表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/212

次期国王に

「それで、あんたはどないするんや?」


  第九王子の配下を全員倒したユズが、残った第九王子に問いかける。


「どうしたもこうしたもないでしょう。僕の負けです」

「へぇ、ずいぶん素直なんやな」

「それは当然でしょう。やられた冒険者たちは全員僕よりも強いんですから、単純に考えて僕があなたたち全員に勝てるわけがありません。彼らがあなたたちの中から数人倒してくれたり、もしくはあなたたち全員にそれなりのダメージを与えてくれたりしているのなら別ですが、そうでない以上どうあがいたところで僕の負けですから」


  第九王子は潔く負けを認め、審判に降参の意思を伝えた。


「勝者!第十八王子!!」


  勝者が告げられた瞬間、会場中に大きな歓声と悲鳴がこだまする。この大会では賭けが行われていたため、第九王子が優勝してしまったことで大損する者たちがかなり出てしまったのだ。もちろんほかの試合でも自分が賭けた対象が負けるたびに悲鳴は出ていたのだが、決勝のこの試合は最後であることも影響し特に歓声も悲鳴大きかった。


  また第十八王子はずば抜けて人気が低かったため、当然そのオッズも高くなる。そのため第十八王子が優勝したことで、損した者とものすごく得した者が出てきたのだった。


「やった!やったぞ!!」

「はい王子。ようやく悲願を達成なされましたね」


  王子と女騎士がお互い抱き合って喜びあっている。そして客席にいる第十八王子の母親も、自分の娘が念願だった次期国王になって喜んでいる光景を見て涙を流していた。


「これで依頼は完了だな」

「せやな。これで一段落やな」

「そうだな。もうこの国にいる用はないな」

「はい。またルクセンブルクに戻りましょう」


  優斗たちもパーティーメンバー四人でお互いの健闘を称えあう。


「そうだ、一つ言い忘れていました」


  お互いの健闘を称えあっていた優斗たちに対し、先ほど敗れた第九王子が声をかける。


「何か用ですか?」

「ええ。簡単な用事ですよ。ぜひ我が妹に伝えてください。これから大変だぞ、と」


  王子はそう言って舞台から去っていく。


「大変だぞ、か……。まあそりゃ大変だろうが、そんなのわざわざ伝えるか?」


  次期国王になれば当然いろいろ面倒なこともある。この国は比較的王の力が強いため、隣国であるブルムンド王国とは違いある程度貴族たちも王の言うことを聞いてくれるのだが、それでも当然政治的な駆け引きや配慮などもしなくてはならなくなる。

  また次期国王になるということは、それだけ彼女に擦り寄ってくる者も増えるだろう。これまでは母親の身分や自分の年齢などからあまりそういうことがなかったが、これからはそういった政治の世界にどっぷりつからなくてはならなくなるのだ。もちろん国内だけでなく他国とも外交をしなくてはならなくなるし、これからいろいろ忙しくなることは目に見えている。


  しかしわざわざそれを伝える、しかも直接言うわけでもなくただ王子に雇われているだけの優斗たちに伝言として託すというのはよくわからない。


  優斗は去っていく第九王子の背中を見つけながら、彼に言われた言葉を少しの間反芻し続けていた。


「なにはともあれこれで終わりや。とりあえずその伝言は、あそこで喜びを爆発させてる王子にちゃんと伝えとけばええやないか」

「そうだな。そうしておけばいいか」


  優斗たちは第十八王子のもとに合流し、そこで第九王子からの伝言を伝える。王子自身もその言葉に深い意味は感じ取らなかったようで、ただの負け惜しみじゃないかと言うことで落ち着いた。


  その後この大会の優勝者であり、なおかつ次期国王となった第十八王子を祝うイベントやパーティーなどが行われた。当然雇われとはいえ、今大会で王子の配下として戦った優斗たち『インフィニティーズ』もイベントやパーティーに呼ばれており、その容姿や大会での活躍から特にユズが人気者であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ