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準決勝 1

  今の時間は正午まで残り五分、これから始まる準決勝を見に来た観客たちが席に座り、これから始まる試合を今か今かと待ち続ける。そして選手である第一王子と第十八王子、及びその配下たちは舞台に立ち、お互いに向き合っていた。


「お前たち、確かインフィニティーズといったか?当然私も昨日の試合を見たが、かなりの実力を持っていると見たぞ。金級冒険者のようだが、もしかしたら白金級でもおかしくないのではないか?」


  第一王子が舞台上で『インフィニティーズ』に話しかける。ちなみに第一王子は大柄の女性であり、彼女の体からは一流の戦士が醸し出すような雰囲気が漂っていた。


「それはどうでしょうか。将来的には白金級になれたらいいのですが、少なくとも今の俺たちは金級冒険者ですよ」


  優斗は第一王子の声に応える。別にここで話をしても特にメリットもデメリットもないので、自分から話しかけようとは思わなかったが、向こうから話しかけてきたのでそれには応じた。


「ふむ。その声色と口調からして、やはりお前は男か?」

「まあそうですが。それがどうかしましたか?」


  実は優斗こと金級冒険者ノームには、男か女かということで小さな論争が起こっている。ノームという名前は、この地域周辺ではどちらかというと女より男につけられることが多い名前である。それに優斗の声色や口調、そして体格などから判断して彼が男であると考える意見は非常に多い。優斗自身も自分の素性は隠しているがその性別まで隠そうという意識はないので、普通に男として自然な行動をしている。


  そのため普通はみんな男と判断するのだが、一部の者たちは実は女じゃないかと考えていた。なぜなら女でも男と同じくらい低い声の人はいるし、仕草や口調だって人それぞれだ。

  そして女だと考える者の意見として、自分たちのパーティーが女だけだと舐められかねないから顔を隠しているなどが挙げられている。


  実は女じゃないかというのは少数意見なのだが、それでも顔を隠しているせいでどうしても女なんじゃないかという意見が出てくるのだ。

  優斗としても自分の性別に関して男だと声高に叫ぶわけでもない(そうしたところで結局実は女だという意見が消えることはない)。


  正直大半の冒険者にとって実力さえあれば男でも女でもどちらでも構わないので、ノームが女とか男とかいう議論はそこまで白熱せず、どちらかというと雑談の種にされているくらいであった。


「そうか……。ちなみに年齢はいくつだ?」

「(いったい何を確認しているんだ?)」


  優斗は第一王子からの問いに対して戸惑っていた。なぜ今の状況でわざわざ性別や年齢を聞いてくるのか分からず、その質問の意図を探ろうとした。


「なぜそんなことを聞くのですか?俺の性別や年齢が試合に何か関係があるのですか?」

「とにかく答えてくれないか?」


  王子は質問に答えずひたすら優斗の年齢は知ろうとする。


「(俺が何歳でどんな性別であるかがそんなに重要なのか?)」


  優斗は相手の性別や年齢を知るメリットを考える。


「(まず性別だが……俺が男だろうが女だろうが何か変わるのか?男女の筋力差はスキルや魔法で簡単に埋まるし、そもそも女でも男より筋力のある者はある程度いる。それに俺は魔法中心の戦い方だ。そうなると男女の差はないに等しい。男女の大きな違いといえば……まさか!急所のことか!?)」


  男性と女性の違いはいろいろあるが、こと戦闘面において大きな違いといえばやはり股間にある急所が挙げられる。もちろん目や喉も弱点の一つではあるが、男性にあって女性にない弱点といえばそれ以外には考えられない。

  格闘技などでは金的が反則といわれることもあるが、生死のかかった実戦となれば反則などそもそも存在しない。金的を狙うことは何ら卑怯な戦略ではなく、むしろ防げなかったほうが悪いのである。


  優斗も一応股間を専用のカップ(この世界に来てからエリアスとミアに頼んで作ってもらった、魔法のかかった特別頑丈なもの)で守っている。ゲームの時にはもちろん金的攻撃などなかったのだが、この世界では当然そこが急所になる。

  優斗以外の男性、特に前衛で戦うことになる戦士もほとんどがこういったカップをつけており、ちゃんと急所対策はしていた。


  しかし対策をしているとはいえカップの耐久性はそれぞれなので、男性女性にかかわらず戦闘中に敵男性の股間を思いっきり蹴り上げたりして、急所にダメージを与えようとする者がいた。


  優斗は自分の股間が狙われるんじゃないかと思い、カップがあれば大丈夫だろうと思いつつも自分の股間に目をやった。


「では時間になりましたので試合を始めていただきます!」


  優斗が第一王子の意図を考えているとその間に五分が経ち、ようやく試合が始まろうとしていた。


「まあいいだろう。質問の続きは試合が終わってからだ」


  王子もこれ以上聞くのは諦めたようで、お互い距離を取り戦いに備えた。

 

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