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ルクセンブルクの独立 3

  ルクセンブルクが王国の支配下から離れ独立すると宣言してから一週間、それを知ったルクセンブルクの民たちは、今もまだその事実に動揺しているままだった。


「なあ、本当に俺たちはもうブルムンド王国の国民じゃないんだよな?」

「庶民だし政治の詳しいことは知らないけど、ルクセンブルクが王国から離れた以上、普通はそういうことになるよな。これが誤報なら話は別だろうけど、領主様が否定しない以上これが誤報ではないんだろうな」

「いやそれやばすぎでしょ!!だってここはあくまでも一伯爵領だったんだぜ。それがいきなり国と、それも自分たちがさっきまで属していた国と戦うなんて、普通に考えたら無理な話だろ!?

  俺たち素人でも簡単にわかる。領土の広さ、人口、財力、そして戦力など、あらゆる点で劣っていること間違いなしだ!!」

「その通りだろうなぁー」


  ルクセンブルクの民が不安を募らせていくのも当然である。あくまで一伯爵にしか過ぎなかった者が、急に独立していきなり国に勝てると思うほうがおかしいのだ。

  しかもルクセンブルクは王国の東の果てにあり、王都はもちろん正直それ以外の都市にも負けているところがいくつかある。


  つまり単体でも王国トップの都市ではないのだ。首都である王都に負けるのはしょうがないとしても、それ以外の都市にも負けているような体たらくでは厳しいものがある。

  これが三大貴族のように王家に匹敵するような力を持ち、さらにたくさんの貴族を派閥においているような大貴族なら話は別だ。


  だが当然ルクセンブルクがそこまでの力を持ち合わせているわけがなく、王国、そしてルクセンブルクの民たちから見ても、今回の独立は明らかにも無謀な行いであった。


「王国は絶対に攻めてくるよな……」

「それはそうだろう。何度もこんなふうに貴族たちに抜けられては王国が立ち行かなくなる。こちらに確実に勝てるだけの戦力を連れてくるだろうな」

「過剰戦力で来るかもな」

「見せしめのためか?否定ができないのが怖いぜ」

「もういっそのこと、戦争が始まる前に思い切って王国領に逃げるか?」

「逃げてもなぁー」


  この国の平民にとって移動はそう簡単なものじゃない。隣町に移動するだけでも時間がかかるし、そもそも馬車は平民にとって高価なもののため歩きで向かうしかない。

  しかも街道には野盗が出ることも多いので、平民にとって街から移動するということはそれなりの危険と費用が伴うのであった。


「しかし今回はまだ徴兵されないのかな?」

「それは思った。もちろん徴兵はされたくないけど、普通王国と戦争するかもってなったら俺たち平民を徴兵して数をそろえるもんだろ?」


  彼らは良くも悪くも徴兵には慣れっこだ。実際に何度か徴兵されたことはあるし、そこで人やモンスターを殺したこともあった。


「確かに。それはしないとなると戦争はあり得ないのか?何らかの話し合いでけりをつけるとか」

「どんな話し合いだよ……」

「だよなぁ。王国からすれば面倒な話し合いをするより、数に物言わせて攻めたほうがずいぶん楽だろうしな」

「あーあ!もし王国に攻められたとしても、せめて俺たち平民は何とか許してもらえねえかな!?」

「そりゃみんなそう思ってるよ」

「そりゃそうだ!」


  街には今彼らのように自分たちがこれからどうなるか不安に思い、知り合い同士でそのことを話し合っている者がたくさんいる。


  こうなるとどこかのタイミングで大なり小なり暴動が起きそうなものだが、幸運にもルクセンブルクではまだ暴動が起こりそうな気配はなかった。



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