監視
活動報告でも書きましたが、二十二部分に割り込み投稿で新しく追加された話があります。
気が向いた人は読んでみてください。
ここはダンジョン内部のとある一室。そこでは優斗が一体のダンジョンモンスターとメイドのシルヴィアと共に、三人で森に入ってきた聖騎士たちの様子を見ていた。
「聖騎士たちが森に入って来たか」
「そのようですね。向こうの装備や人数も報告と一致しています」
現在三人は、森に侵入してきた聖騎士たちの動向をリアルタイムで見ている。これはこの場にいるダンジョンモンスターの能力によるもので、その能力により優斗たちは森にいる聖騎士たちの表情すら見ることができていた。
「しっかし大人数だな。ここまで数をそろえられていると、むやみやたらにモンスターたちをけしかけるのは得策じゃないな」
「ではどうしますか?まさかこちらからは一切手を出さないのですか?」
「それはないな。あんな集団がいつまでも森にいれば間違いなく森が荒れるだろうし、エルフたちの集落をはじめとした村などが壊されてはたまらん。
リーン教だかなんだが知らないが、この森に来た以上ただで返すわけにはいかないだろう」
ガドの大森林には現在、元々あったエルフやダークエルフの集落以外にも複数の集落や村のような場所が形成されており、そこにはダンジョンモンスターをはじめとした優斗の支配下にいる者たちが多数暮らしていた。
「だとすると……あとはどのように処分するかですね」
「そうなる。っと、今はぐれのゴブリン共が無謀にも勝負を挑んで消えていったぞ。本当にはぐれのゴブリンは能無しだな。うちのゴブリンの爪の垢でも煎じて飲めば少しはましになるだろうか?」
「確かに能無しですね。ですが聖騎士たちの力を確認することは大事かもしれませんよ?なんせわたくしたちは彼らの実力を全く知らないのですから」
「リーン教の本部はここからものすごい離れているからな。一応噂くらいは報告で聞いたことがあるが、どれもかなり信憑性が低い情報だった。知ってたか?リーン教の聖騎士がルクセンブルクに来るのは今回が初めてで、ブルムンド王国に来たこと自体もまだ三回目らしいぞ」
優斗たちの情報網はまだブルムンド王国、都市国家群、レムルス獅子王国のガドの大森林に隣接している三か国にしかないが、それでもその範囲ではかなり広めの情報網を形成することができていた。
そのためリーン教等の三か国よりも離れた場所のことでも、少しくらいなら知ることはできたのだった。
「だとするとなぜわざわざ来たのでしょうか?いくらこの森で高ランク冒険者が大量に亡くなったとはいえ、それになぜ本拠地が非常に離れている教会、それもそこの武力である聖騎士が絡んでくるのかがよくわかりません」
「それについてはまだ調査中だな。どうにかして捕虜の一人でも取って情報を聞き出したいな」
「では誰を向かわせますか?」
「まずはあいつらを使って少しずつ削っていけばいい。案外これはいい実戦かもしれないな」
「いい実戦ですか?」
「ああ。あれだけの敵と戦えば、どう転んでもそれなりに成長できるいい経験になるだろう?」
「それだけですか?」
シルヴィアが優斗のことをジト目で見る。
「もちろんそれだけではない。だがいい実戦になるというのも理由の一つなんだ。伝えるのはそれだけで十分だ」
「まあいいです。彼女がいれば万が一があっても逃げ切れるでしょうから」
「そういうことだ。そうと決まれば、早速彼女たちに連絡しなければな」
優斗は、聖騎士たちの様子を密かにうかがっていた部下たちに向けて命令を下す。その指示を受け聖騎士の動きを監視していた者たちは、聖騎士の排除に向けて本格的に動き出した。