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決勝 2

本日二話目です。

 数十年に一度行われ、その規模、そしてその注目度において国内、いや大陸中を見渡しても並ぶものがないといわれるほどの武闘大会であるレムルス獅子王国の王位継承戦。すでに十二回目を迎えたその決勝戦はそれにふさわしい熾烈を……極めなかった。様子見による一種の膠着状態が解けてから数分、すでに試合は決着を迎えようとしていた。


「決勝まで力を隠していたのか……。こりゃとんだ怪物だな」


  第九王子に雇われている白金級冒険者、その中でもリーダーの男がもう参ったという様子で両手を挙げている。彼の仲間たちは三人ともすでにやられており、残りは彼と第九王子の二人だけであった。


「なんや。もう終わりかいな?」


  彼らを蹂躙した張本人であるユズが拍子抜けしたという態度をとる。この試合でも攻撃役を任されている『インフィニティーズ』の作戦は盗賊であるユズをメインアタッカーにし、他の三人がそのサポートをするという形であった。

  ユズは普段の金級冒険者、場合によってはぎりぎり白金級冒険者にふさわしいくらいの力ではなく、ダンジョンメンバーの一員として、いや優斗の仲間のNPCとしての力を少しだけ見せた。


  この世界の金級冒険者たちは大体が『インフィニティ』で言う五十レベル前後くらいで、白金級冒険者でも百レベルには遠く届かないぐらいの力でしかない。つまりその三倍以上である三百レベルを超えているユズからすると、街一番の高位冒険者だろうが国に一つしかない貴重な白金級冒険者パーティーだろうが本気にならずとも簡単に倒せる相手であり、その気になればいつでも一人で彼らを簡単に蹂躙することができる。


  そのユズが少しやる気になっていつも以上の力を出し、それを優斗たちが微力(優斗とアシュリーは普段通りランク相当かその少し上くらいの力しか使っていない)ではあるがサポートしたのだから、いくら第九王子の配下が白金級冒険者パーティーであっても、ユズにはほとんど抗うことができずにやられてしまったのだった。


「意地悪な質問はよしてくれ。今の俺じゃ、あんたには逆立ちしようが到底勝てないさ」

「なんや。まるで条件さえ整えば勝てるみたいな言い方やな」

 

  ユズはそれを出さないのか?と言外に含ませる。


「勘弁してくれ。本当に勝てないんだ。あんたかなり強いぜ。たぶんだけど、マジになった第四王子と同じぐらい強いんじゃねえか?」

「第四王子と同じぐらい?ほんならそれに勝ったあんたらなら、うちにも勝てるんちゃうんか?」

「何言ってんだ。あんただってわかってんだろ?第四王子が俺らとの一戦でまるで本気を出していなかったことくらい」

「まあそうやったんやろな。そもそも獣化すら使ってへんのやから、誰が見たって本気じゃないことはまるわかり。それどころか、獣化を差し引いてもまだ余力がありそうやったからな」


  第四王子が準決勝で本気を出していなかったことは、少し程度戦いを知っている者ならみんな分かっていたことであった。

  第四王子は何年も前から冒険者として活動しており、すでに白金級の高みまで上り詰めている。彼は冒険者家業を楽しんでおり、そもそも国王になるつもりはまったくなかった。


  第四王子がこの大会に参加したのは自分が王家に生まれ、そして育ててもらったからという義理でしかない。そもそも彼は王侯貴族の堅苦しい生活より、縛られるものが少ない冒険者生活のほうが性にあっていた。そこで最初からどこかちょうどいいところで負けようと思っており、ちょうど同じ白金級冒険者パーティーを配下にしていた第九王子に負けたのだ。


  そのため第四王子は負けたにもかかわらず、王家の縛りが今までよりも緩くなったことを感じて吹っ切れた顔をしていた。


「まあそういうわけだ。今の俺じゃあんたには勝てないんだよ!」


  男はそう言いながらも、最後第十八王子に向かって魔法を放った。


「王子!」


  油断していてそれを予期していなかった女騎士がものすごく後悔した顔になった……のだが、急に王子の前に出てきた障壁によってその顔もすぐに収まった。


「ちっ!仕留めきれなかったか」

「残念やったな。あれはうちの慎重大臣が、念には念を入れてっちゅうことで王子につけさせたマジックアイテムや。あれがなければ、下手したらそっちが勝っとったかもな」

「……わかった。俺は降参する」

「それが賢い選択や」


  こうして白金級冒険者パーティーはすべてリタイヤし、残ったのは第九王子のみとなった。


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