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決戦!大魔界戦艦 コンセリーグ part.15

 この術は確かに強力な力を持っている。お札の龍が獲物を締め上げるようにして相手に巻きつけば、幾千幾万のお札が効果を放ち相手の魔力を縛り付ける!!

 いくらゼーラーでもそんな状態に陥れば無事では済まないだろう……しかし、

 一方で強大な力を持つこの術には非常に大きな弱点、リスクを孕んでいるのだった。

 それは術者本人が脆弱であることだ。オンミョーンは強力な魔力を有しているものの戦闘……もとい攻撃を受けることには致命的に耐性がない。

 ゼーラーの打撃となれば掠っただけで意識が飛びかねない。それほどに彼の身体は弱い。

 身体を守る魔力を有していないことはゼーラーは既に見抜いている。だから、オンミョーン本人を狙ったものだが、既にオンミョーンは流れるように宙を泳ぐ龍の上へと移動していた。

 互いが互いに一撃必殺を有している状態だ。しかしだからといって両者の実力が拮抗しているわけではない。


 (どうせ僕が生き残る可能性はない。ただ相打ちくらいになら持っていける。勝負は――)


 両者の距離が一気に縮まった。仕掛けたのはオンミョーンだ。

 大量のお札が正面からゼーラーを襲った。巻き起こる風がゼーラーの長い髪を激しく揺らした。

 

「見事だったが……相手が悪かったな」

 

 呟くとオンミョーンはお札の龍から宙へ取り残されるように吹き飛び、そして地に落ちた。

 お札が力を失うようにしてひらひらと舞い落ちていく。

 お札が魔力を失ったのだ。こうなると宙を浮くことも相手の動きを封じることもできない。

 

「さて、コイツらは全員死んだぞ。残ったお前はどうする?」


 エクソーン、ワイパーン、オンミョーンが倒れた。残っているのはキャシャーンだけだった。

 彼はお払い戦隊でもお支払いが担当だ。もちろん袖の下意外の戦闘能力は持ち合わせてはいない。


「ハハハ、まいったなぁ。残ったのは僕だけなんて」


 そんな彼でも仲間が戦っていた間、何もしていない訳ではなかったのだ。

 倒れているファウに駆け寄り、懐から取り出したお札……おふだではなくておさつをファウの傷にあてがった。


「地獄の沙汰も金次第ってね。僕は元々プリーストだったのさ。でも司祭的なことはまったくできなくってさァ」


 治療や治癒魔法を得意とするのが天界のプリーストなのだが、他のお払い戦隊の面々と同様にその実力を発揮することができなかったキャシャーンである。

 持っていたのはお金だけであった。家――もとい彼の両親の教会は裕福だったのだ。

 その両親も落ちこぼれが身内に居たのでは面目が立たないということで、彼にお金だけを持たせて離れて暮らすようにしたのだった。

 普通ならこうした状況に陥れば人(天界人)の道を外れて堕落するものなのだが、キャシャーンは元来気楽で明るい性格だった。

 それにお払い戦隊という仲間にも恵まれた。彼の持つお金は仲間のために使われ、役に立っていたのだった。

 そんな彼が今度はファウを助けている。彼は普通の治療や治癒魔法はからっきしだったが、お金を媒体にして回復を行うという独特の治癒魔法を使うことができたのだ。



「お前、そんなことができたのか。てっきり役立たずだと……」

「今更そんなことを言われてもまったく気にならないよ。ふぅ、これで一通りは治ったよ。どうだい?痛みはないだろう」


 さっとファウが跳ね起きた。足に体重が掛かったところでどこも痛くはないしよろけることもない。


「あぁ、完璧だ。すげぇよお前――そうだ、アイツらも早く治してやれよ」

「それはできない」

「ナニッ!?」


 キャシャーンは腰元から黒い横長の物体を取り出した。傷や汚れが目立つが、それは財布のようだった。

 それを上下に振っても出てくるのは埃ばかりであった。


「まさか……」

「参ったなぁ。もう一文無しだよ。僕の治癒魔法はお金がないとできないから」


 それなら!とファウは咄嗟に自分の財布を取り出した。しかし貯金もなく無駄遣いの大好きなファウの財布に余計な大金が入っているわけがなかった。

 埃と一緒に5円玉が3枚、100円玉が4枚出てくれば上等なものである。


「これでなんとかできないのか?」

「これじゃ擦り傷掠り傷もいいところだよ、ハッハッハ」

「ご歓談のところ、お二人さん。私を忘れてもらっては困るよ」


 ゼーラーが立ち塞がった。


「見たところお金に困っているようだが……何を隠そう、私は大魔王だ」

 手を広げるとそこには金銀財宝のオーラが目に見えるように広がった。

「コレだけあればアイツらでも生き返らせることができるんじゃないか?どうだ」

「いやぁさすがゼーラー様、そのとおり」


 死んだ人間を3人も蘇生させるには並大抵の額では足りないだろう。ところが目の前に居るのは絶対的な大魔王ゼーラーだ。

 彼が所有している資産は想像を絶する量である。

 もしも今からでも謝って土下座でもすればそれを譲ってもらい、3人を助けることができるかもしれない。だが、

 

「ココまで私と対立を深めておいて、今更、和解するつもりもないんだろう?」


 ニヤりと笑った。つまるところ、それは最終目的であると言いたいらしい。



「もちろんだ!アンタを倒してアリガネ全部頂いて、全てを丸く治めてやるから覚悟しやがれ!!」 

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