずもなかった。



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