成果
優斗たちが配下として共に戦い、そしてそのおかげで王位継承戦を制し第十八王子が次期国王になった。優斗たちはその第十八王子が次期国王になったことを祝うパーティーにも出席し終わった後、四人は獅子王国の王都に来てからいつも泊まっていたの宿ではなく、獅子王国に作ったその王都にある商会の中に入っていった。
「まさかあなた方が直接ここに来られるとは。我々との関係性はあまり表には出さない方針だったはずですが、ここに来られてもよろしかったのですか?」
獅子王国にある優斗の商会をまとめている者が、中に入ってきた優斗たちを出迎える。その者は比較的人間に似ている、つまり獅子王国で活動しても問題ないくらいの容姿をしているダンジョンモンスターであり、今はこの商会の会長として働いていた。
「もういいだろう。今や俺たちはこの国でもかなり有名な冒険者パーティーで、その俺たちと関係があるかもとなればいろいろやりやすくなるだろう。以前は隠していたが、今はその必要もないはずだ」
「なるほど。それで優斗様、一体ここに何の御用でしょうか?」
「なに、簡単なことだ。今回の収益の確認と、これからこの商会がどういう立ち位置でやっていくか確認したかっただけだよ」
「わかりました。ではまず、今回得た収益をご確認ください」
優斗の前に、ついさっきできたばかりの資料が広げられる。そこには、この大会で商会がどれだけの利益を出すことができたかが詳細に書かれていた。
「ふむふむ。おおむね黒字か。結構商品が売れたようだな」
「ええ、かなり売れましたよ。とは言え相手は財布の紐が緩みまくった者たち、しかもその中には貴族を筆頭にたくさん金を持っている者もおりましたから、むしろ稼げないほうがおかしいくらいですよ。これも優斗様のおかげですね。そうでなければ、そもそも我々がこの大会で出店することも難しかったですから。
それに今回第十八王子が優勝したことで、この商会にも大きな追い風が吹いています。なのでこれから大変ではありますが、それ以上にたくさん儲けることもできそうです」
王位継承戦中は、当然会場内に幾つも店舗が並んでいる。そこに出店すれば十中八九儲かるのだが、それをするには相応のコネを持っておらねばならず、まだ歴史の浅いこの商会ではそこに食い込むことが難しかったのだ。
しかし彼らはそこに出店することができた。その理由は第十八王子であり、彼女を金銭的に支援することで彼らは出店することに成功したのだ。またこの商会は当然優斗たちの力を知っているため、『インフィニティーズ』が王子の味方になると決まった瞬間、彼らは第十八王子に対しかなりの額を投資した。その甲斐もあって、今や彼らは次期国王に最も近い商会となっていった。
他の歴史ある大きな商会はほかの王子たちを支持していたため第十八王子には支援をしておらず、またそれ以外の第十八王子に支援をしていた他の商会を大きく上回るだけの支援をしたのだ。
当然これからこの商会が次期国王に優遇されるのは目に見えているので、敗戦した王子から乗り換えて次期国王の歓心をかおうとする他の商会とのいさかいは激しくなる可能性は高いが、それでもこの商会はついにそういったステージまで上がることができたのだった。
「それと賭けのほうは、これ以上にすごい儲かったようだな」
「はい。念のため商会の手の者たちにそれとは分からないように複数人に分けて大金を賭けさせていましたが、優斗様たちが勝ったことで大儲けでした」
「それはよかった。ならその金は商会でとっておけ。これから金を使う機会もこれまで以上に多くなりそうだろ?」
「それはもう」
優斗も会長も今回商売と賭けで儲けたお金を見て、思わずにやけてしまう。今回商会が得た金はものすごい大金であり、日本にいたころの優斗では一生かかっても稼げないほどの輝きがあった。
「それとこれからだが、当分は次期国王との仲を壊さないように、もしできれば発展させながら活動していくこと。それと、こちらが送り込む予定の貴族との連携も深めておくことだ」
「心得ました。しかし一つ質問があるのですが、今回獅子王国に送り込まれる貴族となる者たちは一体どなたなのでしょうか?」
「送り込めるのは男爵二人と子爵一人だ。子爵にする一人はすでに決まっているが、男爵にする二人は完全に決まっているわけではない」
「なるほど。我々はその三人とうまく連携していけばよろしいのですね?」
「いや違う。子爵にする者と男爵にする者のうち一人とは仲良くしておく必要があるが、もう一人の男爵にする者とは連携する必要はない。一か所に固まり過ぎてもよくないからな。その男爵はお前や王子とは少し距離をとったところで活動してもらうつもりだ」
会長と優斗たちはこれからどうするかだけでなくこれまであったことなどもいろいろと話し合い、それからこの商会の今後だけでなくこれから優斗たちが獅子王国とどう付き合っていくつもりなのかなども話し合った。その過程で男爵として送り込む二人も決定し、議論を終えた五人はそのまま寝支度をした。