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ルクセンブルクの独立22

「ここがどこだと思っている!?貴様ら、一体何をしに来たのだ!?」


  彼はルクセンブルク邸の門番を務める屈強な男だ。武官たちも本来なら戦争に連れていきたいところであったが、彼とその同僚にはルクセンブルク家の門番という非常に重要な役目があるため出陣していない。


  彼のように本来なら戦争に召集されるはずの者でも、その者の仕事や財産などによっては徴兵を免除されるケースが多々ある。

  これはルクセンブルクだけで行われていることではなく、王国全体でそういう特例は多々見受けられるのだ。


  例えば商人などは、ある程度の税を納めることで徴兵を免れることができる。つまり、金を持っている者は戦争に行かなくてもよいのだ。

  戦争をするには当然たくさんお金がかかるので、徴兵する側としても対して戦力にならない一人民兵を徴兵しない代わりに金が手に入るとなれば、当然そっちのほうがおいしい。


  全員が金を払って民兵が一人も集まらなければそれはそれで困るが、当然免除する税は高く設定されているので、ある程度の規模を持つ商人か大地主ぐらいしか払うことができない。


  そして特殊な例として、冒険者や傭兵などの武装集団も徴兵することができない。これには二つ理由があり、まず一つは彼らが様々な土地を転々としていることだ。

  特に傭兵にその性質があるのだが、彼らは一か所に住まず仕事、つまり戦争などが行われそうな地に赴くので、そもそも自分がその国の国民であると言う意識すら希薄な者も多いのだ。


  そして彼らは両方とも、その武力を商売道具にしている。自分の商売道具である武力を徴兵したのだからただで使えと言われては、当然彼らだって反抗する。

  特に冒険者には冒険者ギルドと言う強力な後ろ盾があり、ギルド側も金で雇われて戦争に参加することは認めるが、徴兵などによって無理やり使われることには強い難色を示す。


  ギルドの力が弱く国の命令に全然逆らえないようなところだと徴兵されてしまうことはあるが、少なくとも王国では貴族や国王によって冒険者が無理やり徴兵されるということが行われることはなかった。


「いいからどいてください!我々は、ここの主に用があるんです!!」

「今日は来客予定がなかったはずだが?それにこれだけの人数が用があるとはどういうことだ?こう言っては何だが、さすがに全員と話すことはできないと思うぞ」

「いや何のんきなこと言ってんすか先輩。こんなの、明らかに普通じゃないでしょ。あの人たちの目を見てください。なんだかのっぴきならない事態のようですよ」


  後輩の男にそう指摘されると、確かに彼の言うように目の前の者たちの目が何やら危険な色を帯びているように見える。


  人数もそうだが、さすがにこれほど怪しい者たちを通すわけにはいかなかった。


「一応主に連絡は取る。それでだめと言われたら……帰ってもらえるかな?」

「それはできない。彼女が応じるまで、我々がここから去ることはあり得ない」

「やっぱりそうだよな。まいったな、わかっているとは思うが、ここはこの地のトップである、ルナ・フォン・ルクセンブルク様のお屋敷だ。

  門番として無理やり通ろうとするものをそのまま通すわけにはいかないし、何より領主の屋敷に無理やり入れば、平民の家に無断で侵入するよりもさらに重い罰が下されることになる。

  悪いことは言わないから、ここで退いてもらえないか?今退いてもらえるなら俺たちも何もしないし、ここであったことは忘れるから。な?」


  門番たちも仕事とはいえ、ここにいる住民たちを害するのは気乗りしない。

  それにこれだけの住民を罰するとなれば、かなり大変な作業になる。それに今回の出来事にかかわった者とかかわっていない者をわざわざ選別するのも大変だ。


  住民たちを罰するのは門番の仕事ではないとはいえ、やはり同じ住民であることや罰する者の気持ちや大変さを考えた結果、住民たちにはできるだけ穏便に帰ってほしかった。


「何度も言わせないでくれ。それは不可能だ。我々は目的を達成するまで、決して退くことはない」

「なあ、頼むから穏便に帰ってくれないか?あんまりこういうことは言いたくないが、こんなことしても後で重い罰が下るだけで、結局何もいいことなんかないぞ」


  門番の男は懇願するように警告する。これ以上引き下がらないようなら、職務上彼も実力行使をするしかないのだ。


「先輩、ルナ様に返事をもらってきました」

「よりによってこのタイミングか……。それで、なんとおっしゃっていた?」

「やっぱり彼らを通すことはできないようです。人数が多いとかではなく、一人も入れてはならないようです」


  後輩からの報告を聞いても、やっぱりそうなったかという思いしか出てこない。


「そういうわけだ。さすがにこれ以上は我々も見過ごせない。早く帰ってもらえなければ、我々も実力行使に出ることになるぞ」

「そうですか……。それは非常に残念です」

「俺も残念だよ。悪いな、門番として、一般人相手だろうが実力行使をさせてもらうよ」


  門番たちは無理やりにでも住民たちを門から遠ざけようとする。彼らは門番に選ばれているだけあって、その力は住民たちが太刀打ちできるような次元ではなかった。


「じゃあさよならだ」


  門番たちが住民に触れようとしたその瞬間、後ろから何人もの人間が出てきて、門番から住民たちを守った。


「お前たちなんだ?かなり武装しているようだが……普通の住民じゃないな?」

「俺たちはルクセンブルクの住民さ。ただし冒険者という職についていて、戦闘に関しては多少の心得があるだけさ」

「冒険者だと!?」


  門番たちは冒険者の突然の登場に、信じられないと言った顔をする。彼らの持っている知識からすると冒険者こんなことに絡んでくるのはまずあり得ないことであり、目の前の者たちが本当に冒険者なのかどうか真剣に観察した。


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