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突入!神魔界 ~ 遭遇編 part.9 対抗勢力

 ウェアファルフテプは人狼を中心とした戦闘民族であり神魔界に居ついてからは一大勢力としてのし上がった。

 いつ頃から彼らが神魔界に現われ幅を利かせ始めたのかは定かではない。

 ただ気がついたときには神魔界に存在し、生存するために周囲の生物と闘争を繰り広げ今に至るのだった。

 ウェアファルフテプの戦闘能力、戦いへの技術、本能は強力だ。

 しかしそんな彼らでも神魔界を支配するには至っていない。

 彼らの目的の一つは武力による支配であった。それなのに何故、神魔界を支配するに至っていないのか……

 その答えはたったひとつである。


「同等の力を持つ対抗勢力が存在した」

 からであった。

 

 その勢力は高い知能を有し、神魔界においての超能力『神通力』を駆使しウェアファルフテプの侵攻に対抗したのだった。

 その勢力の名前は『人間』である。

 ウェアファルフテプは人間を見たことがなかった。いや覚えていないという方が正しいのかもしれない。

 先述したとおり神魔界に存在する生物は、世界が他の世界から連れてきた者のみである。

 現存しているウェアファルフテプも神魔界において進化を重ねて現在の姿・能力を持つに至っている。

 


 彼らの中における下級戦闘部隊『フェルファルンドゥ』は兵隊としての色合いが強い。

 好戦的だが頭を使った戦闘は得意としておらず、したがってアルバのような上級戦闘部隊『バルトドゥール』が修得しているような神通力(もっともウェアファルフテプはそう呼んでいない)を用いた技を使うことはできない。

 できても初歩の初歩『身体能力の一時的な強化』くらいだろう。

 それでも神魔界で戦っていくには十分な戦闘能力は持っていた。ライ・ラビットや風刃チーターくらいなら問題なく倒せていた。

 しかし――

 

「ぐわはっ……何故だ!?」

 

 今見る二人にハイリエッドは押されている。

 アルバの強さは仲間内でも有名だ。だが手負い手負いならば倒せない相手ではない。

 そんなアルバが相対していた人間、アルバと相討ち寸前ならば絶好の機会だったはずである。

 それが何故か――

 

(あの人間二人は一体……!?)


 ハイリエッドはアルバが共闘している人間二人――正確には魔界の魔族と人間界の鬼に注目していた。

 もちろんハイリエッドは人間界の鬼も魔界の魔族も知らない。

 ただ人間に近い姿をしていればそれを人間と認識している程度だったのだ。

 それが大きな間違いである。

 ファウもテルルも身体能力では人間を遥かに上回っている。

 神魔界における戦闘……神通力の扱いに関しては神魔界に存在する人間よりは劣っているだろうが、元々持っている潜在能力、ポテンシャルはやはり比べ物にならない。


「このォ!!オレが人間に負けるワケがねェんだよ!!オレがァっ!!!」


 瞬時にハイリエッドファウの背後に回りこんだ。振り上げた腕には鋭利な爪が殺気と怒気を帯びてギラギラと輝いている。


「ファウ!うしろっ!!危ないっ」


 テルルが咄嗟に拾って投げた石がファウの頭に当たると見えて、


「危ないじゃねェか!そらァっ!!」


 咄嗟に掴んでそれをそのままハイリエッドの顔面に向けて投げつけたのだった。

 

(おおっ……アブないねェ!?)



 間合いは未だ詰めきれていなかったのが幸いだったといえよう。投げる動作は確かに俊敏を極めていた。

 しかし宙を走る時間がハイリエッドが石を避けるのに必要な時間より明らかに長い。

 ヘヘッと小さく笑いハイリエッドは石を避けた。回避は成功しファウへと迫り致命傷を与えるのは確定的かと誰もが思っただろう。しかし――

 

「こンのヘタクソが!ちゃんとよく狙ったのか!?あァ!!」


 ハイリエッドの腕はファウの身体を引き裂くことなく宙を泳いだ。

 いや性格には腰元を僅かに引き裂いてはいるが、これは致命傷にも手傷にも至っていない。


(クソが!石を避けたから狙いがズレちまったのか!!)

「そういうこった!お前があの状況でやるべきことは――」

(あんな石ころなんか当たったって痛くねェよ。気にせず突っ込むべきだったんだ)


 状況を横目に見ていたアルバは胸のうちで笑っていた。

 あんな貧弱な石ころ程度、上級戦隊のバルトドゥールなら気にせずに当たりに行くだろう。

 

(そういう度胸を持っていなかったから、お前はフェルファルンドゥに過ぎなかったんだよ)


 ハイリエッドがファウの地上爆震拳を受けて遥か遠くへと吹き飛んでいった。



「…………おォ!?」

「おいお前達、まだやるのか」


 アルバが言った。群れのリーダーを失ったフェルファルンドゥは焦燥に駆られ半ば戦意を喪失したらしい。


「くっ、くそ!覚えてやがれ!!」

 捨て台詞を残して一目散に逃げていった。最後まで戦い抜こうとするものは誰一人としていなかった。

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