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ルクセンブルクの独立19

「念のため聞いておこう、貴様たちはルクセンブルクから遣わされてきた者たちか?」


  辺境伯が自分の目の前にいる集団に問いかける。そこには人間と獣人が男女問わず、どちらの種族も同じぐらいの数ずつ合計で約百人近くいた。


「その答えについては否だ!しかし我々が、ルクセンブルクを討伐しに来たお前たちの敵であることには変わりないとだけ言っておこう」

「なるほど。詳しいことは知らんが、つまりここで殺し合いをするということでいいのだな?」

「そうだ!ただし我々の大将及び主力は、まだここに到着していない。それまで少しの間待ってはもらえないか?」

「まだ来てないのか?なんだかわからんが、三十分程度なら待ってやっても構わないぞ」


  辺境伯は首をかしげながらそう告げる。

  主力をどこかに潜ませていて、その主力部隊が王国軍の隙を窺っているというなら理解できる。だが彼らはそれをするどころか、自分たちに主力が来るまで待ってくれと言い放ったのだ。

  もちろんそれが何らかのフェイクであり、王国軍を待たせることで何らかの準備を整えると言うこともあり得るのだが、それだとさすがに段取りが悪すぎるし、そんな変な嘘をつくよりは会話を頑張って引き延ばしたほうが怪しまれずに済む可能性が高い。


  実際王国軍は捕虜を連れてきたこともあって、ここまでくるのに結構な時間を消費している。それにもかかわらず、まだ満足な準備ができていないということがおかしいと感じた。


「!?大丈夫だ。もう準備ができたらしい」

「全然待たなかったのだが……。もういいのか?辺りに人の姿は見えないのだが……」


  辺境伯は兵に命令を下し、周辺の警戒を厳重にさせる。正面に敵の姿が見えない以上、後方や側面から敵が出てくるのではないかと考えたのだ。


「ああ大丈夫ですよ。あの方々は正面から出ていらっしゃいますから」

「そう言われてもいないで……はない……」


  辺境伯は、いや彼の部下たちも含め王国軍全員が、目の前の光景を見て言葉を失う。


「な……、な!」

「もしかして……なんだあれはとおっしゃっていますか?」

『ブンブン』


  言葉がうまく出てこなかったため、辺境伯はまさに首がとれるんじゃないかという勢いで目の前の男の問いを肯定する。


「驚かれるのもわかりますよ。私も初めて見たときは、驚きのあまりあなたと同じような間抜け面をさらしてしまいましたから。

  まああなた方の場合は二重の意味で驚いていらっしゃるでしょうから、そういう意味では当時の私の比ではないかもしれませんね」


  彼らが驚くのも無理はない。なぜならいきなり大きく重厚な扉が現れたかと思うと、それが開きそこから様々なモンスターや亜人が次々と出てくるのだ。


  そんな扉の話は誰も聞いたことはないし、何よりこれから出てきた者たちと戦わなければいけないと悟り、非常に強い驚きと不安を感じていた。


『ザッ!』

「!?」


  急にこれまで普通に立っていた人間と獣人、そして扉から出てきた者たちが跪く。そしてその跪いた先にある扉から、ブルムンド王国の誇る玉座、それよりもさらに何段か豪華な椅子に腰かけた女が現れる。


  人間たちの一部が地面に絨毯を引き、椅子ごと女を運んできた者たちがその絨毯の上に椅子を載せる。よく見ると女の衣装はその椅子にも負けぬほど豪華なものであり、またその容姿もそれらに負けぬほど整ったものであった。


「ようこそブルムンド王国の皆さん。いや、ロンバルキア辺境伯とその派閥の皆さんといったほうが正しいかな?」


  女が問いかけるが、誰もその問いに答えることができない。王国軍の面々は驚きのあまり固まってしまい、誰もその問いに答えることができなかったのだ。


「問いに答えぬとは……、御しがたい愚か者たちですな。ここで斬ってしんぜようか」


  女の問いに誰も答えなかったことで、彼女の部下たちは不快感をあらわにする。厳密には答えなかったのではなく答えられなかったのだが、それがわかっていても女の問いに答えないという行為は、彼らにとって到底許せるものではなかった。


「ど……、どちらでも構わない。貴様の好きに呼べばいい」


  さすがと言うべきか、いち早く我を取り戻した辺境伯が詰まりながらも問いに答える。


「なるほど。ではロンバルキア辺境伯、少し待たせたようだが、早速開戦と行こうじゃないか」

「そっ、それは!」

「ああ、安心してくれたまえ。五分程度とはいえ、我々のために君たちは待ってくれたのだ。こちらもそれに倣い君たちの心の準備ができるまでの時間、そうだなぁ……ざっと三十分ほど待ってあげようではないか。

  どうだ?これほどの譲歩はなかなかあるまい。なんせ混乱している今のうちに攻撃したほうが、よっぽど楽に勝てるのだからな」


  女は自分たちが負けることはあり得ないという態度で、気楽に王国軍に時間を与える。王国軍も突如現れた異様な軍団に嫌な予感がしたがここで逃げるわけにもいかず、与えられた時間を使い必死に陣形を整えてから兵たちを鼓舞し、それらをもって戦う準備を終えた。



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