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突入!神魔界 ~ 遭遇編 part.7 再戦

 電光を放ったライ・ラビットの後方――

 そこに第2射の準備をしている一群が存在していた。

 もしもここで上空へ飛び、第1射をかわしていたものならば、後方に控える第2群が回避の利かない空中、もしくは着地を狙って電光を放つだろう。

 そうなればもはやファウ達に電光を回避する術はない。

 

「アイツら狩りに慣れてるよ。でもさ……」

 

 第1射、電光は既に放たれている。超速の矢に対応するにはファウはもう手を打っていなければならない。

 

「手を撃つさ」

「えっ!?」

「私だってダテに修羅場はくぐっていないんだ!!」


 叫びと同時にファウは地面を力一杯に殴りつけた。

 衝撃が空気を揺らし、大地が大きく崩れて盛り上がった。


「これって……ええっ!?」


 テルルは思わず態勢を崩しそうになるが、なんとか膝をついて態勢を保った。

 衝撃波は外へと広がっているためその中心地は比較的影響は少ないのだ。

 そんな中でテルルが見た光景とは――


 「あっ!!アイツらの電撃が……!?」


 隆起した大地が盾となり、ライ・ラビットの電撃を受け止めている。


「やった!!」「これだけじゃない」


 ファウは更に自分のコブシを構えた。そして手首を1回転まわすようにして動かすと、コブシまわりに何やらエネルギーのようなものが生じた。


(これがファウの生命エネルギー、いや神通力?)


  腕を回っているエネルギーはまるで破壊力を持っているようだった。うかつに手を出せば、その力に身体ごと弾き飛ばされそうに思える。

 それだけの強大なエネルギーをファウは隆起した大岩に向けて打ちつけた。

 テルルの見たとおり、破壊力を秘めたエネルギーは簡単に大岩を砕いてしまった。

 衝撃をそのままに砕けた岩は電光を発射したままの姿勢のライ・ラビットを襲ったのだった。

 大地を殴りつけたときの衝撃だけでもライ・ラビットにとっては脅威であっただろう。

 電光の発射には集中と発射時の姿勢を安定して保つことは必須である。

 どちらかが欠けてしまえば、その小さな身体から強力な電光を放つことはできない。

 

 岩がライ・ラビットを襲った。

 

 高い悲鳴が響き渡った。一瞬のうちに荒れた大地と化した草原にライ・ラビットが落ちている。

 砂ボコリで汚れているとはいえその身体は非常に目立つ。

 それだけに今一度息を吹き返し、反撃に出ようとすればたちどころに分かるだろう。

 果たして動くものは何もなかった。

 

「ファウ、やったじゃん!」

「あぁ、今のは……」


 魔力を使った一撃ではない。ただファウの持つ腕力が大地を砕いたわけでもない。

 確かに魔界の魔族であるファウの腕力は人間の常識では計り知ることはできないほどだ。

 しかし魔王ゼーラーとの戦いで魔力を失っている彼女にそれだけの能力は今は備わってはいない。

 では、ファウが大地を砕いた力とは一体なんだったのか?


「これが生命エネルギー、神通力の力なのか」

「そうそう。今のファウじゃそんな力、逆立ちしても出せないでしょ?間違いないって!!」

「そうか。そうだよな――って、力が出ないとかいうなよ!私だって本当は!!」

「いたーい!やっぱり力が入ってないじゃん。手加減してんのー?」

「本当だったら、お前のツインテがひっこ抜けてるぞ。それでもいいのか」


 ともかくファウはライラビットの撃退に成功し、そして生命エネルギーを使った神通力の修得にも成功した。


「さて、さっそくこのことをアンシさんとアウランに報告しようよ。きっとアンシさんも喜んでくれるよ」

「ちょっと待った。何か来るな」

 

 ファウが急に真剣な面持ちになり、彼方を見つめた。

 先ほどの一撃で未だ土煙が立っている。地平線の先はぼやけて視界ははっきりしないものの、何か大きな影が一つ、こちらへやってきているのをファウの目は捉えていた。

 

「あれは……」

 

段々に大きくなる黒い影、それは人の形をしていて二足歩行で走っている。


「ハハハハハハ!今の力、強き者がそこにいるゥ!!」


 歌うように叫ぶ声が大きく響いた。

 ウェアファルフテプのアルバだ。


「おぉ?お前はこの間のヤツじゃないか!?この有様はお前の仕業だな?」

「おう。そうだよ」

「そいつはスゲェや!やっぱり俺が見込んだだけはあるってな。そんじゃ今度は俺と勝負しろ!!」


 言うやアルバが一直線に向かってきた。大きな腕がファウに迫る。


「豪炎腕爆拳!!」


 炎と衝撃波を纏った殴打である。先ほどのファウが放った神通力の技に似てはいるものの、炎を纏うには至ってはいなかった。


(あの炎も神通力によるものか……)


 アルバの太い腕がファウの頭上を通り過ぎた。

 脚を畳むことで回避を行ったものだが、殴打自体は避けてもそれに伴う衝撃波は非常に強力だ。


(気を抜けば態勢が崩される)


 注意して持ちこたえた。この時、ファウは無意識のうちに神通力によって態勢を支えていたのだった。

 『崩れてはいけない!』『決して揺るがない!!』

 そうした意志とイメージが知らず知らずのうちに、神通力による防御能力を発動させていたのである。

 ファウはアルバの必殺技を持ちこたえた。

 必殺の一撃をかわされたアルバの身体は前方へと流れている。

 すかさずファウは前へと進み、アルバの背面をとると、


『地上爆震拳!!』


 先ほどファウがライ・ラビット達を吹き飛ばした技である。

 本来ならばもっと凝ったカッコいい名前をつけてやりたい所だったが状況が状況である。

 見たまま感じたままをそのまま口に出すしかない。

 何よりも重要なのは必殺技を叫ぶことにある。

 気合のこもった声はそのまま破壊力につながる。

 ドッとアルバの背中に大地を割るような衝撃が走り、大爆発を起こした。

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