ルクセンブルクの独立13
「ルナ・フォン・ルクセンブルクに次ぐ、貴殿たちルクセンブルク家は代々ブルムンド王国へ忠誠を誓うことで、歴代の陛下からルクセンブルクを統治する権限を与えられていたはずである。それにもかかわらず大恩ある王国からの独立を宣言し、いまだルクセンブルクを支配しているのは甚だ道理違いである!
貴殿の行為はただの裏切り行為そのものであり、貴殿がルクセンブルクを支配する正当性もなければ、今のように我々王国軍に刃を向けることも本来おかしいことである。
もし貴殿に少しでも王国民として、そして王国貴族としての矜持が残っているというのであれば、今すぐ我々に投降し、おとなしく裁きを受けるべきである!!
もしも貴殿がおとなしく裁きを受けるというのなら、我々王国軍はルクセンブルクへの手出しをせず、その民たちの安寧を犯すことはしないと約束しよう」
王国軍による最終勧告が終わる。ルクセンブルク側がそれを聞いて少しざわざわしている様子が見えたので、何か返答があるのかと王国軍は攻めるのをやめ少し様子を見た。
「ようやく出てきたか」
ルクセンブルク軍から、一人の武装した男性が出てくる。それがルナ本人でないことに不審はない。王国側も王子や辺境伯でなく、それよりもいくらか身分が劣る貴族を出しているのだ。
そのためルクセンブルク側が同じように、軍の大将よりも身分が下の者を出してきてもおかしくはなかった。いや、むしろそうせずに、直接本人が出てくるほうが不審であった。
「先ほどの勧告だが、我々には断る以外の選択肢はない!我々の支配者はブルムンド王国ではなくルクセンブルク家だ。我らはルクセンブルク家の兵であるという誇りにかけて、相手が王国軍であろうとも最後まで戦い抜くことを誓う!!」
「あいわかった。では交渉決裂により、これからどちらかが降伏するまで戦い続けようではないか!!」
前に出ていた二人が自軍の中に組み込まれたことによって、この戦いの火蓋が切って落とされた。これからは言葉ではなく武力で語る時間であり、お互いの兵たちに緩んだ顔の者はいない。
いくら王国軍側が優勢であったとしても、戦に百パーセント勝てるという保証はない。そして仮に自分の所属している方の軍が勝とうが、それで自分が死んでしまったら元も子もない。
両軍の力の差が圧倒的に、それこそ大人と赤ちゃんくらい離れていないと、自軍の被害ゼロなんてことはあり得ないのだ。
戦力差から見て劣勢であるルクセンブルク軍はもちろん、王国軍、とりわけ最前線に立たされている民兵たちには一切の余裕はない。
最前線に立たされているのは、東の貴族たちによって急遽招集された民兵たちだ。王国軍の中で一番死に近い場所に配置されている彼らの心の中では、王国の勝利よりも自分が死なないことへの願いの方がいくらか強かった。