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ルクセンブルクの独立30

  戦争を終え、ビャッコたちは敵兵の回収に入る。死体となった者はダンジョンに連れ帰りDPにして、まだ生きている者たちは拘束してその後の処遇を決める。

  王国軍は万を優に超える人数だからそれなりに時間のかかる作業だったが、ビャッコたちも召喚モンスターなどを投入して人手を増やし、二時間以内にすべての作業を終えることに成功した。


「どれくらい生き残った?」

「ビャッコ様のおっしゃられた通り、捕虜となっていたルクセンブルク軍の生き残りはすべて殺しました。また王国軍で生かしてあるのは第三王子と辺境伯、そしてウルージ子爵の三人と……後は適当な民兵を百人ほど生かしてあります」

「それでいい。生き残りはルクセンブルクで隔離しておけ。特に貴族たちは身代金なりで大いに使い道があるみたいだからな」


  ビャッコはあらかじめ王国軍を全滅させるのではなく、ある程度の数は生かしておくように指示を出していた。特にバルドと辺境伯、そしてウルージ子爵は絶対であり、それ以外は特に生かす人間についての指定はしていなかったため、他の貴族たちは運悪く生き残ることができなかった。


「ビャッコ様、なぜ貴族たちを全員生かさなかったのでしょうか?どうせ賠償金をとるのなら、その数は多いほどいいはずです。数が多いとはいえあの程度の軍勢相手なら、貴族たちだけを生かして捕らえることくらいわけなかったと思うのですが」

「貴族たちの間にも貧富の差は大きい。それに今後のことを考えたら、全員生かすのは不利益だという判断になったのだ。

  そもそも今お金には困っていないしな。もちろん金はあればあるだけいいが、それでも賠償金はおまけみたいなもんだ。大事なのは奴らだけが生きて帰ることであり、それによってこちらが受ける利益もある。究極的に言うと、賠償金を払われなくてもいいから奴らだけは王国に返す必要があるんだ」


  ビャッコは多数のモンスターと捕虜を引き連れて、堂々とした態度で街に入っていく。ビャッコたちが王国軍相手に圧勝していた光景を遠目から見ていた住民たちは、誰も彼らに逆らうことができない。


  ビャッコたちがルクセンブルク邸に向かうのを恐怖と畏怖をもって眺めていた住民たちは、これから自分たちの身に何が起こるのかという不安をさらに強くした。








「やっと気が付いたか」


  ウルージが目を覚ますと、目の前には彼の知る限り今最も怖い女が立っていた。自分たち王国軍を遊びながら蹂躙していったモンスターたち、そのモンスターたちを束ねているビャッコは、今の彼にとって国王や三大貴族を凌ぐ存在であった


「わ……わたくしめに……わたくしめ如きに何か御用がございますでしょうか?」


  ウルージは自分の頭を埋めるくらいの勢いで、地面にその頭をこすりつける。元々小心者の彼だ。相手が何をしてこようがそれに対抗する術をまるで持たない状況では、貴族らしい態度なんてとっていられるわけがなかった。


「お前にやってもらいたい仕事は簡単だ。東にいる貴族たち、そこを攻略するにはお前がいるといろいろ便利だ。貴族という立場を使い、我々の手足として働いてもらうぞ」

「はっ!かしこまりました!!」


  ウルージに選択の余地などない。どの道断ったところで、ウルージには逃げ場がない。それに断ってビャッコを不快にさせたら自分がどうなるか、そう考えるとますますこの提案には逆らうことができない。


  これから領地に帰るにあたり懸念すべきことは多々あるが、それでも自分が生きるためには目の前にいるビャッコに従うしかない。それどころかむしろビャッコという巨大な存在に守られるということは、これからのことを考えると安全面で言うと最も安心なことである。そう考えるとビャッコに従うことは、今の彼にとっては最良であるとも言えた。


「第三王子や辺境伯は賠償金が支払われ次第すぐに返すし、捕らえた民兵たちは自分の足で動けるようになればお前の解放と同時に解放するつもりだ。

  お前は民兵たちのリーダーとして途中まで同行させるから、その後自分の領地についたら離脱してまた子爵として領内に入れ」

「はっ!」

「それと賠償金だが、王侯貴族の中でお前からだけ取らないというのも変だ。だからお前の家から賠償金が支払われればいいのだが……その目途はつくか?」


  ウルージは不安そうな顔をする。


「私には跡取り息子がいます。その息子が払ってくれればいいのですが……」

「なるほど……。子爵の座が早く欲しくて見捨てる可能性があるか」


  ビャッコは少し考える。もしそうなったら……ここにいるウルージを見捨てて別のプランに切り替えるか、もしくは何らかの裏工作をして賠償金を早く出させるかだ。


「その時はまたこっちで考える。念のため言っておくが、お前が私たちと内通することは誰にも教えるんじゃないぞ。それは当然家族や腹心たちにもだ。もしお前が他人に話したとわかったときは……どうなるかわかっているな?」

「もっ、もちろんでございます。このことは墓場まで持っていく所存です!!」


  この後ウルージの賠償金は滞りなく支払われた(ウルージや辺境伯、そしてバルドの賠償金は相場よりもかなり低い金額であったため、三人とも比較的早い期間のうちに全額支払われた)。それによって自領に戻ることができたウルージは早速ビャッコのよこした者たちと連絡を取り合い、ビャッコの命令を実行するために動き出した。


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